はなたけ、びじょう
鼻茸
鼻腔や副鼻腔(鼻腔に隣接した骨の内部にある空洞)の中にできた粘膜の隆起
6人の医師がチェック 77回の改訂 最終更新: 2021.11.30

鼻茸(はなたけ)の検査にはどんなものがあるか?

鼻茸の検査では、まず鼻茸があるかどうかの検査を行い、鼻茸の広がりや、原因を調べる検査などを行います。まれに見た目が鼻茸そっくりの腫瘍があり、腫瘍と区別するための検査を追加で行うことがあります。

1. 鼻茸をみる検査:ファイバースコープ検査や内視鏡など

鼻茸の検査では、まずは、鼻茸があるかどうかを調べる検査を行います。鼻茸がどこからできて、どこに広がっているかを詳しくみます。

前鼻鏡(ぜんびきょう)検査

鼻の穴に光をあてて、鼻鏡(びきょう)という鼻の穴を広げる道具を使って鼻の中を観察します。鼻の前から鼻鏡を使って行う検査なので、前鼻鏡検査と呼びます。大きな鼻茸であれば、前鼻鏡検査で観察することが可能ですが、小さなものは見えません。小さなものの場合には、細いファイバースコープを使って観察することができます。

ファイバースコープ検査

ファイバースコープは、胃カメラと似た構造で、先端にカメラとライトがついた細いチューブです。胃カメラより細く、太さが2.5-5mm程度です。

鼻の中から入れて、鼻の中全体を観察することができます。鼻茸がどこにできているか観察できます。鼻茸に近づいて観察できるため、腫瘍と区別するのにも役立ちます。

内視鏡検査

直径約4mmの細い硬いカメラを使って鼻の中を観察します。硬いカメラなので、通常、鼻の中の麻酔をしてから行います。鼻の中の麻酔は、鼻に歯科の麻酔と同じ種類の麻酔薬のついたガーゼやコットンを入れて行います。

ファイバースコープ検査と比べて、鼻の中の処置を行うのに優れています。内視鏡を見ながら、鼻茸を切り取ったりもできます。

2. 鼻茸の画像検査:CT検査やMRI検査など

鼻茸の原因を調べたり、鼻茸がどの部分にできているか、腫瘍の可能性はないか、などを見分けるために画像検査を行うことがあります。画像検査は必要時に行いますが、全員が行うわけではありません。

CT検査

CT検査は体の断面をうつし出せる画像検査です。放射線を使います。鼻茸のある部分を観察することと、鼻茸の原因となる副鼻腔炎がないかを調べます。

鼻茸のような見た目でも、ごくまれに腫瘍のこともあります。腫瘍かどうかを調べる時には、造影剤を使ってCTを行います。造影剤はヨード(ヨウ素)を主成分としています。ヨード造影剤のアレルギーがある場合や、糖尿病でメトホルミン製剤(メトグルコ®など)を内服している場合は、造影剤の副作用が出やすいので、医師に検査の前に伝えてください。腎臓の機能が悪い場合も造影剤を使用できないことがあります。

MRI検査

MRI検査は磁気を利用する画像検査です。放射線を使うことはありません。鼻茸のような見た目でも、ごくまれに腫瘍のこともあるので、腫瘍かどうかを調べるためにMRI検査を行うことがあります。

体内に心臓ペースメーカーや人工内耳などの金属がある場合は基本的には行うことができません。MRI対応の心臓ペースメーカーの場合は検査を受けることができますが、事前に準備が必要ですので、主治医と相談してみてください。狭い検査台に20-30分入るため、閉所恐怖症の人も行うことができません。

3. 鼻茸の原因を調べる検査:病理検査(組織検査)

鼻茸の原因を調べたり、腫瘍でないかを確認するために、鼻茸の一部を切り取って、病理検査を行うことがあります。病理検査は身体から取ってきた組織を顕微鏡で観察する検査です。

検査の方法は、鼻の中に麻酔薬と粘膜を収縮させる薬をつけて麻酔をした後、鼻鏡でみたり、鼻の中を観察する内視鏡で見ながら、鼻茸の一部を切りとります。鼻茸自体にはほとんど痛みがありません。通常の鼻茸ではほとんど出血することはありません。別の腫瘍であった場合には出血する可能性があります。検査をおこなった日には、血流がよくなることは避けてください。例えば、お酒を飲んだり、激しい運動をしたり、長く湯船につかることです。出血した場合には、検査を行った病院に連絡して対応について相談してみてください。

病理検査が必要になるのは、好酸球性副鼻腔炎が疑われた場合と、他の腫瘍が疑われた場合です。いずれも鼻茸とは治療法が違うので、病理検査で区別をより確実にします。

好酸球性副鼻腔炎の診断のための検査

鼻茸の原因になる病気の1つに好酸球性副鼻腔炎があります。好酸球性副鼻腔炎かどうか調べるためには、鼻茸の中に好酸球という細胞がどれくらいいるかを調べる必要があります。そのため、鼻茸の一部を切り取って病理検査を行います。

鼻茸と腫瘍を区別するための検査

見た目が鼻茸に似ている腫瘍が疑われた場合に病理検査を行います。見た目では腫瘍なのか鼻茸なのか判断がつきにくいこともあり、病理検査を行って診断を確定し、治療の方法を決めます。鼻茸では出血する可能性が低いのですが、腫瘍であった場合は検査後に鼻血が出ることがあります。

4. 鼻茸の原因の病気(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など)を調べる検査

鼻茸は鼻の粘膜の炎症によって起こります。鼻茸の原因によって行う治療も異なります。鼻茸の原因となる病気は大きく分けて2つあり、アレルギー性鼻炎慢性副鼻腔炎です。慢性副鼻腔炎のうち、特に好酸球性副鼻腔炎やアレルギー性真菌性副鼻腔炎では鼻茸ができやすいです。鼻茸の検査では原因となる病気があるかどうかも検査を行います。原因となるアレルギー性鼻炎と、慢性副鼻腔炎のうちで、鼻茸のできやすい好酸球性副鼻腔炎の検査を説明します。

アレルギー性鼻炎の検査

鼻茸の原因の一つにアレルギー性鼻炎があります。アレルギー性鼻炎の検査として、アレルギー性鼻炎かどうかを調べる検査や、アレルギーの原因を調べる検査があります。

  • アレルギー性鼻炎かどうかを調べる検査
    • 鼻水の検査:鼻汁好酸球数検査
    • 血液の検査:血中好酸球数、血中IgE値
  • アレルギー性鼻炎の原因を調べる検査
    • 血液の検査:血清特異的IgE抗体検査
    • 皮膚の検査:皮膚テスト(皮内テスト、スクラッチテスト
    • 鼻の検査:鼻粘膜誘発テスト

詳細はアレルギー性鼻炎のページの中の「アレルギー性鼻炎の検査」に書いてありますので、興味のある方はみてみてください。

アレルギー検査で原因となる物質がわかったら、薬などで症状を軽くする治療とともに、原因となる物質に触れないようにする治療を行います。最近では原因となる物質に触れてもアレルギー反応を起こしにくいようにする免疫治療などもあります。主に内服薬点鼻薬などの薬を使いますが、症状が抑えられない場合には手術治療を行います。

好酸球性副鼻腔炎の検査

好酸球性副鼻腔炎には診断基準があります。診断基準に当てはまるかを検査で確認します。

項目 スコア
病側:両側 3点
鼻茸あり 2点
CTにて篩骨洞優位の陰影あり 2点
血液検査で好酸球が2%より多く5%以下 4点
血液検査で好酸球が5%より多く10%以下 8点
血液検査で好酸球が10%より多い 10点

上記の合計点が11点以上で好酸球性副鼻腔炎の診断となります。鼻茸がなくてもスコアを評価できるようになっていますが、鼻茸がなければ好酸球性副鼻腔炎よりも、通常の慢性副鼻腔炎などを考えます。

診断基準のスコアを決定するために行う検査は下記になります。

  • ファイバースコープ検査、内視鏡検査
    • 鼻を観察して鼻茸があるかを確認します
  • CT検査
    • 副鼻腔炎が両側にあるかと、どこの副鼻腔に副鼻腔炎があるかを確認します
  • 血液検査
    • 好酸球数を調べるために行います
  • 病理検査
    • 確定診断をするために鼻茸の一部を切り取って、顕微鏡で鼻茸の中の好酸球を数えます

好酸球性副鼻腔炎では、アレルギーの薬や鼻噴霧用ステロイド薬で治療を行います。再発しやすく、症状が改善しないことも多いです。症状が一時的に悪化した場合には経口(飲み薬)のステロイド薬を使用すると、一時的に症状は改善します。長期間、症状が改善しない場合には、全身麻酔で手術を行います。手術は顔に傷をつけずに、鼻の中から内視鏡を使って行います。手術で鼻茸を切り取ったり、副鼻腔と鼻をつなぐ経路を大きく削って広げて鼻の中にある副鼻腔をきれいに削って、鼻の中の構造を広げます。手術後も再発が多いため、定期的な通院と、投薬による治療が必要です。

好酸球性副鼻腔炎については慢性副鼻腔炎について書いた中の「好酸球性副鼻腔炎とは?」のページに詳しく書いてありますので、参考にしてみてください。

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