2015.05.09 | ニュース

ニシンとサバが抗がん剤の効果を弱くする?

関連物質が血液に移行することを確認

from JAMA oncology

ニシンとサバが抗がん剤の効果を弱くする?の写真

魚に含まれる脂肪酸は「体にいい」と考えられ、魚油のサプリメントも売られています。しかし、いいことばかりでもないようです。オランダの研究チームから、魚油のある成分がマウスに抗がん剤を使ったときの効果を弱くすること、その成分は人が魚油サプリメントを飲むか魚を食べると血中で濃度が上昇すること、がん患者が魚油サプリメントを飲んでいる場合があることが報告されました。

◆がん患者の118人中5人が魚油サプリメントを使用

研究チームは、2011年に「ユトレヒト大学医療センターでがん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあるを治療中の患者400人」を対象に、魚脂サプリメントを摂取しているか質問票による聞き取り調査を行いました。

その結果、「118人から回答があった」中で、魚油に多く含まれているEPAやDHAといった「ω-3脂肪酸のサプリメントを使っていると答えたのは13人」、そのうち魚油としてサプリメントを飲んでいると答えたのは5人でした。

 

◆マウスに魚油を与えると抗がん剤の効果が弱くなる

先行研究で指摘されていた、魚油に含まれる「16:4(n-3)脂肪酸」が抗がん剤悪性腫瘍(がん)に効果を発揮する薬剤。ただし、がん以外の良性疾患に用いられることもあるを効きにくくする作用を確かめるため、マウスで実験を行いました。

市販の魚油サプリメント6種類の成分を分析したところ、「すべての魚油に、抗がん剤の効果と関連しうる量の16:4(n-3)脂肪酸が含まれており、その量は0.2μMから5.7μM」でした。

マウスに人の大腸がんの細胞を移植し、シスプラチンという抗がん剤で治療しているときに、魚油1μLを口から飲ませたところ、魚油を飲ませなかった場合に比べて抗がん剤の効果が弱くなり、がんの大きさはシスプラチンを使わなかったときと差がありませんでした。

 

◆魚油と魚から16:4(n-3)脂肪酸が血液に移行する

2012年に、健康なボランティアの参加者50人を対象に、3種類の魚油と4種類の魚を摂取した後に16:4(n-3)脂肪酸が血液に移行するかどうかを調べました。

参加者をランダムに振り分け、種類と量を変えて魚油のサプリメントを飲んでもらうか、4種類の魚のどれか1種類を食べてもらった後に、血中の16:4(n-3)脂肪酸の濃度を測定し比較しました。

その結果は次のとおりでした。

健康なボランティア参加者が、1日に推奨される摂取量10mLの魚油を摂取した場合、血漿中の16:4(n-3)脂肪酸が多い人で摂取前の20倍にまで上昇した。

上昇した濃度がほぼ完全に元の水準に戻ったのは10mLの魚油を摂取してから8時間後だった。

ニシンとサバには、サケとマグロよりも多く16:4(n-3)脂肪酸が含まれていた。

高濃度の16:4(n-3)脂肪酸を含む魚を食べると、魚油を飲んだときと同じように、血漿中の16:4(n-3) 脂肪酸の濃度が上昇した。

これらの結果から、研究チームは「抗がん剤治療がんの治療の一種で、抗がん剤を使った治療の総称の前後には16:4(n-3)脂肪酸を多く含む魚や魚油を避けることが望ましいかもしれない」と述べています。

 

これだけでは人の抗がん剤治療に魚や魚油が有害かどうかを判断する材料にはなりませんが、疑わしいものは避けるに越したことはないと考える人もいるかもしれません。ただほかの病気によって食事制限がなされることもあり、問題は単純ではありません。食べ物が治療に及ぼす影響については、まだまだ多くのことが今後の研究に委ねられています。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Increased Plasma Levels of Chemoresistance-Inducing Fatty Acid 16:4(n-3) After Consumption of Fish and Fish Oil.

JAMA Oncol. Published online April 02, 2015

[PMID: 26181186 ] http://oncology.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2212208

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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