じりつしんけいしっちょうしょう
自律神経失調症
自律神経のバランスが崩れた際に起こる症状の総称。めまいや耳鳴り、頭痛など様々な症状が出現する
18人の医師がチェック 245回の改訂 最終更新: 2022.12.26

自律神経失調症に対し自分で取り組めること:ストレス対処法、マッサージ、整体、鍼、食事の改善など

自律神経失調症を治すためには医療機関での治療とともにセルフケアも重要になります。自律神経失調症の主な原因となるストレスの対処法や食事、睡眠といった身近なことについてこのページでは紹介していきます。

1. 自分で取り組めるストレスの対処法

自律神経失調症では、その症状によってストレスを受け、さらに自律神経失調症が悪化するという悪循環が生じがちです。この悪循環を断ち切るためには、症状を楽にすることと、原因となるストレスに対処することの両方を行わなければなりません。医療機関で受けられる治療は別のページで説明しているので、このページではストレスに上手に対処するためのヒントを説明していきます。

自分でできるストレスへの対処法は大きく3つに分けられます。

  • ストレスの原因そのものを取り除く
  • ストレスに対して強くなる
  • 気分転換をしてストレスを発散する

それぞれについて詳しく説明していきます。

ストレス対処法①:ストレスの原因そのものを取り除く

全てのストレスをなくすことは困難です。ですが、どのようなストレスが自律神経失調症に影響しているかを把握し、取り除けるものはなるべく取り除くことが解決につながります。

中には自分で気づいていないストレスの原因もあります。自分の生活を振り返ってみて、どこでストレスが生まれていているのかぜひ考えてみてください。一人では気づきにくいこともあるかと思いますので、誰かに話を聞いてもらうのもよい試みです。

ストレスの原因には、ケガや病気、天候や災害など自分ではコントロールが難しいことも含まれます。また、仕事や学校に関わることもすぐには変えられないかもしれません。一方で、次のような生活習慣が原因であれば、今日から自分で改善に取り組むことができます。

  • 食習慣
    • 不規則な食事(食事を抜く、食べる時間が不規則)
    • 食べ過ぎ
    • 偏食
    • お酒の飲み過ぎ など
  • 睡眠習慣
    • 夜更かし
    • 昼夜逆転
    • 睡眠不足

これらの習慣に思い当たる節があれば、なるべく減らしてみてください。規則的な生活を意識することが症状を良くするために大切です。

ストレス対処法②:ストレスに対して強くなる

まったく同じ環境に置かれても、人によって感じるストレスの度合いは異なります。

例えば上司に怒られたときに、何日も引きずって落ち込んでしまう人もいれば、すぐに気持ちを入れ替えて前向きになれる人もいます。同じく、人前で発表する機会を得た時に、それが嫌で強いストレスを感じてしまう人もいれば、自分が成長するチャンスだと捉える人もいます。このように、物事への心身の反応は一人ひとりで違います。言ってみればストレスに強い人と弱い人がいるということでもあります。

身体的ストレスに対しては、運動をして体力をつけることで強くなれます。同様に、例に挙げたような精神的ストレスに対しては、ものごとの捉え方や考え方を変えることによって耐性をつけることができます。これを心理療法といいます。

さまざまな方法が心理療法にはありますが、ストレスを受けやすい考え方(認知のゆがみ)を知るのもその方法の一つです。

【ストレスを受けやすい考え方の例】

  • 〜すべきと考える
    • 「テストでは満点をとるべきだ」、「仕事のミスは許されるべきではない」のように、すべき、すべきでないという理想やこだわりが強い
  • 自分せいだと思う
    • 「この事業が失敗したのは自分の責任だ」、「自分のせいで子どもが病気になった」などと必要以上に自分に責任を感じる
  • 白か黒かの2つに分ける
    • 「完璧でないなら0点だ」、「途中で雨に降られたから今回の旅行は最悪だ」のように、良いか悪いか、0点か満点かのどちらかに極端に解釈する
  • 一般化しすぎる
    • 「この前失敗したから、次も絶対失敗するに違いない」、「あの人はいつも悪口を言っている」のように、起きた出来事の一部を極端に一般化して全てに当てはまるかのように捉える

このような考えに当てはまるかどうか振り返り、自分のものごとの受け止め方、考え方の特徴を自ら知り、もっと楽に生きることができるような考え方を探す、という心理的なアプローチによりストレスへの耐性が高まります。

これは心理療法の中でも認知行動療法と呼ばれるもので、最近は書籍も多く出回っています。自分で学びながら認知行動療法を行えるようなものもありますので、試してみても良いでしょう。

なお、心理療法は臨床心理士が得意としていて、病院やクリニック、その他の施設でカウセリングなどで受けることができます。

ストレス対処法③:気分転換をしてストレスを発散する

ストレスの元を全て断つことは困難です。ストレスがたまってつらい時には、気分転換をすると楽になることがあります。方法はさまざまで、ある人に効果がなかった方法でも別の人では症状が劇的に改善することがあります。例を挙げてみましょう。

【気分転換の例】

  • お風呂に入る
  • アロマを炊く
  • 音楽を聞く
  • おいしいものを食べる
  • 散歩をする
  • スポーツをする
  • 部屋を片付ける
  • マッサージ/整体/鍼を受ける
  • ヨガを行う
  • 瞑想する など

ここで紹介した以外にも自分にあったいい方法があると思います。いろいろと試してみてください。

2. 自律神経失調症にマッサージ、整体、鍼(はり)は効くのか

精神的なストレスにさらされると、心身を守るために交感神経が活発になります。交感神経の活動は必要なものなのですが、活動しすぎると全身の筋肉がこわばり、首や肩のこりや痛み、背中や腰の痛みがあらわれます。

筋肉の緊張を和らげるにはマッサージや整体、鍼も有効だと考えられます。また、施術にはリラックス効果も期待できます。心身のリラックスは副交感神経の働きを刺激し、自律神経のバランスを整えることにもつながります。

ただし、整体や鍼の効果は一時的なものでもありますし、人によって効果の現れ方はさまざまです。治療に薬が必要な人もいれば、精神的なサポートが必要な人もいますので、マッサージや整体にのみ頼るというよりは、自分に合った方法を試してみて、それでも解決しない場合は、専門的な知識を持つお医者さんに相談することをお勧めします。

3. 自律神経失調症の症状は食事で改善できるのか

自律神経は一日の中でリズムをもって働いています。自律神経のリズムを乱さないためには規則正しい生活習慣が助けになります。食事は睡眠や運動と並んで重要な生活習慣です。一日三食を決まった時間に食べることが、自律神経の安定に役立つかもしれません。

また、ストレスが多いときはビタミンB1とビタミンCが消費されやすくなるという意見があります。これらの不足は自律神経失調症の症状にも繋がりますので、食事で十分摂取することが大切です。

■ビタミンB1

ビタミンB1が不足するとブドウ糖が足りなくなり、イライラしたり、集中力が低下したりします。ビタミンB1は豚肉や玄米、納豆などに含まれています。

■ビタミンC

ビタミンCは副腎皮質ホルモンを体内で作るために必要です。副腎皮質ホルモンはストレスに対抗する働きをもち、ストレスが強いときに多く放出されます。ビタミンCが不足すると、副腎皮質ホルモンの合成量が減少し、ストレスに対して弱くなってしまうかもしれません。ビタミンCはブロッコリー、ピーマン、オレンジなどに多く含まれています。

4. 自律神経失調症の人はお酒を飲んでも大丈夫なのか

自律神経失調症の治療中であっても、適量であればお酒を飲んでも大丈夫だと考えられます(避けたほうがよい場合もあるので、後述します)。

自律神経失調症の発症にはストレスが大きく関係しています。適度な飲酒はストレスの発散に役立ち、リラックスにつながります。ただし、この効果はあくまでも一時的ですし、飲酒の効果に期待しすぎるのはお勧めしません。また、深酒になってしまってはむしろ逆効果ともいえます。「飲んで大丈夫なのか」という観点から答えるならば、「自分が飲める量より少なめで楽しむこと」をお勧めします。

また、治療薬の中には飲酒が悪影響を与えるものがあります。あらかじめ、医療機関で飲酒についてお医者さんとよく相談するようにしてください。

自律神経失調症で飲酒NGの場合がある

不眠で悩んでいるときには、寝付きを良くするための飲酒はお勧めできません。睡眠が浅くなって、眠ることはできても疲れが取れないというような、質の低い睡眠につながりやすいためです。

また、アルコールに関して特に注意が必要なのは、抗不安薬や睡眠薬との飲み合わせです。抗不安薬や睡眠薬を飲んでいる時期は、お酒を飲むと薬の作用が強まってしまうため、飲酒は控えてください。

5. 自律神経失調症で寝る前に避けた方がいいことと睡眠に対する考え方

不眠の症状があるときは特に、寝る前にスマートフォンやパソコンをなるべく使用しないようにしてください。寝る前にディスプレイの明かりを浴び続けると寝付きが悪くなることが懸念されます。カフェインの摂取も控えてください。

また、できるだけ就寝と起床の時間を規則正しくすることも大切です。不規則な睡眠リズムは身体にも精神にもストレスになります。

これらの工夫をしたうえでも不眠が治らない場合には、 内科・精神科・心療内科などに相談し睡眠薬を処方してもらうのも効果的です。

参考文献

e-ヘルスネット自律神経失調症