2015.06.19 | ニュース

楽しい記憶を活性化させる新技術で、うつ状態が改善した

利根川進氏ら、マウスに光遺伝学を応用
from Nature
楽しい記憶を活性化させる新技術で、うつ状態が改善したの写真
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脳を光で刺激して楽しい記憶を活性化させ、うつ症状を改善するという試みに、ノーベル賞受賞者である利根川進氏らの研究班がマウスの実験で成功しました。マウスの脳内で、楽しい体験をしたときに活動していた細胞を見つけておき、マウスがうつのような状態になったときに「光遺伝学」という技術を使って活性化させることで、状態を改善できたという成果が報告されています。

◆光遺伝学とは

光遺伝学は、遺伝子治療などに使われる技術を応用して、光に反応して変化する物質が細胞の中で作られるようにし、細胞に光を当てることで望んだ効果を引き出す技術です。この研究では、チャネルロドプシン2という物質を作る遺伝子を神経細胞に組み込んでいます。チャネルロドプシン2を作る細胞は、光を受けると活性化するようになります。

 

◆マウスのうつ状態を改善

研究班は、オスのマウスの脳の中で、メスのマウスと一緒に過ごさせているときに活動した細胞を特定し、その細胞にだけチャネルロドプシン2を作らせるようにしました。この操作は、チャネルロドプシン2の反応を介して、楽しい体験の記憶を活性化させることを狙っています。

次に、オスのマウスにストレスを与えて、うつ症状のような行動の変化が表れたとき、チャネルロドプシン2を作っている細胞を活性化させると、行動の変化が正常に戻る方向の効果がありました。

 

マウスの実験に相当する状態を人間の体で再現するにはさまざまな課題があり、そのうえで期待した効果が出るかどうかはまだわかりません。しかし脳を刺激してコントロールするという考えからは、うつ症状の治療以外にも応用できないかといった想像が広がります。今後の進歩がとても気になる研究です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Activating positive memory engrams suppresses depression-like behaviour.

Nature. 2015 Jun 17

 

[PMID: 26085274 ]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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