気管支炎の基礎知識
POINT 気管支炎とは
何らかの理由で気管支に炎症が生じている病気です。原因は感染だけでなく、喫煙やアレルギーなど多岐に渡ります。見られる症状は発熱・咳・痰・呼吸困難感などが主です。症状や診察の結果から総合的に診断されますが、肺炎など他の病気に至ってないかを確認するために画像検査や血液検査が行われることもあります。咳止めや解熱薬などを用いて症状を和らげる治療(対症療法)を行います。また、ほとんどの場合で細菌感染が原因ではないので、抗菌薬は必ずしも使われません。気管支炎が心配な人や治療したい人は、呼吸器内科や感染症内科、小児科を受診して下さい。
気管支炎について
気管支 に炎症 があり、咳や痰などの呼吸器症状がみられる状態- 症状の持続期間による分類(詳細はそれぞれの疾患を参照)
- その他の分類(詳細はそれぞれの疾患を参照)
- 感染性気管支炎
アレルギー 性気管支炎- アレルギー物質(
アレルゲン )に接触したことが原因で、アレルギー反応として生じる気管支炎 - 花粉やハウスダスト、ペットの毛、食べ物、化学物質などが原因となりやすい
- アレルギー物質(
- 喘息性気管支炎
- 乳幼児でみられる、
喘鳴 を生じる病気の総称 - 気管支喘息とは分けて考えるべきである
- 乳幼児でみられる、
- 細気管支炎
- 正確には、気管支炎とは炎症を起こしている部位が異なる
ウイルス 感染によって生じる、細気管支 (気管支の奥に存在する細く枝分かれした末端の部分)の炎症
- びまん性汎細気管支炎
- 細気管支を中心として、肺全体に広く炎症が広がっている状態
気管支炎の症状
- 主な症状
- 発熱
- 咳
- 痰
喘鳴 (呼吸の音がひゅーひゅーと聞こえる)
- 各原因によって様々な症状がみられる
気管支炎の検査・診断
- 基本的には呼吸音や咳・痰の様子など、診察の結果から診断をする
- 必要に応じて以下の検査を追加で行うこともある
胸部X線 (レントゲン )検査- 血液検査
炎症 の程度を確認する
細菌検査 - 痰を顕微鏡で見たり
培養 することにより、原因となっている細菌 の種類を調べる
- 痰を顕微鏡で見たり
気管支炎の治療法
- 基本的には症状を和らげる治療が主
- 使用する薬剤は原因により大きく異なる
- 咳止め
- 解熱薬
- 去痰薬
気管支 拡張剤- 抗
アレルギー 剤
- びまん性汎細気管支炎(DPB)という特殊な種類の気管支炎には
抗生物質 (エリスロマイシン)を使用する
気管支炎に関連する治療薬
鎮咳薬(非麻薬性)
- 咳を引き起こす咳中枢の抑制作用や気道を広げる作用などにより咳などの呼吸器症状を緩和する薬
- 咳はウイルスなどの異物や痰を体外へ排出しやすくする生体内防御反応だが、体力の消耗や元々の呼吸器疾患の悪化などを引き起こす場合もある
- 咳は延髄の咳中枢からの指令によりおこるが、気管支炎症などにより気道が狭くなると咳がおきやすくなる
- 本剤は咳中枢を抑えたり、気管支を拡張させるなどの作用をあらわす
去痰薬
- 病原体や異物などを痰や鼻汁によって体外へ排出しやすくすることで気管支の炎症や喘息、慢性副鼻腔炎などによる症状を和らげる薬
- 痰や鼻汁には粘性の分泌物が含まれ、粘膜保護や異物をからめとり排出する作用などがある
- 粘性の分泌物が気道や鼻腔でつまると咳や蓄膿症などを誘発する場合もある
- 本剤は気道分泌促進作用、粘液などの排出促進作用などをあらわす
- 本剤は薬剤の作用などにより、気道粘液分泌促進薬や喀痰溶解薬などに分けられる
鎮咳・去痰薬
- 咳を抑え、痰を吐き出しやすくするなどにより気管支炎などによる呼吸器症状を和らげる薬
- 咳はウイルスなどの異物や異物をからめとった痰を体外に排出しやすくなる生体防御反応
- 咳によって体力の消耗、不眠など体への負担が増す場合もある
- 本剤は咳を抑える鎮咳作用と痰を排出しやすくする去痰作用をあらわす
気管支炎の経過と病院探しのポイント
気管支炎が心配な方
気管支は、のどと肺の中間にある管状の気管です。この部分に炎症が生じると咳や発熱といった症状が出ます。一口に気管支炎といっても原因は様々で、若い人がなりやすい気管支炎(マイコプラズマ気管支炎など)や、抗生物質の効かないウイルス性の気管支炎もあります。また細菌やウイルスではなく、アレルギーが原因の気管支炎もあります。このように「菌やアレルギーなど様々な原因で気管支に炎症が起きている状態」を気管支炎と呼びます。具体的な検査や治療は気管支炎の原因によって異なりますので、それぞれのページもご参考になさってください。
風邪(急性上気道炎)、気管支炎、肺炎の境界線は、実際のところ明確なものがあるわけではありません。上気道(のどの部分など)のとなりは気管・気管支ですし、気管支のとなりは肺です。のどだけに炎症があれば風邪ですし、気管支だけに炎症があれば気管支炎なのですが、実際には気管支と肺の両方に炎症があったり、のどと気管支に炎症があったりすることもしばしばです。炎症の場所を厳密に区別する必要はなく、実際には炎症の原因となっているのが細菌かウイルスか、またどの種類の細菌(ウイルス)かということが治療の使い分けに直結してくるところです。
熱があって通常の風邪よりも咳が強い場合には気管支炎の可能性が考えられます。ご心配であればまずはお近くの内科クリニックを受診することをお勧めします。内科の中で特にどこかということであれば呼吸器内科になりますが、気管支炎は患者数が多い病気であるため、一般内科であっても十分に対応可能です。
若い方では気管支炎になっても大半は自然に治ってしまいます。マイコプラズマ気管支炎は少なくない病気ですが、「長引く風邪だな」と思っているうちに治ってしまい、結局気管支炎だと認識されないままになっているケースも少なくないでしょう。治ってしまえば問題ありませんが、ご高齢の方では病状が進行して肺炎に至ることもありますので、呼吸の変化や息苦しい感じが出てきたら受診をお勧めします。