熱傷(やけど)の検査について:ピンプリックテスト、手掌法、9の法則、5の法則
熱傷の検査では主に深さと広がりを調べます。深さと広さがわかれば、重症度を判定できます。熱傷の深さを調べるのに「視診」や「ピン
1. 問診
- どのような状況でやけどをしたのか
- いつやけどをしたか
- どのような症状か
- 応急処置として何かしたか など
状況によっては広い範囲にやけどを負っている可能性があります。特に小さな子どもではどこが痛いか等うまく伝えられないため重要な情報です。また、一見浅いやけどのようでも、その原因が化学物質であれば時間とともにダメージが深くなることがあるので注意が必要です。落ち着いて、お医者さんに情報を伝えるようにしてください。
2. 熱傷の深さを調べる検査
熱傷の深さを調べるのに「視診」や「ピンプリックテスト」が行われます。これらの検査によって、皮膚の3層のうちどこまでやけどしているかがわかります。なお、皮膚の3層とは、外側から、表皮、真皮、皮下組織のことです。
視診
お医者さんが見て診察することです。赤色であれば皮膚の表面(表皮と真皮の浅い部位)のみの熱傷であると考えられます。一方で、水ぶくれやただれがある時には、深い熱傷の可能性があります。表皮だけでなく真皮や皮下組織まで熱傷が及んでいるサインです。皮膚の深い部位(真皮深層と皮下組織)にまで及んだ熱傷では、血流が悪くなるため赤みがなくなり、白っぽくなったり黒っぽくなったりします。
とはいえ、見た目だけでは深いか判断が難しいこともあり、次のピンプリックテストを合わせて行うことがあります。
ピンプリックテスト
清潔な細い針で熱傷部分をつついて痛みを感じるかどうかを確認する検査です。真皮の深い部分まで熱傷が及んでいると、痛覚に関わる神経が損傷してしまうことから、針で刺しても痛みを感じづらくなります。
3. 熱傷の広さを測る検査
熱傷の広がり具合を示す指標として、やけどを負った皮膚面積が全身の皮膚面積の何%に当たるかを示す値(熱傷面積)がよく使われます。この割合を調べる方法を3つ紹介します。
手掌法
熱傷部分が手のひらいくつ分にあたるのか調べることで、熱傷面積を算出する方法です。手のひら一つ分は体表面積の 1%くらいになることから、全身の皮膚の何%にあたるのかを概算できます。とはいえ、広範囲の熱傷において手のひら何枚分なのかを調べるのは、骨が折れる作業でしょう。そのような際には、成人では9の法則、小児では5の法則のほうが実用的ですので、次に説明します。
9の法則
成人の熱傷の面積を算出する方法です。頭と首を9%、片腕を9%、体幹を36%、片脚を18%、陰部を1%として数えることで熱傷面積を算出します。主に9の倍数の数字を足すことで熱傷面積を概算ができることから、9の法則と言われています。
5の法則
子どもの熱傷面積を概算する方法です。全身の皮膚のうち、頭頚部を15%、片腕を10%、体幹前面を20%、体幹背面を15%、片脚を10%として数えることで熱傷面積を算出します。5の倍数を足すことで概算できることから、5の法則と言われています。
4. 重症化の判定について:熱傷予後指数とは
熱傷面積に加えて年齢を加味して重症度判定する指標を紹介します。
【熱傷
皮下組織に至らない熱傷(Ⅱ度)の面積%÷2 + 皮下組織にまでおよぶ熱傷(Ⅲ度)の面積% + 年齢
この指数が80を超えると重症とされます。 80を超えるか超えないかで、死亡率が大幅に違うためです。 熱傷予後指数と生存確率の関係は以下の通りです。
熱傷予後指数 | 生存確率 |
80未満 | |
80以上100未満 | 50% |
100以上120未満 | 20% |
120以上 | きわめて少ない |
合併症や基礎疾患がない限り、熱傷予後指数80未満では救命可能なことがほとんどです。一方で80を超えると生存確率が急激に下がります。このため、80という値が重症かどうかの境界にされています。
ここで、具体例を示して、熱傷予後指数を算出してみます。
65歳の人で、II度熱傷が全身皮膚の50%を占め、皮下組織までおよぶⅢ度熱傷が20%あったとします。すると、熱傷予後指数は50 ÷ 2 + 20 + 65= 110となります。80を超えますので、重症と判断されます。
参考文献
・田中裕/編著, 熱傷治療マニュアル改訂第2版, 中外医学社, 2013
・日本救急医学/監修, 救急診療指針改訂第3版, へるす出版, 2008