変形性関節症の基礎知識
POINT 変形性関節症とは
関節の軟骨がすり減った影響で、関節が炎症を起こした状態です。痛みや腫れ、違和感、水の溜まりといった症状が現れます。加齢や関節の酷使、体重の負荷、怪我などその原因はさまざまです。レントゲン検査や血液検査などによって診断が行われます。関節の酷使をさけて安静にすることやヒアルロン酸注射、装具・杖の使用なども治療として行われますが、痛みや変形が強い場合には関節の手術を行い、膝に人工関節を入れることもあります。変形性関節症が心配な人は整形外科を受診してください。
変形性関節症について
- 関節の
軟骨 がすり減り、関節が炎症 を起こした状態 - 以下の原因が考えられる
- 加齢(年齢による変化)
- 関節の使いすぎや体重による負担
- 関節のけが(脱臼など)をきっかけに軟骨の摩耗が起こり、進行して
発症 - 遺伝的要因も関係
- 45歳以下では男性、55歳以上では女性に多い
- 男性では体重のかかる膝や股関節に頻度が高く、50歳以上の約1000万人が変形性関節症による膝の痛みを経験
- 膝関節においては男性では重労働者に明らかに多く、女性では肥満の関与も報告されている
- 中年以降の女性には手の使いすぎによる親指の付け根の発症も多い
- 部位ごとの具体的な例(詳細はそれぞれの疾患を参照)
変形性関節症の症状
- 関節周囲の痛み
- 夜間痛
- 関節部位の腫れ、水が溜まる
- 運動時の違和感
- 関節を動かすときに引っかかる感じ
- 関節の曲げ伸ばし時に音がする
- 膝や股関節の変形性関節症では、悪化すると強い痛みにより歩行が困難になったり、正座やバスへの乗り降りなど様々な日常生活動作に支障を来す
- さらに進行すると、痛みは安静にしていても常に見られるようになり、睡眠が妨げられるようになることもある
変形性関節症の検査・診断
- 画像検査:
軟骨 のすり減りにより関節の隙間が狭くなっていないかどうかも調べるレントゲン 検査:長期間の摩擦刺激で骨が変形していないか調べるMRI 検査:骨に加えて軟骨や靱帯なども調べられる
- 血液検査:他の病気との区別が難しい場合に行われる
- 関節リウマチと症状が似るが、その場合は血液検査での
炎症 が強くなる
- 関節リウマチと症状が似るが、その場合は血液検査での
変形性関節症の治療法
軟骨 の摩耗に効果的な治療法は確立されていない- 悪化の防止には適度な運動や、減量、薬による
炎症 のコントロールなどを行う- 関節のまわりの柔軟性や筋力の維持が重要
- 関節内にヒアルロン酸など関節保護剤を注入
- 膝や股関節の変形性関節症では杖の使用により関節への負担が減る
- 膝では装具なども有効な場合がある
- さらに進行し、痛みや変形が強い場合は関節の手術や、55歳以降では人工関節を入れることもある
変形性関節症に関連する治療薬
アセトアミノフェン製剤
- 脳の体温調節中枢や中枢神経などに作用して熱を下げたり、痛みを抑えたりする薬
- 発熱は脳の体温調節中枢に情報が伝わり、体温調節中枢から発熱の指令が身体の各部に伝わることで生じる
- アセトアミノフェンは体温調節中枢に作用し、熱を体外へ逃がす作用を増強する
- アセトアミノフェンは発熱や痛みの情報を伝える物質を阻害する作用をあらわす
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(外用薬)
- 炎症や痛みなどを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、関節炎や筋肉痛などを和らげる薬
- 体内で炎症や痛みなどを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
- PGはシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きなどにより生成される
- 本剤はCOXを阻害しPG生成を抑えることで、炎症や痛みなどを抑える作用をあらわす
- 薬剤によって貼付剤(貼り薬)、塗布剤(塗り薬)など様々な剤形(剤型)が存在する
- 製剤によって使用回数や使用方法などが異なるため注意する
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(内服薬・坐剤・注射剤)
- 体内で炎症などを引きおこす体内物質プロスタグランジンの生成を抑え、炎症や痛みなどを抑え、熱を下げる薬
- 体内で炎症や痛み、熱などを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
- PGは体内でCOXという酵素などの働きによって生成される
- 本剤はCOXを阻害することでPGの生成を抑え、痛みや炎症、熱などを抑える作用をあらわす
- 薬剤によっては喘息患者へ使用できない場合がある
- COX阻害作用により体内の気管支収縮を引きおこす物質が多くなる場合がある
- 気管支収縮がおきやすくなることよって喘息発作がおこる可能性がある
変形性関節症の経過と病院探しのポイント
変形性関節症が心配な方
変形性関節症は、関節がすり減って慢性的な痛みが続く疾患であり、膝や肘、股関節などに起きるそれぞれの関節症の総称です。加齢とともに進行するものが多いのですが、若い方でも外傷や炎症をきっかけに発症することがあります。ある日突然痛みが生じるというよりも、最初は軽い痛みや動き始めのみに痛みが出現していたのが、月単位から年単位で徐々に痛みが強く、また痛みのある時間が長くなってくるという経過をたどります。
長く続く肘の痛みが変形性関節症ではないかとご心配の方は、まずお近くの整形外科クリニックを受診されることをお勧めします。変形性関節症の診断のためには、診察とレントゲンを行います。必要に応じて関節穿刺やMRIを行うこともありますが、MRIは最初から必須となる検査ではありませんので、初めに受診する医療機関としては通いやすいお近くのクリニックが良いでしょう。
変形性関節症でお困りの方
変形性関節症の場合、手術をするかどうかが大きな治療の分かれ目になります。骨の変形があまり進行しておらず痛みがあっても日常生活が送れるような場合には、痛み止めや関節への注射で炎症を押さえたり、サポーターを装着したりといった対応を行います。
手術を行う場合には、変形性関節症が生じている部位ごとに方法が変わりますので、詳しくは変形性膝関節症など、部位ごとのページもご参考になさってください。
手術は整形外科で行われます。病院を探す際には、整形外科専門医がいることや、年間で行われている手術の件数が(周囲の病院と比較して)少なすぎないことも一つの判断材料として良いかもしれません。そして手術を行わない場合や、手術を行ったとしてもその後にはリハビリテーションを行います。関節周囲の筋肉量を増やしたり、関節の動く範囲を広げたりすることで負担を減らすことができるためです。リハビリの専門家である理学療法士と連携しながら進めていくことになりますので、患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところも病院を探す際に参考になるところです。