2015.04.30 | ニュース

投球イニング数を制限しても、けがは減らない

プロ投手の投球記録を統計分析

from The Journal of sports medicine and physical fitness

投球イニング数を制限しても、けがは減らないの写真

ピッチャーにとって、肩や肘のけがは致命的です。ピッチャーがけがをしないように、メジャーリーグでは多くのチームが投球イニング数を制限しています。若いピッチャーには「前のシーズンよりも30イニングを超えて多く投げさせない」という慣習もあります。ところが意外にも「イニング数制限をしてもけがを減らせていない」という統計が出ました。

◆少しでも登板したピッチャーは対象に

この研究では、2002年から2007年のシーズンに、メジャーリーグかマイナーリーグの2つのレベルのどれかで1/3イニング以上を投げた25歳未満のピッチャー全員を対象に、投球イニング数を数え、1シーズン中に投げたイニング数と、連続するシーズンで投げたイニング数の差によって、負傷者リストに加えられるけがが起こりやすいかどうかを回帰分析しました。
 

◆投球イニング数の効果は見つからず

投球イニング数も、連続シーズンの投球イニング数の差も、けがの起こりやすさとは関連が見つかりませんでした。連続シーズンの投球イニング数の差によってグループ分けしても、グループごとにけがの起こりやすさは変わっていませんでした。

 

研究班は「投球イニング数制限だけでピッチャーをけがから守ることはできない」と結論しています。けがの原因は練習にあるのでしょうか? 球数なのでしょうか? 登板の間隔なのでしょうか?

このような疫学研究が新たなスポーツ界のスタンダードを作っていくのかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Injuries to young professional baseball pitchers cannot be prevented solely by restricting number of innings pitched.

J Sports Med Phys Fitness. 2015 Mar 18

[PMID: 25784395]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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