ヒト型抗PCSK9モノクローナル抗体(高コレステロール血症治療薬)(エボロクマブなど)
血液中のLDLコレステロールを増加させる因子となるヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)という体内物質に結合し、この物質の働きを阻害することで、LDLコレステロール値を下げる作用をあらわす薬

ヒト型抗PCSK9モノクローナル抗体(高コレステロール血症治療薬)(エボロクマブなど)の解説

ヒト型抗PCSK9モノクローナル抗体(高コレステロール血症治療薬)(エボロクマブなど)の効果と作用機序

  • 血液中のLDLコレステロールを増加させる物質の働きを阻害し、LDLコレステロール値を下げることで主に家族性高コレステロール血症を改善する薬
    • 脂質異常症はコレステロールや中性脂肪などの数値異常により動脈硬化などの原因の一つ
    • 家族性高コレステロール血症脂質異常症の一つで、遺伝子変異よりLDLコレステロールの値が高くなる
    • 体内のPCSK9という物質は血液中のLDLコレステロールの増加因子
    • 本剤はPCSK9に結合しこの物質の働きを阻害することでLDLコレステロール値を下げる作用をあらわす

ヒト型抗PCSK9モノクローナル抗体(高コレステロール血症治療薬)(エボロクマブなど)の薬理作用

脂質異常症はコレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)の数値異常がおこり、動脈硬化などの原因となることで様々な病気の温床になる。脂質異常症の中でも、家族性高コレステロール血症は遺伝子の変異で生じる遺伝性疾患の一つで、低年齢時よりLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値が高くなる。

アテローム性動脈硬化症は日本における死亡や障害の主な原因の一つとなっていて、LDLコレステロール値の増加はその主な危険因子と考えられている。

本剤は特定物質に結合する抗体として造られたヒト型免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体で、ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9:Proprotein Convertase Subtilisin/Kexin type9)という物質に結合する。

PCSK9は肝細胞の表面にある低比重リポ蛋白受容体(LDLR)という血液中のLDLコレステロールを除去する物質と結合し、結合してできた複合体は肝細胞内に取り込まれて、肝細胞表面のLDLRの数が減り、結果、血液中のLDLコレステロールが増加する。

本剤はPCSK9と結合することで、LDLRへのPKSK9の結合を阻害し、肝細胞へのLDLコレステロールの取り込みを促進させることで、血液中のLDLコレステロール値を低下させる作用をあらわす。

本剤は既存の薬物治療でLDLコレステロールが治療の目標値に達しない脂質異常症(高コレステロール血症)に対する薬剤として開発された経緯があり、通常、脂質異常症治療薬であるスタチン系薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)で効果不十分な場合に使われる薬剤となる。

なお、家族性高コレステロール血症(FH:Familial Hypercholesterolemia)には、ホモ接合体(HoFH)とヘテロ接合体(HeFH)のタイプに分かれる。本剤の中で、エボロクマブ(商品名:レパーサ®)はホモ、ヘテロ両方のタイプに対しての有効性などが確認されている。

ヒト型抗PCSK9モノクローナル抗体(高コレステロール血症治療薬)(エボロクマブなど)の主な副作用や注意点

  • 注射部位反応
    • 紅斑発赤腫脹、痛み、痒みなどがあらわれる場合がある
  • 消化器症状
    • 胃腸炎、下痢などがあらわれる場合がある
  • アレルギー反応
    • 頻度は非常に稀とされるが、過敏症、蕁麻疹血管炎などがあらわれる可能性がある

ヒト型抗PCSK9モノクローナル抗体(高コレステロール血症治療薬)(エボロクマブなど)の一般的な商品とその特徴

レパーサ

  • エボロクマブ製剤
  • 剤形(剤型)に関して
    • レパーサ皮下注140mgペン:エボロクマブとして140mg含有
    • 追加の剤形(剤型)として、薬剤を充填したカートリッジと専用自動注入器から構成される「オートミニドーザー」がある(エボロクマブとして420mg含有)
  • スタチン系薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)による治療が適さない病態などにも有用とされる