まんせいりんぱせいはっけつびょう
慢性リンパ性白血病(CLL)
骨髄で異常な血液細胞がゆっくりと増殖する病気。「血液細胞のがん」にあたる
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最終更新: 2025.01.18
慢性リンパ性白血病(CLL)の基礎知識
POINT 慢性リンパ性白血病(CLL)とは
白血病は、骨髄にある造血幹細胞から血液細胞(白血球、赤血球、血小板)へと成熟する過程にある細胞が癌化する病気です。白血病はまず、癌化した細胞がもし成熟したら何になっていたか?によって分類されます。成熟したらリンパ球(白血球の一種)になるだろう細胞が癌化したものをリンパ性白血病と呼びます。また、成熟したらリンパ球以外の白血球、赤血球、血小板になるだろう細胞が癌化した場合を骨髄性白血病と呼びます。さらに、急激に発症した白血病を急性白血病、ゆっくり進むものを慢性白血病と呼びます。これらを組み合わせて、白血病は急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分けられます。慢性リンパ性白血病は年単位で少しずつ進行してくることが多いです。症状としてはリンパ節の腫れ、微熱や倦怠感、体重減少、貧血症状、腹部の張りなどが見られることがありますが、初期には症状が軽度であるため、健康診断などの採血検査をきっかけに見つかることも多いです。確定診断は採血検査、骨髄検査、画像検査、染色体検査、遺伝子検査などを用いて行います。治療は抗がん剤が中心となりますが、初期の慢性リンパ性白血病で、進行が早くない場合には治療せずに経過観察することもあります。骨髄移植が行われる場合もあります。慢性リンパ性白血病が心配な方や治療したい方は血液内科を受診してください。
慢性リンパ性白血病(CLL)について
- 血液細胞には大きく分けて以下の3種類がある
- 白血球:主に病原体や異物と戦う役割
- リンパ球は白血球の一種であり、主にウイルスなどを攻撃する機能を持つ
- 赤血球:主に酸素を輸送する役割
- 血小板:主に出血を止める役割
- 白血球:主に病原体や異物と戦う役割
- 血液細胞は骨髄にある造血幹細胞が成長して作られる
- 白血病は大きく分けて以下の4種類に分けられる
- 慢性リンパ性白血病(CLL)は年単位でゆっくりと進むのが一般的
- 大人の白血病のうち、CLLは5%前後であり、比較的珍しい白血病である
- 日本では毎年500人ほどがCLLと新規に診断される
- 50歳以降の中高年に起こりやすい病気
- 欧米では全白血病の数割を占めているが日本人では少ない
- 白血病は遺伝子や染色体が傷つくことで発症すると考えられている
- 遺伝子や染色体の異常が原因ではあるが、ほとんど全ての白血病は子どもなどの血縁者に遺伝しない
慢性リンパ性白血病(CLL)の症状
慢性リンパ性白血病(CLL)の検査・診断
- 血液検査
- 血液細胞の数や、異常な血液細胞の有無を確認する
- 全身の臓器の機能を調べる
- 骨髄検査
- 腰骨や胸の骨から骨髄を採取する
- 骨髄を顕微鏡で確認したり、染色体検査や遺伝子検査を行う
- 画像検査
- レントゲン(X線)検査やCT検査で、合併症の有無を調べる
慢性リンパ性白血病(CLL)の治療法
- 症状や検査値の異常が目立つ場合は薬物治療を開始する
- 症状も検査値の異常も目立たない場合は、白血病細胞の活動性は低いと判断して無治療で経過観察のみを行うのが原則
- 薬物治療
- BTK阻害薬(分子標的薬):イブルチニブ、アカラブルチニブ
- 抗がん剤:フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ
- 薬物治療を受けた場合、一旦は症状が軽快、消失するが、再発することがある
- 造血幹細胞移植
- 異常な骨髄を健康な骨髄に置きかえる
- 対症療法(症状を和らげる治療法)
- 赤血球減少による貧血がある場合、輸血やエリスロポエチン(赤血球を増やす薬)で治療する
- 血小板減少による出血傾向がある場合、血小板輸血を行う
- 感染に対して抗菌薬の投与などで予防・治療する
- 放射線療法
- 腫大した脾臓や、リンパ節などが周囲を圧迫している場合、それによる症状を和らげるために行われることがある
- 無治療の場合、全体の生存率は以下のように報告されている
- 5年生存率:60-80%ほど
- 10年生存率:20-30%ほど
- 20年生存率:10%ほど
慢性リンパ性白血病(CLL)に関連する治療薬
代謝拮抗薬(プリン拮抗薬)
- DNAの構成成分に類似した化学構造をもち、細胞増殖に必要なDNA合成を阻害して抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序に増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞増殖に必要なDNAの成分にプリン塩基と呼ばれる物質がある
- 本剤はプリン塩基と同じ様な構造をもち、DNA合成の過程でプリン塩基の代わりに取り込まれることなどにより抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤は薬剤毎それぞれの作用により抗腫瘍効果をあらわす
分子標的薬(アレムツズマブ〔ヒト化抗CD52モノクローナル抗体〕)
- 白血球細胞の表面に発現しているCD52抗原というタンパク質に結合し、結合した細胞を溶解する作用をあらわす薬
- 慢性リンパ性白血病(CLL)はリンパ球B細胞が末梢血、骨髄、リンパ節、脾臓などで増殖する悪性腫瘍
- B細胞、T細胞及びCLL細胞などの表面にはCD52抗原というタンパク質が発現している
- 本剤はCLL細胞の表面のCD52抗原に結合し細胞溶解作用をあらわす
- 本剤は特定分子の情報伝達などを阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
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