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壊死性軟部組織感染症

壊死性軟部組織感染症の基礎知識

壊死性軟部組織感染症とは?

  • 皮膚や筋肉の感染症の中で、最も重症なものの一つ
    • 皮膚や脂肪、筋膜といった組織が壊死して黒くなる
    • 死亡率は数十パーセントに及ぶ
  • 「壊死性軟部組織感染症」自体が複数の細菌感染症をまとめた総称であり代表的なものには以下がある
  • 溶連菌によるもの
    • 劇症型溶連菌感染症とも呼ばれる
    • 菌に外毒素を体内で作られると溶連菌性連鎖球菌性毒素性ショック症候群(STSS)という重篤な状態になる
    • 溶連菌自体はどこにでもいる一般的な菌であるが、本感染症を引き起こした溶連菌を指して俗に「人食いバクテリア」と言われることがある
    • 糖尿病肝硬変悪性腫瘍などがあって免疫力が低下している人に多いが、それらがない健康体の人にも発症する
    • 死亡率は30-40%とする報告あり
  • クロストリジウム菌によるもの
    • 症状の進行が極めて急速かつ重篤
    • 患部から強い腐敗臭が生じる
    • 年齢や健康状態を問わず発症し得る
  • 黄色ブドウ球菌によるもの
    • 菌に外毒素を体内で作られるとTSS(毒素性ショック症候群)という重篤な状態になる
    • インフルエンザなどその他の感染症にかかり、全身の免疫力が低下している場合などに特に多い
  • その他の菌によるもの:バクテロイデス菌、ビブリオ菌、大腸菌など

症状

  • 手足などの患部に以下のような症状が生じる
    • 強い痛み
    • 黒や赤紫など色の変化
    • 水疱(水ぶくれ)が生じる
    • 握雪感(あくせつかん)と言って、皮膚を押すと裏側で小さな泡がプツプツ弾けるような感触がある(ガスが移動する感触)
  • 患部の症状から発症するが、重症化すると全身の症状へ広がっていく
    • 発熱
    • 血尿や、尿量が少なくなるなどの変化(腎不全
    • 血が止まりにくくなり、全身の皮膚に赤い小さな点のような出血跡が出現する(DICと呼ばれる状態)
    • 意識がもうろうとするなどの意識障害
  • 原因菌によっては、嘔吐や下痢などの症状が強く出るものもある
  • 手足に多いが、腹部や背中、首や生殖器に感染する場合もある

検査・診断

  • 皮膚の感染症であることは、見た目である程度の判別が可能
    • その中で、一般的な蜂窩織炎などの感染症なのか、あるいは重症感染症である壊死性軟部組織感染症なのかは以下のような検査で区別する
  • 身体所見
    • 皮膚を触ったり押したりした場合に痛がりかたが強い
    • 皮膚の変色が強かったり、水疱ができたり変化が見られる
    • 皮膚の症状が変化するスピードが早い(数時間でどんどん変化することが多い)
  • 画像検査
    • レントゲン検査:皮膚の裏にガスが見えると壊死性軟部組織感染症が疑われる
      ・ただし、ほとんどの場合でガスは見えないので注意
    • 造影CT検査:ガスの確認や、皮膚の下のどの深さまで炎症が広がっているかを確認する
  • 血液検査
    • 炎症の程度(重症度)を確認する
    • 壊死性軟部組織感染症によって引き起こされる他の病態腎不全DICなど)の進行度を確認する
  • 細菌検査
    • 患部から出たを顕微鏡で確認して、原因となっている菌を探す
    • 膿や血液を培養して、同様に原因となっている菌を確認する
  • 致死率の高い重症感染症であるため、可能性が疑われた時点で何日もかかる検査結果を待たずに、本疾患であるとして治療を開始することが必要である
    • 壊死性軟部組織感染症だった場合には、結果を待っている間に病状はどんどん悪くなる

治療

  • 治療の大原則は手術
    • 患部を切り開いて、中にある細菌をできる限り取り除く
    • 不十分な処置では残った菌が全身に広がってしまうことがあるため、救命のために、手足そのものを手術で切断せざるを得ない場合も少なくない
    • 診断を確定させる意味でも、早期手術が重要
      ・患部を切って内部を直接確認したところ、結果的に手術が必要な病態ではなかったということもあり得る
      ・しかし、手遅れになった場合には死亡のリスクが大きいため、この疾患が疑われた場合には手術が優先されるべきである
  • 抗菌薬抗生物質)の点滴
    • 細菌感染の勢いを抑えるために、手術を行ったとしても抗菌薬は必ず併用する
    • 壊死性軟部組織感染症の診断が確実である場合には、抗菌薬だけで治療することは原則的に困難
      ・ただし、初期の壊死性軟部組織感染症に症状の似た蜂窩織炎であったり、どちらか判断がつかない場合にはまず抗菌薬による治療から始まる場合もあり得る
  • 高気圧酸素療法
    • 手術と抗菌薬が治療の基本であるが、これらと併用される場合もある
    • 酸素カプセルのような機械、あるいはそれを大型化させた特殊な部屋に入り、気圧の高い中で数時間過ごす
    • 効果の有無は菌によるという点と、害は少ないがどれほど効果があるか定かではない点、また一部の医療機関でしか行えない特殊な治療である点に注意が必要である

壊死性軟部組織感染症に関連する治療薬

カルバペネム系抗菌薬

  • 細菌の細胞壁合成を阻害し殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
    • 細胞壁という防御壁をもつ種類の細菌は、細胞壁が作れないと生きることができない
    • 細胞の細胞壁合成に深く関わるペニシリン結合タンパク質(PBP)というものがある
    • 本剤は細菌のPBPに結合し細胞壁合成を阻害することで抗菌作用をあらわす
  • 本剤がもつ抗菌作用の範囲は幅広く多くの細菌に対して抗菌作用が期待できる
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壊死性軟部組織感染症の経過と病院探しのポイント

この病気かなと感じている方

壊死性軟部組織感染症は、体の表面に起こる感染症で、命に関わる重大なものの一つです。手足に特に多いですが、皮膚のどの部位にも生じ得ます。痛みや色の変化、水ぶくれなどが出現して数時間単位で症状が急激に進行していきます。

ご自身が壊死性軟部組織感染症でないかと心配になった時、まずは皮膚科や内科のクリニックの受診で診断を受け、判断を仰ぐのが良いでしょう。壊死性軟部組織感染症そのものは命に関わる重大な疾患ではあるのですが、似た症状の中の大部分は蜂窩織炎といって、皮膚の浅い部分のみの感染症です。どのような症状が出たら急いで病院に行くべきかどうかを事前に判断するというのはなかなか難しいというのが率直なところです。

そのような中でもあえて注意すべきケースを挙げるとすれば、以下の状況にある方がそれに該当します。免疫力が落ちる病気がある方(糖尿病肝硬変慢性腎臓病がんなど)、免疫抑制薬を服薬している方、日々のアルコール摂取量が多い方、ウイルス感染症にかかっている方(インフルエンザ水ぼうそうなど)、妊娠中あるいは出産直後である方などです。このような方を中心に、「我慢ができないような患部の強い痛みがある」、「患部の赤みや腫れに加えて、高熱や強いだるさなどの症状がある」、「患部が赤くなった後に赤紫〜黒みを帯びてきた、水ぶくれができた」といったような症状があればすぐに病院を受診することをお勧めします。


この病気でお困りの方

壊死性軟部組織感染症は致死率の高い疾患です。この病気で必要になり得るのが、重症化した場合の手足の切断手術です。菌が繁殖して壊死(細胞が死ぬこと)してしまった体の一部は、手術で取り除く以外の治療法がありません。抗生物質は助けにはなるのですが、手術を行わずに薬だけで治そうとして、手遅れになって命を落としてしまうような場合もあります。菌が全身に広がって、腎臓、肝臓、脳と様々な臓器を障害してしまうためです。このような事態を避けるために切断手術が行われます。

もし主治医にそのような治療を提案された場合、おそらく誰しもがまずは他の治療法を望むことでしょう。手足を切断してしまえば後から再生させることはできませんし、不自由が伴うことは否めないからです。そのような場面でセカンドオピニオンを求めたり、別の病院での治療をお考えになることもあるかもしれません。しかし、手足の切断が必要な状況まで症状が進行してからでは、手術によって直接菌を取り除く以外の治療は今の医学では困難であるのが現状です。菌が骨や筋肉まで及んでいなければ、それ以外の部位(皮膚や脂肪)のみの切除で治療が行えて手足が残ることもあり得ます。しかし根本的には医療者の判断や技術というよりも菌の広がり具合が大勢を決めてしまうために、診断がつき次第早期に治療を開始することが重要な疾患です。





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