インスリン・GLP-1受容体作動薬配合剤
血糖値を下げるインスリンとインスリン分泌を促すGLP-1受容体作動薬を配合し、この2種類の成分の作用により血糖値を下げる薬

インスリン・GLP-1受容体作動薬配合剤の解説

インスリン・GLP-1受容体作動薬配合剤の効果と作用機序

  • 体内にインスリンを補充したりインスリン分泌を促すことにより血糖値を下げる薬
    • 糖尿病は血糖値が高い状態が続くことで、様々な合併症を引き起こす
    • インスリンは膵臓から分泌される血糖を下げるホルモン
    • GLP-1(インクレチンというホルモンの一つ)は、自身の受容体(GLP-1受容体)に働き、血糖に応じて膵臓からインスリン分泌を促す
    • 本剤はインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合製剤

インスリン・GLP-1受容体作動薬配合剤の薬理作用

糖尿病は、血液中の糖(ブドウ糖)が適正な量を超えて増えてしまった状態で、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)の高い状態が続くと様々な合併症がおこる。

インスリンは血糖を下げるホルモンであり、膵臓から分泌される。また体内には食物の摂取後、インスリン分泌を促すインクレチン(GLP-1などの消化管ホルモンの総称)という物質がある。GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)はインクレチンの一つで、膵臓にはGLP-1が作用するGLP-1受容体があり、この受容体がGLP-1によって活性化するとインスリン分泌が促される。このように正常な状態ではインスリンが適切に分泌されるが、膵臓の障害などでインスリンが十分に作れなくなったり(インスリン分泌低下)、インスリンの効きが悪くなること(インスリン抵抗性)によってインスリンが十分に働かない状態になると血糖値が下がらなくなる。

本剤はインスリン(インスリンアナログ)とGLP-1受容体作動薬の配合製剤であり、2種類の成分の作用(インスリンの補充かつ血糖に応じたインスリン分泌の促進)により血糖値を下げることで糖尿病の合併症を予防する効果が期待できる。また本剤は、1回の注射手技で、2種類の成分を同時に投与できるため、アドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)などへのメリットも考えられる。

なお、インスリンアナログ(「インスリンに似たもの」の意味をもつ)とは、インスリンと同じ生理作用を持ちながら、体内におけるインスリンの作用持続時間などを調節したもので、超速効型(作用発現時間が10〜20分で作用持続時間が3〜5時間)や持効型(作用持続時間が約24時間又はそれ以上)などがあるが、本剤に使用されているのは、作用が長時間持続する持効型のインスリンアナログとなる。

インスリン・GLP-1受容体作動薬配合剤の主な副作用や注意点

  • 低血糖
    • 冷や汗がでる、気持ちが悪くなる、手足がふるえる、ふらつく、力が抜けた感じがする、などの症状が急に出現したり持続したりする
    • 上記のような症状がみられる場合は、吸収の速い糖分などを摂取する
    • 糖分を摂取しても症状の改善がみられない場合は、医師や薬剤師に連絡する
    • 高所作業や自動車の運転などに従事している場合は特に注意する
  • 消化器症状
    • 吐き気、胃部不快感、下痢、便秘などがあらわれる場合がある
    • 頻度は稀とされるが胆石症胆嚢炎胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸などが引き起こされる可能性があり、腹痛などの腹部症状がみられた場合は放置せず医師や薬剤師に連絡するなど適切に対処する
  • 注射部位反応
    • 発赤、痒み、疼痛腫脹などがあらわれる場合がある
  • アナフィラキシー、血管神経性浮腫
    • 頻度は非常に稀である
    • 呼吸困難、血圧低下、脈の乱れ、発汗、発疹、急に唇・まぶたなどが大きく腫れる、話しづらいなどの症状がみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡するなど適切に対処する

インスリン・GLP-1受容体作動薬配合剤の一般的な商品とその特徴

ゾルトファイ配合注

  • インスリンデグルデク(持効型インスリンアナログ:トレシーバの成分)とリラグルチド(GLP-1受容体作動薬:ビクトーザの成分)の配合剤

ソリクア配合注

  • インスリングラルギン(持効型インスリンアナログ:ランタスなどの成分)とリキシセナチド(GLP-1受容体作動薬:リキスミアの成分)の配合剤