睡眠障害の症状について:不眠症状やそれ以外の症状(中途覚醒、早朝覚醒など)についても説明
睡眠障害の症状は「睡眠中に現れる症状」とそれが影響して現れる「日中の症状」の2つに大別することができます。行われる検査や治療は症状を判断材料にして決められることも多いので、症状を正確に理解して伝えることが大切です。
1. 睡眠中に現れる主な症状
「睡眠時に起きる症状」について説明します。主な症状は次のものになります。
- 寝付きが悪い:入眠障害
- 睡眠中に目が覚める:中途覚醒
- 朝早くに目が覚める:早朝覚醒
- ぐっすり眠った感じがしない:熟眠障害
- 睡眠中に呼吸が止まる:睡眠時無呼吸
睡眠中に起こる問題の現れ方はさまざまで、その症状に合った治療が必要です。そのため、診察時に症状を正確に伝えることが大切です。「眠れなくてつらい」とお医者さんに言うのでは不十分で、「睡眠中に目が醒めてその後、眠れなくてつらい」というようにできるだけ具体的な内容を伝えて下さい。
次にそれぞれの症状について説明します。
寝付きが悪い:入眠障害
入眠障害は床についてもなかなか眠れない状態のことを指します。一方で、入眠にかかる時間はひとそれぞれです。すぐに寝られる人もいれば少し時間がかかる人もいます。
「何分以上入眠にかかかる場合に入眠障害である」という定義はなく、入眠に50分かかったとしても、日常生活に支障が出ていない場合には治療の必要はありません。
入眠には時間はかからないものの寝られるかどうか不安でしょうがないという人もいます。この場合には不安を取り除くために、入眠を促す薬や不安を取り除く薬を使うと不安をうまくコントロールできる場合があります。
睡眠中に目が覚める:中途覚醒
眠りには深さがあります。眠りの深さはよく寝たという感覚(熟眠感)よりも、身体を揺り動かされても簡単には起きない眠りの程度に近いです。また、睡眠中は眠りが深くなったり浅くなったりを繰り返しています。眠りが極端に浅かったり浅い時間が長く続くと睡眠中に目が覚めてしまいます。
睡眠中の眠りを浅くする原因の1つとして、就寝前のアルコールの摂取が知られています。眠りたいから寝る前に飲酒している人は禁酒することで中途覚醒が起こらなくなることも期待できます。
朝早くに目が醒める:早朝覚醒
予定していた時間より朝早くに目が覚めてしまうことも睡眠障害の症状の1つです。これも睡眠の途中で目が覚める症状と同じく、眠りの浅さが原因で起こると考えられています。
早朝覚醒の原因として注意が必要なものにうつ病があります。早朝覚醒はうつ病の特徴の1つです。早朝覚醒の原因次第では睡眠障害の治療とともにうつ病の治療も並行して行わなければなりません。診察の結果、「気分の落ち込みが続く」「やる気がわかない」などのうつ病を疑わせる症状がある場合は精神科や心療内科の受診が勧められることもあります。
ぐっすり眠った感じがしない:熟眠障害
睡眠の途中で起きたりすることがないのに「ぐっすりと眠れた感じがしない」という症状も睡眠障害によって起こります。このような症状を熟睡障害といいます。熟睡障害が起こると「疲れがとれない」などの症状につながります。
熟睡障害は睡眠時無呼吸症候群やうつ病が原因で起きることがあります。これらの病気は専門的な診察と治療が必要なので、熟睡障害を感じる人は内科や精神科・心療内科を受診して原因を調べてもらってください。
睡眠中に呼吸が止まる(睡眠時無呼吸)
睡眠中の呼吸が止まること(睡眠時無呼吸)も睡眠障害の症状の1つです。睡眠時に呼吸が止まると、身体への酸素の供給が少なくなり心臓の病気や睡眠の質の低下などの原因になります。
実際の呼吸が停止する様子は「いびきが突然途絶えて数秒から数十秒してまた再開する」という風に表現されることもあります。睡眠時無呼吸の程度が深刻な場合は積極的に治療をしなければならないので、周囲の人から「いびきが突然止まる」指摘がある場合や睡眠中に呼吸が止まる自覚がある場合には、睡眠時無呼吸を専門的に診療している医療機関を受診して詳しく調べてもらってください。
2. 日中の症状
睡眠障害によって睡眠時間が短くなったり睡眠の質が低下したりすると日中にも影響が現れます。ここでは日中の症状の主なものとして「日中の強い眠気・居眠り」と「日中の身体のだるさ」について説明します。
日中の強い眠気・居眠り
睡眠時間が減ったり睡眠の質が低下すると日中生活にも影響します。日中の強い眠気や居眠りが起こると作業の効率低下や事故のもとになるので、睡眠障害に対する治療が必要になります。
睡眠障害の治療を開始しても、日中の眠気に対する効果が出るまでには時間がかかることがあります。このため、日中の眠気が改善するまでの間は、昼寝をすることで不意に訪れる強い眠気や居眠りに対処することができます。ただし、この際の昼寝は短時間に区切って目安として30分以内にするようにしてください。30分以上昼寝をすると、夜に眠れなくなってますます昼に眠くなることになりかねないからです。睡眠障害の治療が順調に進むと日中の眠気が減ってくるため、昼寝をしなければいけないような場面も減っていきます。
日中の身体のだるさ
夜に眠れない状態が続くと疲労が蓄積して日中の身体のだるさの原因になります。また、睡眠時間は確保できていても、睡眠の質が低下している場合にも日中にだるさが起こります。
睡眠障害によって起こった身体のだるさは、睡眠状態を良くすることで改善が望めます。医療機関を受診して原因を調べてもらい、状態に応じた治療を受けるようにしてください。
参考文献
・日本睡眠学会認定委員会睡眠障害診療ガイド・ワーキンググループ/編, 睡眠障害診療ガイド, 文光堂, 2011
・小川朝生, 谷口充孝/編, 内科医のための不眠診療はじめの一歩, 羊土社, 2013