急性中耳炎の基礎知識
POINT 急性中耳炎とは
鼓膜の奥にある中耳に炎症が起こった状態です。鼻水や発熱などのかぜ症状につづいて起こることが多く、耳の痛みが主な症状です。乳幼児は耳が痛いことを伝えられないので、機嫌が悪くなる・泣く・耳を押さえるなどの仕草をすることがあります。鼓膜の状態から診断が行われ、原因に応じて、抗菌薬を用いるかどうかが判断されます。痛みや発熱に対しては、解熱鎮痛剤を使います。耳だれが出たり、耳の後ろまで赤みや腫れが広がる場合は、重症化の可能性がありますので、小児科や耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
急性中耳炎について
急性中耳炎の症状
- 主な
症状 :中耳 に膿 (うみ )がたまることで下記のような症状が出現する- 耳の痛み
- 聞こえづらさ(膿のために鼓膜の動きが悪くなる)
- 耳が詰まった感じ
- 発熱
- 症状が始まって約1週間(特に2-3日)は症状が強い
- 膿が多い場合には鼓膜が自然に破れて、耳から膿が出てくる場合がある(みみだれ)
- 鼓膜は破れても再生するので耳が聞こえなくなることはほとんどない
- 乳幼児の場合は耳が痛いことを伝えられないので、機嫌が悪くなる・耳を押さえる・ひっぱる・こすりつけるなどの動きをすることがある
- 発熱や耳の痛みの症状の多くは数日で改善するが、その後も中耳内に膿などの液体が残っていることが多い(早くても1か月程度)
- 膿が残っている間はカゼなどをきっかけに急性中耳炎を繰り返しやすい
- 2-3か月たっても液体が残っている場合には滲出性中耳炎の状態となる
急性中耳炎の検査・診断
- 主な検査
- 耳鏡検査:耳鏡を使って、鼓膜を通じて
中耳 を観察する 内視鏡 検査:より詳しく中耳を観察する細菌検査 :みみだれや、鼻の奥の菌の種類をみる聴力検査 :耳の聞こえ具合を調べる
- 耳鏡検査:耳鏡を使って、鼓膜を通じて
- 必要に応じて以下のような検査を行うことがある
- 血液検査:
炎症 の程度や血液の中に菌が移行していないかの確認 ティンパノメトリー 検査:鼓膜の動きを調べる検査(聞こえが悪い場合)レントゲン 検査:アデノイド増殖症などの病気がないか調べる
- 血液検査:
急性中耳炎の治療法
- 主な治療
- 特に大人で軽症の場合、3日間は
抗生物質 は使用せずに経過みることがある - 6か月未満で耳の痛みが強い場合や2歳未満で両側性の場合は早めに抗生物質を使用する(原則ペニシリン系):最低5日間は続ける
- 痛みや発熱に対しては適宜解熱鎮痛剤を使う
- 痛みに対しては耳の後ろを冷やすだけでも良い
- 鼻水はできるだけこまめに吸う
- みみだれが出た場合には耳の中は触らず、表面だけを拭き取るようにする
- 特に大人で軽症の場合、3日間は
症状 に応じて鼓膜切開して膿 を出す場合もある- 急性中耳炎を繰り返す場合には鼓膜に小さなあなを開け、細い管を通してあながふさがるのを防ぐことがある:チューブ留置
- 鼓膜切開後やチューブを留置した場合、自然にみみだれが出ている場合には
点耳薬 を使用することもある - 耳の後ろが赤くなって腫れたり、耳が立ち上がるようになる急性乳様突起炎に進展する場合がある
- その場合には抗生物質を使う期間が長くなったり、手術が必要になることもある
- 小児
肺炎球菌 ワクチンは中耳炎を予防する効果がある
急性中耳炎に関連する治療薬
抗菌薬(耳科用)
- 細菌増殖を阻害し、抗菌作用をあらわすことで耳の細菌感染を治療する薬
- 細菌の増殖にはDNA複製や細胞壁の合成などが必要となる
- 外耳道や中耳に細菌が感染して炎症がおきると耳の痛みや聞こえづらさなどがあらわれる
- 本剤は細菌のDNA合成阻害や細胞壁合成阻害など、それぞれの薬剤がもつ抗菌作用により細菌増殖を抑える作用をあらわす
- 本剤の中には点眼用などとしても使用できる製剤もある
急性中耳炎の経過と病院探しのポイント
急性中耳炎が心配な方
急性中耳炎では発熱と同時に耳の痛みが生じます。お子さんに熱があって耳を気にしている様子があれば、まずは小児科、もしくは耳鼻科のクリニック受診をお勧めします。急性中耳炎は一般的な病気であり、小児科医や耳鼻科医であれば専門病院ではなくとも通常は対応可能です。急性中耳炎の診断は耳鏡による診察で行われますので、特別な検査機器は必要ありません。
急性中耳炎の大半は自然に治る病気であるため、軽症の場合は、受診せずに自然経過で症状が治まるのを待つというのも一つの手段になります。
急性中耳炎でお困りの方
急性中耳炎の治療ですが、軽症であれば数日間様子を見ているだけで症状が改善します。それ以外の治療としては、抗生物質を使用することもありますが、特に重症の場合には鼓膜切開といって、鼓膜に穴を空けて、内側に溜まった膿を出す処置が行われます。
このような処置は耳鼻科で行われますが、必要があれば小児科の医師から紹介を受けた上で受診することができますので、小児科ではだめで最初から耳鼻科を受診しなければならない、ということはありません。
小児の場合には繰り返し中耳炎になることがありますが、成長するにつれて急性中耳炎にはなりにくくなります。普段は同じかかりつけの医師にみてもらうのが一番良いでしょう。