きんちょうがたずつう
緊張型頭痛
頭や、後頭部、首の筋肉が緊張することによって起こる頭痛
15人の医師がチェック 106回の改訂 最終更新: 2022.02.24

緊張型頭痛を診断するための検査は何をする?

緊張型頭痛を診断するために最も重要な検査は問診です。画像検査よりも頭痛の起こり方や持続期間、痛みの場所、どのような痛みかの方が診断には重要です。頭が痛いと怖い病気でないか心配になり「CTMRIを撮ってほしい」と思うかもしれませんが、画像の検査で診断できる頭痛はごく一部です。身体診察では手足の動かしにくさや痺れがないことを確認して、頭や首の筋肉を押した時の痛みを観察します。問診や身体診察などを元に画像検査を行った方がいいと判断された場合には画像検査を行います。診断基準に基づいて分類して治療を行います。ここでは診断のための検査や、検査に基づいた頭痛の分類について説明します。

1. 問診

頭痛の診断では問診がもっとも重要な検査です。なぜなら頭痛は本人しか感じることができず、客観的に評価することが難しいからです。自覚症状をうまく伝えるのが難しいことが多いため、質問に答える方式で頭痛の様子を詳しく聞かれます。

頭痛についての問診では次のようなことをよく聞かれます。

  • 頭痛がどのように起きたか
  • 頭痛は1ヶ月に何回くらい起こるか
  • 頭痛はどのくらい続くか
  • 痛む部分はどのあたりか
  • どのような痛みか
  • 痛みの強さはどの程度か
  • 頭痛が和らぐ動作や悪化する動作があるか
  • 頭痛と一緒に起こる症状はあるか
  • どんな時に頭痛が起こるか
  • 頭痛の前触れの症状があるか
  • 今までに頭痛について医療機関を受診したことがあるか

それぞれの質問でわかることなどを以下で説明します。

頭痛がどのように起きたか

頭痛が時々起こることを繰り返しているのか、一定期間に集中して起こるのかなどを参考にします。緊張型頭痛では頭痛が長く続くことが多いです。突然の頭痛で短時間でどんどん悪化するような頭痛は危険な頭痛が考えられ、くも膜下出血などの可能性があります。今までの人生で最悪の痛み、突然の痛み、どんどん悪化するような痛みが起きた場合には、危険な頭痛を考えるためすぐに病院に受診してください。

頭痛は1ヶ月に何回くらい起こるか

頭痛が毎日のように起こるのか、時々起こる程度なのかを伝えてください。1ヶ月に何回くらい起こるのかがわかるとなお良いです。どのくらいの回数起きているのかで、治療方針が異なります。

頭痛はどのくらい続くか

1回の頭痛がどのくらい続くかについて答えてください。数秒、数分、数時間、1-3日、1週間、毎日続くなどです。持続時間によって考えられる頭痛が異なります。緊張型頭痛では30分程度から1週間まで幅があります。片頭痛では半日から3日間程度です。群発頭痛では15分から3時間の頭痛が1-2ヶ月に集中して起こります。

痛む部分はどのあたりか

頭で痛みを感じる部分について答えてください。おでこ、こめかみ、目のあたり、後頭部、頭全体などがあります。片側なのか両側なのかも、どの頭痛か区別する時に参考になります。

どのような痛みか

痛みの性状について聞かれます。例えば、締め付けられるような感じ、鈍く重い感じ、脈打つような痛み、突然で強い痛みなどがあります。突然の頭痛で短時間で悪化するような症状は危険な頭痛のサインと考えられています。くも膜下出血などの可能性がありますので、すぐに病院を受診してください。

痛みの強さはどの程度か

痛みでどのくらい生活に支障が出ているかを確認されます。生活の支障度によって、頭痛の重症度が分類されて、どのような治療にするかを検討されます。具体的な生活の支障度と、痛みの強さの関係は次の通りです。

  • 軽症=生活には特に支障がない程度
  • 中等症=痛み止めを飲めばなんとか生活できる程度
  • 重症=頭痛で生活の支障が大きく、仕事や学校を休むことがある程度

頭痛で仕事や学校を休むことがある場合は強い頭痛と考えられ、予防治療なども含めて治療が行われます。

頭痛が和らぐ動作や悪化する動作があるか

頭痛が起きた時に何をすると症状が軽くなったり、悪くなったりするかを教えてください。緊張型頭痛では少し体を動かすと痛みが和らぐことが多いです。反対に片頭痛の多くは動くと頭痛が強くなり、じっとしていると頭痛が和らぎます。一方、群発頭痛では強い痛みでじっとしていることができません。このように和らぐ動作や悪化する動作は、原因の頭痛を区別する参考になります。

頭痛と一緒に起こる症状はあるか

頭痛と一緒に起こりやすい症状があるかどうかを聞かれます。多くの場合に頭痛と合わせて起こりやすい症状はつぎの通りです。

  • 吐き気がある
  • 嘔吐する
  • 眩しさ・音・匂いなどに敏感になる
  • ふわふわするようなめまいがある
  • 肩こりがある
  • 目が疲れる
  • 目が充血する
  • 涙が出る
  • 鼻水がでる

緊張型頭痛では軽い吐き気はあるものの、嘔吐には至らないことがほとんどです。めまいや肩こりが伴うことが多いです。吐き気だけでなく実際に嘔吐する場合や、眩しさ、音、匂いに敏感になる場合には片頭痛を考えます。光、音、匂いに敏感になる症状は、片頭痛で起こりやすい症状ですが、緊張型頭痛でも光や音には敏感になることがあります。緊張性頭痛では光をいつもより眩しく感じる症状もしくは、音がいつもよりうるさく聞こえる症状のどちらか一方が起こることがあります。群発頭痛は顔から頭の片側に起こる頭痛で、痛みがある側の目の充血、涙、鼻水などの症状があります。

どんな時に頭痛が起こるか

どんな時に頭痛が起こるか、何の症状が起きた後に頭痛が起こるかについて聞かれます。どんな時に頭痛が起こるかや、頭痛の前に起きる症状は頭痛の診断の参考になります。

  • ストレスが多い時
  • ストレスがひと段落した時
  • 週末
  • 月経の前後
  • 天候の変化
  • 光が眩しい時
  • 変な匂いを感じた時
  • 音に過敏になった時

緊張型頭痛ではストレスを感じている人が多く、ストレスの有無は診断の役に立ちます。ストレスから解放された時や週末になると頭痛が起こるのは片頭痛であることが多いです。月経の前後に頭痛を感じる人がいますが、これらの頭痛の原因も緊張型頭痛ではなくほとんどが片頭痛です。片頭痛では天候の変化で頭痛を引き起こします。光が眩しく感じたり、変な匂いを感じたり、音に過敏になったりする症状は片頭痛によく起こる症状ですが、緊張型頭痛でも起こることがあります。

頭痛の前触れの症状があるか

頭痛が起こる前に症状があるかどうかも診断の参考になります。緊張型頭痛では前触れはあまりなく、前触れが起こる頭痛は片頭痛です。具体的な前触れとして起こりやすい症状は次の通りです。

  • 生あくび
  • 空腹感
  • 目の前がチカチカする

これらの症状は頭痛がはじまる24-48時間前もしくは、5-60分前に起こります。いずれも片頭痛で起こりやすい症状です。これらの症状がある場合には緊張型頭痛よりも片頭痛が考えられます。

今までに頭痛について医療機関を受診したことがあるか

今までに頭痛に関して、他の医療機関を受診したことがある場合には、いつ頃受診したか、診断名、受けた検査、受けた治療などについて伝えてください。

2. 身体診察

緊張型頭痛は頭や首、肩の筋肉がこわばることで痛みが出ている状態です。身体診察では頭や首の筋肉を押すことで痛みがあるかどうかを確認されます。その他に緊張型頭痛以外の頭痛と区別するために神経学的診察が行われる場合もあります。

神経学的診察

神経学的診察とは身体の動きや感覚が正常に働いているかどうかを観察する方法です。緊張型頭痛と頭の中の出血や腫瘍などを原因とする頭痛を区別するために行われます。頭痛を起こす病気で注意しなくてはいけないものは、くも膜下出血脳出血などの頭の中の出血や、脳腫瘍髄膜炎などです。これらの病気の場合には手足の動かしにくさ(麻痺)や痺れ(感覚障害)が起こることがあります。はじめの問診でこれらの病気も考えられる場合には神経学的診察も行われます。緊張型頭痛では手足のしびれや麻痺などが起こることはありません。

頭や首の筋肉の診察

緊張型頭痛では多くの場合には、頭や顔、首の筋肉を指で押すと痛みが起こります。身体診察ではどの部分を押すと痛いのかを観察します。痛みを確認する部位は次の通りです。

  • 額からこめかみ
    • 前頭筋(ぜんとうきん)
    • 側頭筋(そくとうきん)
  • 頰の周り
    • 咬筋(こうきん)
    • 外側翼突筋(がいそくよくとつきん)
    • 内側翼突筋(ないそくよくとつきん)
  • 首の周り
    • 胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)
    • 頭板状筋(とうばんじょうきん)
    • 僧帽筋(そうぼうきん)

緊張型頭痛はこれらの筋肉が硬くなることで痛みが起こった状態と考えられています。額にある筋肉は前頭筋と呼ばれ、こめかみにある筋肉は側頭筋と呼ばれます。こめかみから顎にかけての頰のあたりにある筋肉は、ものを噛む時に使われる筋肉で、咬筋、外側翼突筋、内側翼突筋などと呼ばれます。口周りが緊張して常に力が入っていると咀嚼筋が常に緊張していて肩こりや首のこりの原因になります。首周りには胸鎖乳突筋、頭板状筋、僧帽筋はいずれも肩こりに関係する筋肉です。これらに圧痛があるということは、筋肉がこわばっているということを表します。

3. 画像検査

頭痛で怖い病気でないか心配になると「CTやMRIを撮ってほしい」と思うかもしれません。しかし、CT検査やMRI検査で診断できる頭痛はごく一部です。緊張型頭痛や片頭痛では画像検査を行っても脳の異常は見つかりません。緊張型頭痛の検査で行う画像検査の目的は、他の頭痛を区別することです。他の頭痛が考えにくく、典型的な緊張型頭痛の場合には画像検査は行いません。緊張型頭痛が起こる回数が多く予防治療を行っても頭痛を繰り返す場合などでは画像検査が行われることもあります。

頭部CT検査

CT検査は頭痛の画像検査ではじめに行われることが多い検査です。X線を使って身体の断面を詳しく見る検査で、細長い筒の中に入って撮影が行われます。CT検査で見つけることができるのは頭の中の出血です。頭痛の原因になる病気で一番怖いのはくも膜下出血脳出血などの出血です。CT検査ではこれらの出血を見つけることができます。その他に大きな脳腫瘍や、慢性副鼻腔炎なども見つけることができます。すぐに撮影することができて短時間で行うことができるので、多くの場合にはCT検査をほかの検査よりも先に行います。X線を使う検査のため放射線被曝はしますが、発がんにはほとんど関与しない程度です。

頭部MRI検査

頭部MRI検査は磁気を利用する検査です。放射線を使うことはないため被曝はしません。MRI検査は脳の内部を観察することに優れています。持病によって検査を受けられない場合があることと、狭くて大きな音がする機械の中でじっとしていなければいけないこと、検査が10-30分程度かかること、費用が高いことなどが欠点です。しかし、脳の血管や脳腫瘍の内部を詳しく観察できることは有用です。

MRI検査は体内に金属が入っている場合と、閉所恐怖症の場合には検査を受けることができない可能性があります。心臓ペースメーカー、人工内耳、心臓や血管のステント、整形外科での固定など、体内に金属を入れたことがある場合は医師に伝えてください。心臓ペースメーカーは最近のものではMRI検査を行うことができますが、事前にペースメーカーの確認などが必要になりますので、医師に伝えてください。

4. 緊張型頭痛の診断基準はあるの?

緊張型頭痛には診断基準があります。主に問診での頭痛の様子を元に診断が行われます。診察を行って、次の基準を満たした時に緊張型頭痛と診断されます。

頭痛がある場合には下記の項目に当てはまるかチェックしてみてください。

  1. 頭痛は30分から7日間持続する
  2. 頭痛は以下の少なくとも2項目を満たす
  3. 両側性
  4. 性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
  5. 強さは軽度〜中等度
  6. 歩行や階段昇降のような日常的な動作により増悪しない
  7. 以下の両方を満たす
  8. 悪心や嘔吐はない(食欲不振を伴うことはある)
  9. 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
  10. ほかに最適な診断がない

緊張型頭痛の特徴的な点は左右両側に、圧迫感や締め付け感がある痛みであることです。痛みの強さは日常生活に支障がない軽度から、痛み止めを飲めば生活を送ることのできる中等度までの強さになります。学校や会社を休まなければならないほどの強い痛みになることは普通はありません。歩行や階段昇降などでの動作では頭痛は悪化しません。片頭痛ではこのような日常動作で悪化することが多く、群発頭痛では痛みが強くて動くことができません。

緊張型頭痛では、気持ち悪さ(悪心)や吐くこと(嘔吐)はほとんどありません。強い吐き気や嘔吐を伴う場合には緊張型頭痛以外の頭痛が考えられます。

頭痛が起きている時に光や音の刺激によって頭痛が悪化することはあっても、どちらか一方です。光過敏や音過敏は片頭痛に特徴的な症状ですが、緊張型頭痛でもどちらか一方が起こる場合はあります。

5. 検査によって緊張型頭痛はどう分類される?

頭痛の起こる回数や持続期間によって緊張型頭痛は3つの型に分類されます。分類によって薬物治療が異なります。

稀発反復性緊張型頭痛や頻発反復性緊張型頭痛は頭痛発作を繰り返すタイプで、1ヶ月の間に頭痛が起こる回数で分類されます。稀発反復性緊張型頭痛はたまにしか頭痛にならないため、頭痛時の痛み止めなどで治療が行われます。慢性緊張型頭痛では毎日のように症状が起こり、頭痛によって通常の日常生活を送ることが難しいため、予防治療などを検討されます。

いずれの型にも共通な点は次の通りです。

  • 両側に起こる痛み
  • 痛みの性状は圧迫感や締め付け感
  • 痛みの強さは軽度〜中等度
  • 日常的な動作で悪化しない
  • 光過敏や音過敏の症状はないか、あってもどちらか一方のみ
  • 気持ち悪さを感じることや嘔吐をすることはない

上記の症状がある中で、1ヶ月の頭痛の起こる回数や持続期間によって分類されます。詳しい分類は次の通りです。

稀発反復性緊張型頭痛の診断基準

  1. 平均して1ヶ月に1日未満(年間12日未満)の頻度で発現し、かつB〜Dを満たす頭痛が累計10回以上ある
  2. 30分〜7日間持続する
  3. 以下の項目を少なくとも2項目満たす
    1. 両側性
    2. 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
    3. 強さは軽度〜中等度
    4. 歩行や階段昇降のような日常的な動作により増悪しない
  4. 以下の両方を満たす
    1. 悪心や嘔吐はない(食欲不振を伴うことはある)
    2. 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
  5. 他に最適な診断がない

頻発反復性緊張型頭痛の診断基準

  1. 頭痛発作が3ヶ月を超えて繰り返し、頭痛発作の頻度は平均して1ヶ月に1-14日(1年間に12日以上180日未満)、頭痛発作の合計回数が10回以上あり、かつ1回の頭痛発作はB〜Dを満たす
  2. 30分〜7日間持続する
  3. 以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目満たす
    1. 両側性
    2. 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
    3. 強さは軽度〜中等度
    4. 歩行や階段昇降のような日常的な動作により増悪しない
  4. 以下の両方を満たす
    1. 悪心や嘔吐はない
    2. 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
  5. 他に最適な診断がない

慢性緊張型頭痛の診断基準

  1. B〜Dを満たす頭痛が、3ヶ月を超えて、平均して1ヶ月に15日以上(年間180日以上)の頻度で発現する
  2. 数時間〜数日間持続、または絶え間なく持続する
  3. 以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目満たす
    1. 両側性
    2. 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
    3. 強さは軽度〜中等度
    4. 歩行や階段昇降のような日常的な動作により増悪しない
  4. 以下の両方を満たす
    1. 光過敏、音過敏、軽度の悪心はあってもいずれか1つのみ
    2. 中等度〜重度の悪心や嘔吐はどちらもない
  5. 他に最適な診断がない