2015.06.09 | ニュース

抗うつ薬にメチルフェニデート併用で効果増、認知症にも?

うつ病患者に対するランダム化試験

from The American journal of psychiatry

抗うつ薬にメチルフェニデート併用で効果増、認知症にも?の写真

うつ病と認知症はしばしば同時に起こると言われています。ここで紹介する、うつ病のある人を抗うつ薬で治療した研究でも、認知能力の改善が報告されています。この研究は、シタロプラムという抗うつ薬に加えて、メチルフェニデートというADHD(注意欠如・多動性障害)などに使われる薬の併用を試したもので、どちらか一方だけを使うよりもうつ症状の改善が大きかったという結果が出ました。

◆うつ病の診断がある143人が対象

研究班は、次のようにシタロプラムとメチルフェニデートの併用の効果を試験しました。

大うつ病の診断がある143人の中高齢の外来患者を対象に、治療グループ3群、すなわちメチルフェニデートと偽薬(48人)、シタロプラムと偽薬(48人)、シタロプラムとメチルフェニデート(47人)を比較する16週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験を行った。

うつ病と診断された143人が対象となりました。対象者はメチルフェニデートだけで治療されるグループ、シタロプラムだけで治療されるグループ、シタロプラムとメチルフェニデートで治療されるグループの3グループにランダムに割り振られました。治療の効果は治療前後のうつ症状の重症度で評価しました。

 

◆併用でうつ症状に効果増、認知能力改善

試験から次の結果が得られました。

すべての群でうつ症状の重症度と認知が改善した。しかし、シタロプラム+メチルフェニデート群ではほかの2群よりもうつ症状重症度とClinical Global Impressionsの改善が大きかった。

認知能力の改善と副作用の頻度には3群で差がなかった。

どのグループでもうつ症状の重症度に改善が見られましたが、シタロプラムとメチルフェニデートを併用するグループで最も大きい改善がありました。また、すべてのグループで認知能力の改善がありました


うつ症状も認知症も原因は解明が目指されているところで、治療もこれからますます変わっていくかもしれません。その中でひとつの手がかりになるかもしれない結果です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Citalopram, methylphenidate, or their combination in geriatric depression: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial.

Am J Psychiatry. 2015 Jun 1

 

[PMID: 25677354]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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