てあしくちびょう
手足口病
子供におこるウイルス感染症の一つ。口や手足にぶつぶつができる
17人の医師がチェック 188回の改訂 最終更新: 2023.12.04

手足口病は赤ちゃん、大人、妊婦にもうつる:免疫が弱い人は特に注意

手足口病は5歳以下の子どもに多い病気ですが、大人にもうつります。HIVがん、移植、ステロイドの長期内服などで免疫が弱っている人は特に注意が必要です。人ごとに手足口病に気を付けるべき点を説明します。

1. 赤ちゃんの手足口病で気を付けること

子どもが手足口病にかかってしまうと心配になりますが、ほとんどは自然に治ります。ただし、新生児(生まれてから28日未満の子ども)では重症化しやすいため注意が必要です。

赤ちゃんは免疫が未完成なので感染症にかかりやすい

手足口病が最も多い年齢は5歳以下です。重症になることはごくまれにあります。免疫が強くなった大人に比べると、子どものほうが重症になる割合はやや大きいですが、それでもごくまれです。

注意が必要なのは、産まれてから28日未満の赤ちゃんです。産まれてすぐは免疫のしくみがまだ発達していないので、手足口病のようなウイルスの感染には弱い状態です。大きくなった子が手足口病によって危険な状態に陥ることはごくまれですが、新生児では比較的多くなります。

赤ちゃんの様子がおかしいときは急いで病院へ

赤ちゃんの様子がいつもと違うとき、ぐったりしているときは、急いで小児科、皮膚科、内科のある病院・クリニックに相談してください。

2. 大人の手足口病で気を付けること

手足口病は子どもに多い病気ですが、大人もかかります。ただ割合で言うと子どもよりずっと少なく、感染する大人は小さな子どもと同居している人がほとんどです。

大人の手足口病は家でうつされていることが多い

手足口病の原因はウイルスの感染です。手足口病のウイルスは子どもから大人へもうつります。

同居している子どもに手足口病の症状が出てきたら、子どもも大人もマスクをして、極力直接触れないように気をつけてください。

手足や唇・口の中の水ぶくれ以外で一見症状がない場所にも、ウイルスがいる可能性はあります。直接触れるような場面では、触れた後に必ず手洗いを行ってください。

大人は熱が下がるまで安静

大人が感染して重症になることはあまりありません。安静にしていればほとんどの場合は自然に治ります。緊急の用事以外では外出しないでください。

仕事を休んだほうがいい期間については「解熱して1日以上経って、普段の食事ができる状態」という目安があります。

手足口病に抗生物質(抗菌薬)は効かない

手足口病のウイルスに効く薬はありません。ウイルスは細菌とは違うので、細菌に効く薬である抗菌薬(抗生剤、抗生物質)は手足口病には効きません。

3. 妊婦の手足口病で気を付けること

妊婦が手足口病にかかってもお腹の中の子どもに影響が及ぶことはまずありません。落ち着いて病院・クリニックで治療を受けましょう。

妊娠中は免疫が落ちていると一般に言われています。このため、ウイルスが原因である手足口病についても、妊娠していない大人に比べると、注意したほうが良いと言えます。

妊婦は上の子から感染することが多い

大人の手足口病は、同居している子どもから感染する場合が多いです。妊娠しているときに、上の子や周りの人が手足口病にかかったときは、手洗いうがいとマスク着用を心がけてください。

もし、手足口病にかかった子を看病するときは、身体に直接触ったり、周囲にある服や布団を直接触ったりすることはできるだけ避けてください。触れた場合はしっかりと手洗いをしてください。手足や口の中の水ぶくれ以外で、一見症状がない場所にもウイルスがいる可能性があります。

また、手足口病にかかった人のツバや便といった排泄物には触れないようにしてください。口から咳やくしゃみなどで飛び散るウイルスを防ぐためには、症状が出ている人も、その周りの人もマスクをつけることが望ましいです。

手足口病が流行しやすい集団生活に注意

手足口病のウイルスに触れる機会が多い環境にいると手足口病にかかりやすくなります。

保育園や幼稚園に入所している子どもは、周りにも手足口病にかかりやすい年齢の子どもが大勢いる中で生活することになるため、手足口病にかかるリスクが上がります。乳幼児が集団生活をしている施設で集団感染する例が見られています。

妊娠中にも、上の子が幼稚園や保育園からできるだけ手足口病をもらって来ないように、手洗いうがいをしっかりさせてください。

万が一手足口病にかかっても慌てなくいい

手足口病はそもそも子どもに多い病気で、うつるのも子どもが多く、大人が手足口病になる可能性は低いです。また、妊婦が手足口病にかかってもお腹の中の子どもに影響が及ぶといった報告はありません。

安静にして元気を付けて、しっかり治しましょう。

妊娠中の薬には気を付けて

解熱鎮痛薬の飲み薬や坐薬の中には妊娠中に使用してはいけないもの、注意して使用するべきものもあります。妊娠中に熱でつらくなったら、安易に市販の解熱鎮痛薬を使うのではなく、かかりつけの病院・クリニックで相談してください。

また、病院で解熱鎮痛薬が出された時は「どのくらいの発熱で使うべきか?」「どのくらいの間隔やタイミングで使えばいいか?」などを医師や薬剤師からよく聞くようにしてください。

4. 免疫の低下している人が手足口病にかかったら?

免疫の低下している人が手足口病にかかった場合、重症になるリスクが上がると考えられます。明らかにおかしい症状が出てきたときは医療機関に相談しましょう。

免疫が弱るのはどんなとき?

HIVに感染している人、がんを抱えている人、移植を行った人、ステロイドの長期内服中の人などは免疫が弱っています。手足口病にも気を付けてください。ほかにも免疫の低下する持病があると自覚している人は、手足口病で体調が悪化していかないか、特に気をつけてください。

普通の生活をする限り、食事や疲労や睡眠不足が原因で免疫が危険なレベルまで弱ることはありません。逆に生活習慣をよくしても免疫が特に強くなることはありません。

手足口病による重症合併症とは

元気な人では免疫が働いているため、手足口病の原因であるウイルスが感染しても退治することができます。免疫の働きにより手足口病はほとんどの場合で自然に治ります。

ところが、ごくまれに手足口病が悪化して、髄膜炎(ずいまくえん)、小脳失調症(しょうのうしっちょうしょう)、脳炎、心筋炎、神経原性肺水腫(しんけいげんせいはいすいしゅ)、急性弛緩性麻痺(きゅうせいしかんせいまひ)といった合併症にかかる可能性があります。

悪化する原因は不明のことが多いですが、免疫が低下していることはリスクを増やすと考えられます。

様子がおかしいと思ったら病院へ

免疫が弱まる病気がある人が手足口病にかかり、明らかに疲弊している時は小児科、皮膚科、内科のある病院・クリニックで相談してください。