2015.05.10 | ニュース

コーヒー摂取が、乳がんの進行をくいとめる?

1,090人の乳がん患者を調査

from Clinical cancer research : an official journal of the American Association for Cancer Research

コーヒー摂取が、乳がんの進行をくいとめる?の写真

コーヒーのような食品が乳がんやホルモンに影響を与えるかについて、今まで数々の研究によって報告されてきました。今回、スウェーデンの研究チームは「コーヒーの摂取が乳がんの進行を抑える可能性があり、分子レベルでもがん細胞の増殖を止める可能性がある」と報告しました。

◆1,090人の乳がん患者を調査

研究チームは、コーヒーの摂取が乳がんの性質や乳がんの死亡率に与える影響を調べるために、「1,090人の乳がん患者のデータベースの情報」を統計解析しました。
そして、コーヒーが細胞に対して、あるいは細胞の中の分子に対してどのような影響をもたらしているか調べるために、乳がん細胞内のエストロゲンレセプターα(ER)を調べました。
加えて、培養したがん細胞にコーヒーの成分を与え、細胞に起こる変化を観察しました。
 

◎エストロゲンレセプターαとは?

エストロゲンレセプターαとは、正常な細胞にも乳がんの細胞にも細胞の表面にある物質で、女性ホルモンのエストロゲンと結合して、エストロゲンが細胞に影響を与えるために必要なものです。
乳がんはエストロゲンによって進行を促されることが知られており、エストロゲンがERと結合するのを妨げる物質が抗がん剤(タモキシフェンなど)として使われていますが、一部の乳がんではがん細胞にERがなく(ER陰性)、この場合はERがある場合(ER陽性)に比べてタモキシフェンが効きにくいと考えられています。

 

◆コーヒーを飲むと乳がん発生リスク減少

解析結果は以下のとおりでした。

コーヒーを1日に2杯以上飲む人は、0〜1杯飲む人に比べて、記録した乳がんの大きさが小さく、がん細胞のER陽性の割合が少ない傾向にあった。
また、ER陽性でタモキシフェン治療をしている乳がん患者のうち、コーヒーを1日に2杯以上飲む人は、0〜1杯飲む人に比べて早期乳がんの再発リスクが49%少なくなっていた。
がん細胞にコーヒーの成分を与える実験では、カフェインとコーヒー酸はエストロゲンレセプター陽性、陰性に関わらず、がん細胞の増殖を抑えていた。また、カフェインはがん細胞の増殖に関わる物質の生成を抑えていた。

研究チームは「カフェインとコーヒー酸はER陽性の乳がんにも、ER陰性の乳がんに対しても抗がん作用があることがわかった。その作用はがんの治療で用いるタモキシフェンに反応しやすくすることで起こっている可能性がある」と述べています。

先日、コーヒーが死亡率を抑える可能性についてご紹介させていただきましたが(http://medley.life/news/item/55422bae05c72a0001009082)、コーヒーの意外な効果が示す報告が続々とされています。
あくまでバランスの良い食生活が大事であり、コーヒーが薬のかわりにはならないことが前提ですが、今回の研究から、コーヒーが乳がんの進行を抑える可能性が示されました。
今後の追加研究に期待したいところです。

執筆者

佐々木 康治

参考文献

Caffeine and Caffeic Acid Inhibit Growth and Modify Estrogen Receptor and Insulin-like Growth Factor I Receptor Levels in Human Breast Cancer.

Clin Cancer Res. 2015 Apr 15

[PMID: 25691730]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る