◆年齢別で自律神経の機能はどう違う?
ここで紹介する研究は、違う年代の健康な人を対象に、自律神経の機能を調べています。62人のボランティアが参加しました。参加者は年齢によって、15歳から45歳、45歳から60歳、60歳より上の3グループに分けられました。
心臓の機能や発汗機能によって自律神経の機能を調べるテストが行われました。
◆変化に対する反応が鈍い
テストは次のような結果でした。
起立性低血圧試験の平均値±標準偏差は、年齢に伴う交感神経機能の低下を反映して、15歳から45歳の群で8.80±2.28、45歳から60歳の群で13.40±4.64、60歳より高い群で21.82±6.04だった。深呼吸試験、バルサルバ試験、起立試験に対する心拍数応答の30:15比によって示される心臓-迷走神経反応、すなわち副交感神経の反応は、年齢が高くなるとともに平均反応量が統計的に有意に減少を示した(P<0.001)。発汗反応は15歳から45歳、45歳から60歳の群では正常だったか、60歳より高い群では過半数で鈍くなっていた(P<0.001)。
歳が上のグループほど、以下のような特徴がありました。
- 急に立ち上がると血圧が急に下がり、心拍数が増えたあとなかなか戻らない
- 深呼吸で息を吸うときに心拍数が増え、吐くときに減る正常反応が鈍くなる
- 息をこらえてお腹に力を入れると心拍数が増える正常反応が鈍くなる
- スプーンの丸い面で皮膚の上を撫でると、発汗が少ないためなめらかに動かない
これは姿勢が変わったり体に刺激が加わったことに対して、自律神経が正常に反応して血圧などを維持する働きが鈍い、つまり体の変化に対する自律神経の反応が鈍いことを意味します。
ここで見られた血圧や心拍数の変化は、自律神経失調症の症状にあるふらつきや動悸などとも対応します。加齢はもちろん、環境の変化が自律神経に及ぼす影響を知っておくことで、自分の自律神経の状態を把握し、適切に対処することに役立ちます。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。