◆英国と米国で行われた縦断研究をもとに分析
この研究では、イギリス、アメリカの両国で行われた2件の縦断研究をもとに、データの解析が行われました。
イギリスの縦断研究 (ALSPAC) では、生後8週間から8.6歳までの間に成人からの虐待を受けた児童、および8歳、10歳、13歳の時点でいじめを受けた児童、4,026人を対象に調査が行われました。また、アメリカの縦断研究 (GSMS) では、9歳から16歳の時点でのいじめまたは虐待を受けた児童の、19歳から25歳時点での精神的問題に関する評価が被験者1,273人を対象に行われました。
◆いじめを受けた児童は不安障害、うつ病、自傷のリスクが大きい
2件の研究で対象とされた児童の集団をそれぞれ解析した結果、次の傾向が見つかりました。
どちらの研究の対象集団を見ても、同級生からのいじめを経験し、成人から虐待を受けてはいない児童は、虐待を受けたがいじめには遭っていない児童よりも青年期に精神的な問題を発症しやすかった。
その度合いはALSPACの対象集団ではオッズ比で1.6倍、GSMSの対象集団ではオッズ比で3.8倍だった。GSMSの対象集団では不安障害がオッズ比4.9倍、ALSPACの対象集団ではうつ病がオッズ比1.7倍、自傷がオッズ比1.7倍であった。
研究班は「小児期における同級生からのいじめは、青年のメンタルヘルスに長期にわたって悪影響を及ぼした。」と結論しています。
学校での児童のいじめは身近な家族でも気づかないことがあり、気づく頃には被害が深刻化しているケースもままあります。私たちは子どもたちの発するかすかなSOSを見逃さないようにすると同時に、 見つかったSOSをしっかりと受け止めていくことも大切です。
執筆者
Adult mental health consequences of peer bullying and maltreatment in childhood: two cohorts in two countries.
The Lancet Psychiatry. 2015 Jun
[PMID: 26360448]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。