ひふがん
皮膚がん
皮膚に生じるがんの総称
6人の医師がチェック 162回の改訂 最終更新: 2023.09.11

皮膚がんの検査について:視診、ダーモスコピー検査など

皮膚がんかどうかは、視診やダーモスコピー検査といった皮膚の観察から判断できることが多いです。皮膚がんが疑われる場合には、より詳しく調べるために病理検査や画像検査が追加されます。検査には、皮膚がんかどうかをはっきりさせる目的の他に、ステージ(進行度)を調べるという目的もあります。このページでは各検査について詳しく説明します。

1. 問診

お医者さんと患者さんが主に対話をしながら行う診察を問診と言います。問診には患者さんの「身体の状況」や「背景」を確認する目的があります。患者さんは困っている症状を伝え、お医者さんからは症状について詳しい質問を受けます。また、症状の他にも今までにかかった病気や持病、定期的に飲んでいる薬についても聞かれます。

【皮膚がんの人への質問例】

  • 皮膚の病変はいつから現れたのか、またはいつ気づいたか
  • 皮膚の病変に変化はあるか
    • 色調に変化があるか
    • 大きさに変化があるか
  • 痒みや痛みなどはあるか
  • 現在治療中の病気はあるか
  • 定期的に飲んでいる薬はあるか

皮膚がんが疑われる場合は「症状の変化」が診断の決め手の1つになります。色調や大きさの変化がある場合は分かる範囲で答えてください。 また、検査や治療で使う薬には、持病や飲んでいる薬の影響を考慮しなければならないものがあります。持病や薬は漏らすさずにお医者さんに伝えてください。問診の前に持病をまとめておいたり、お薬手帳を使うとより上手に伝えることができます。

2. 身体診察

身体診察ではお医者さんが患者さんの身体を直接をくまなく調べます。身体診察には、見た目を観察する視診、触った感触を確かめる触診、聴診器を使って体内の音を聞く聴診などがあります。皮膚の病気は見た目である程度判断できるものが少なくないので、皮膚に症状がある場合には、視診が最も重視されます。視診で判断が難しい場合はより詳細に皮膚を観察できるダーモスコピー検査が行われます。

3. ダーモスコピー検査

ダーモスコピー検査はダーモスコープという拡大鏡を使って皮膚を観察する検査です。観察する場所がよく見えるようにジェルをつけるだけで行えるので、痛みはありません。ダーモスコープには強い光が出るライトがついており、通常の顕微鏡より詳しく皮膚の状態を調べることができるので、皮膚の「しみ」や「できもの」の正体を見分けやすくなります。例えば、皮膚が黒くなる原因の多くはほくろ(色素細胞母斑)ですが、悪性黒色腫メラノーマ)が原因になることもあります。ダーモスコピー検査ではこの2つの病気を見分けるのは難しいことではありません。

4. 病理学的検査

病理学的検査は病気が疑われる部分を切り取って顕微鏡で観察する検査です。皮膚の病理学的検査では病気の一部または全てを切り取ったものが検査の対象になります。病理検査ではがんを取り切れているかどうかが判断され、取り切れていない場合は、追加切除が行われます。

5. 画像検査

画像検査は身体の断面を画像化する検査です。その目的はがんの広がりを詳しく調べることで、主に皮膚がんと診断された人に行われます。がんの広がりからどのステージ(進行度)かがわかります。主な画像検査には「超音波検査」と「CT検査」、「MRI検査」の3つがあります。

超音波検査(エコー検査)

エコー検査は超音波の反射具合を利用して、身体の中を画像化する検査です。実際の検査は、観察をしたい場所にジェルを塗ってプローブという超音波が出る機械を当てて行います。がんの広がりを縦横の方向で捉えることができます。

CT検査

CT検査はX線を利用して身体の断面を画像する検査です。身体の中を画像化する点は超音波検査と共通していますが、より詳しくがんの広がりを調べられます。また、全身を短時間でくまなく調べられるので、転移が疑われる場合に重用されます。 より詳しく身体の中を調べるために造影剤という薬を注射で投与して、CT検査を行う場合があります。これを造影CT検査と言います。造影剤を使うと、がんの広がりや血管の形が明瞭になります。 被ばくの影響や、CT検査の原理、受ける際の注意点などについてより詳しく知りたい人は「こちらのコラム」を参考にしてください。

MRI検査

MRI検査は磁気を利用して身体の中を画像化する検査です。CT検査と同様に身体の中を詳しく調べることができますが、放射線を用いるCT検査とは違い被ばくの心配はありません。MRI検査は皮膚がんが疑われる人全員に行われるわけではなく、CT検査ではっきりとした結果が得られなかった人に行われることが多いです。

MRI検査の原理や受ける際の注意点などについてより詳しく知りたい人は「こちらのコラム」を参考にしてください。

参考文献

日本皮膚科学会ガイドライン作成委員会, 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版, 日皮会誌:125(1),5-75,2015
・「あたらしい皮膚科学 第2版」(清水 宏 / 著)、中山書店、2011年
・「がん診療レジデントマニュアル 第7版」(国立がん研究センター内科レジデント / 編)、医学書院、2016年