きゅうせいはっけつびょう
急性白血病(総論)
骨髄で異常な血液細胞が増殖する病気。「血液細胞のがん」。急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病がある
7人の医師がチェック
60回の改訂
最終更新: 2023.02.18
急性白血病(総論)の基礎知識
POINT 急性白血病(総論)とは
白血病は、骨髄にある造血幹細胞から血液細胞(白血球、赤血球、血小板)へと成熟する過程にある細胞が癌化する病気です。白血病はまず、「癌化した細胞がもし正常に成熟したら何になっていたか?」によって分類されます。成熟したらリンパ球(白血球の一種)になるだろう細胞が癌化したものをリンパ性白血病と呼びます。また、成熟したらリンパ球以外の白血球、赤血球、血小板になるだろう細胞が癌化した場合を骨髄性白血病と呼びます。さらに、急激に発症した白血病を急性白血病、ゆっくり進むものを慢性白血病と呼びます。これらを組み合わせて、白血病は急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分けられます。詳細はそれぞれの疾患ページをご覧ください。一般的には急性白血病は数日から数週単位で症状が進行し、慢性白血病では数ヶ月から数年単位で症状が進行します。急性白血病の症状としては、正常な血液細胞が作られなくなることによる症状として、感染を起こしやすくなる、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすい、出血が止まりにくい、などがあります。発熱やだるさもしばしば起こります。急性リンパ性白血病では、脳まで白血病細胞が及ぶことも多く、頭痛や嘔吐、精神的な異常が出ることもあります。診断は採血検査、骨髄検査、画像検査、染色体検査、遺伝子検査などを用いて行われます。治療は抗がん剤が中心です。骨髄移植が行われる人もいます。急性白血病が心配な人や治療したい人は血液内科や小児科を受診してください。
急性白血病(総論)について
- 血液細胞には大きく分けて以下の3種類がある
白血球 :主に病原体や異物と戦う役割リンパ球 は白血球の一種であり、主にウイルス などを攻撃する機能を持つ
赤血球 :主に酸素を輸送する役割血小板 :主に出血を止める役割
- 血液細胞は
骨髄 にある造血幹細胞 が成長して作られる - 白血病は大きく分けて以下の4種類に分けられる
- AMLやALLなどの急性白血病と、CMLやCLLなどの慢性白血病では病気の進み方が大きく異なる
- 急性白血病は数日から数週単位で急激に進行し、治療をしない場合は数ヶ月以内に死亡する
- 大人の白血病のうち、AMLは半数程度、ALLとCMLはそれぞれ2割程度、CLLは数%程度の頻度
- 日本では毎年9,000人ほどが新規に急性白血病と診断されている
- 男女どちらにも起きる病気だが、男性の方がやや多い傾向がある
- ALLは子ども(2-5歳)にも起きることがあり、小児
悪性腫瘍 の中で最多(年間500人が発症 )である
- 白血病は遺伝子や
染色体 が傷つくことで発症すると考えられている- 遺伝子や染色体の異常が原因ではあるが、ほとんど全ての白血病は子どもなどの血縁者に遺伝しない
- 急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病では考え方や治療法が異なるため、それぞれの疾患ページを参照
急性白血病(総論)の症状
- 正常な血液細胞が減少することによる症状(
骨髄 を白血病細胞が占拠して、正常な血液細胞は減少する)白血球 の減少- 病原体への抵抗力が低くなり、感染を起こしやすくなる
赤血球 の減少- 貧血により、めまい、立ちくらみ、
動悸 、息切れ、疲れやすい、など
- 貧血により、めまい、立ちくらみ、
血小板 の減少- 血が止まりにくくなる
- 歯茎からの出血が止まらなかったり、すねなどに赤い点々(
紫斑 )が多発する
- 全身的な症状
- 食欲が出ない
- 発熱
- 肝臓や
脾臓 が腫れる - 頭痛、嘔吐、精神的な異常(急性リンパ性白血病で多く見られる)
- 最初は「かぜをひいたような症状」(だるさ、発熱、頭痛など)のこともあるが、かぜと違って数週間経っても治らず、採血すると白血病が見つかることもある
急性白血病(総論)の検査・診断
- 血液検査
- 血液細胞の数や、異常な血液細胞の有無を確認する
- 全身の臓器の機能を調べる
- 治療をしていくうえで問題になる
ウイルス 感染の有無を調べる
骨髄 検査- 腰骨や胸の骨から骨髄を採取する
- 骨髄を顕微鏡で確認したり、
染色体 検査や遺伝子検査を行う
- 画像検査
レントゲン (X線 )検査やCT 検査で、合併症 の有無を調べる
腰椎穿刺 - 白血病のタイプによっては、特に出血しやすいタイプであったり、特定の薬が効きやすいタイプであったりということがあるため、骨髄検査(遺伝子検査、染色体検査)は診断をつけて、治療法を選択するうえで非常に重要な検査
急性白血病(総論)の治療法
急性白血病(総論)に関連する治療薬
代謝拮抗薬(プリン拮抗薬)
- DNAの構成成分に類似した化学構造をもち、細胞増殖に必要なDNA合成を阻害して抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序に増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞増殖に必要なDNAの成分にプリン塩基と呼ばれる物質がある
- 本剤はプリン塩基と同じ様な構造をもち、DNA合成の過程でプリン塩基の代わりに取り込まれることなどにより抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤は薬剤毎それぞれの作用により抗腫瘍効果をあらわす
レチノイド製剤(APL治療薬)
- 前骨髄球の分化を妨げる遺伝子の抑制機構を崩すことで異常に増殖した前骨髄球を減少させる薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで正常な細胞を障害し組織を壊す
- 急性骨髄性白血病の一つである急性前骨髄球性白血病(APL)は前骨髄球のがん化でおこり染色体異常でキメラ遺伝子が生じ、これが白血球の分化・成熟を阻害し前骨髄球が異常に増加する
- 本剤はAPLにおけるキメラ遺伝子による白血球の分化抑制機構を崩す作用をあらわす
分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔Bcr-Abl〕)
- 白血病細胞の増殖に必要な異常なタンパク質による働きを選択的に阻害し抗腫瘍作用をあらわす薬
- がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 慢性骨髄性白血病では変異した染色体から異常なタンパク質が作られ無秩序な細胞増殖を引き起こす因子となるBcr-Ablチロシンキナーゼという酵素が産生される
- 本剤はBcr-Ablチロシンキナーゼに結合しその活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制作用をあらわす
- 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
- 本剤の中には消化管間質腫瘍(GIST)に対して抗腫瘍効果をあらわす薬剤もある