熱傷(やけど)に関して知っておくと良いこと:予防、受診の目安など
程度の差こそあれ、やけどは誰しも一度は体験したことがあるのではないでしょうか。家庭内で起こりやすいやけどとその対策、受診の目安など、知っておきたいやけどの知識をまとめました。
1. 家庭でのやけど事故を防ぐために
やけどは日常生活の中で起きやすい事故です。特に小さな子どもは成長するに従い行動範囲が広がり、思わぬケガをしやすくなります。
子どもから一瞬たりとも目を離さない、ということはできませんし、見ていても防げない事故はあります。そこで、子どもに多いやけどを知り、家庭内で対策をしたり、注意すべきポイントを保護者間で共有することが重要になってきます。
【よくある家庭内での子どものやけど(例)】
- 電気ケトルのコードにつまづいたり、倒したりして熱湯でやけど
- 子どもの手の届かないところへ設置する
- コードは本体と着脱式のものにするか、コードに触れられないように設置する
- 転倒時の湯もれ防止機能があるもの、チャイルドロックのあるものを使う
- 炊飯器や加湿器の蒸気に手をかざすなどしてやけど
- 子どもの手の届かないところに設置する
- 蒸気の出ない製品にする
- グリル付こんろの窓に触ってやけど
- 窓の外側に熱が伝わりづらい製品にする
- ベビーゲートを設置して、子どもがキッチンに入れないようにする
- お茶、カップ麺、味噌汁などの熱い液体をこぼしてやけど
- 子どもの手の届かないところへ置く
- テーブルクロスは使用しない
また、子どもに限らず、大人、特に高齢者に気をつけて欲しいやけどもあります。「着衣着火」といって、衣服に火がうつる事故です。ガスコンロの火や仏壇のろうそくの火が袖口に触れるなどして燃えてしまう事故は高齢者に少なくありません。火を扱う際には衣服にも注意をしてください。
低温やけどにも注意
熱傷の原因は高温のものに限りません。40度から55度位の温度のものでも長く触れると熱傷が起こります。使い捨てカイロ、電気毛布、湯たんぽなどを使う時には、身体の同じ場所に長く触れないようにしてください。また、子どもや高齢者など自分で接触位置を変えられない人や、熱い痛いなどの訴えが難しい人への使用には注意が必要です。製品の説明書を確認するようにしてください。
2. やけどしたら、まずすべきこととは
やけどしてしまったら、すぐに流水で冷やしてください。熱傷の深さや広さにもよりますが、20分以上冷やすと重症化を防ぐ効果が期待できます。もし、服を着ている状態でやけどしたら、脱がずに服の上から水をかけてください。 服を脱ぐ時に熱傷した皮膚が一緒に剥がれて落ちてしまうことがあるからです。また、よく冷やしたいからといって氷や保冷剤は使わないようにしてください。冷えすぎると皮膚が凍傷になることがあるためです。
3. 自宅で様子見できるやけどとは
皮膚の最も外側にある表皮のみのやけど(I度熱傷)であれば、自宅で様子見が可能です。受傷直後に流水で冷やす応急処置はしたほうがいいですが、そのあとは特段治療せずとも後遺症なく治るからです。下記の全てにあてはまるときには、I度熱傷と考えられます。
【浅い熱傷(I度熱傷)の症状】
・赤い
・みずぶくれやただれがない
・ヒリヒリ痛む
「水ぶくれはないけれども痛くて色は白っぽい」など、一部分だけでも上記に当てはまらなければ、その部位の熱傷が深い可能性がありますので受診を考慮してください。
また、見た目や症状から深さを自己判断するのは難しいことがありますので、迷う時にも受診してください。なお、浅くても受診を考慮すべき熱傷もなかにはあるので、次に説明します。
4. 熱傷の深さによらず受診すべき熱傷とは
熱傷の原因や部位によっては、たとえ浅いと思われても重症化することがあります。下記に当てはまることがあれば、受診してください。
- 強酸や強アルカリによるやけど
- 感電や落雷によるやけど
- 気道・顔・手足・会陰部・肛門をやけどした
- 近くに軟部組織損傷や骨折がある
強酸・強アルカリなどの薬剤による熱傷は、受傷直後は浅く見えても、時間が経つとともに徐々に深くまでダメージが広がります。
感電や落雷では、心臓などにも影響が及んで、命に関わることがあります。
気道熱傷では受傷直後にあまり症状がなくても、遅れて呼吸困難になることがあります。顔に熱傷があれば、気道もやけどしていることが考えられるため、受診してください。
会陰部や肛門のやけどでは、尿や便などが付着することで感染が起きやすいため、重症になりがちです。
手足の関節周囲の熱傷は
皮膚の下にある軟部組織や骨が損傷している場合は、熱傷部位への血流が悪くなることなどから、治るまでに時間がかかりがちです。
5. どこに相談をしたら良いのか
熱傷は皮膚科や形成外科に相談をしてください。ただし、重症熱傷では対応ができる医療機関が限られています。急いで受診をする必要もあるため、救急車を呼ぶなどして指示を仰いでください。
とはいえ、重症かどうかの判断は難しいことが少なくありません。 救急車を呼んでも良いのか判断に迷うときがあると思います。そのような時には消防庁が提供している全国版救急受診アプリ「Q助」や、電話サービスの「救急安心センター(#7119)」が便利です。
【救急車を読んでいいか迷った時に】
また、自治体でも電話で緊急性かどうか相談ができるところがありますので、活用してください。
参考文献
・Griffin BR, et al. Ann Emerg Med. 2020 Jan;75(1):75-85.
・消費者庁:子どもを事故から守る!!事故防止ハンドブック
・消費者庁:News Release令和3年 11 月 17 日
・東京消防庁:STOP!着衣着火
(2021.12.10閲覧)