2015.07.15 | ニュース

美容皮膚科手技でレーザー、ボトックス、ヒアルロン酸のリスクは?

20,399手技の有害事象を前向き研究

from JAMA dermatology

美容皮膚科手技でレーザー、ボトックス、ヒアルロン酸のリスクは?の写真

美容皮膚科では手術など皮膚へのダメージが大きいものからレーザー、光治療(IPL)、ボトックスでのシワ治療などダメージが小さいものまで様々な手技を扱っています。レーザー 、ボトックスやヒアルロン酸による治療は比較的安全とされていますが、有害事象がどの程度の確率で起こるのかについては正確に報告されていませんでした。アメリカの施設で集計した結果、有害事象は約2万回の治療のうち36回で起こっていました。

◆有害事象の起こる確率

9ヶ月に渡り、8つの美容皮膚科クリニック、23人の皮膚科専門医がアメリカで新しく行った美容手技のデータを記録して集めました。計20,399の手技が行われ、36手技で1つ以上の有害事象が発生したので、0.18%の確率で少なくとも1つの有害事象が発生したことになります。有害事象は頬の手技で一番多く(9例)、次に法令線(8例)、まぶた(6例)の順番でした。また、失明や皮膚の壊死といった深刻な有害事象はありませんでした。

 

◆手技ごとの有害事象

ヒアルロン酸をはじめとしたフィラー(皮膚に注射してボリュームを出し、加齢による影響をやわらげるためのもので、ヒアルロン酸、カルシウムハイドロキシアパタイト、ポリ乳酸の3つが使われています)注入による有害事象は0.52%と、レーザーやボトックスに比べると高かかったのですが依然低率で、不自然な皮膚の隆起や内出血が主なものでした。

レーザー、光療法(IPL)、ラジオ波(RF)による有害事象は0.11%と非常に低く、色素沈着や熱傷が主なものでした。

 

◆結論

適切なトレーニングを受けた皮膚科専門医の行うレーザーや注射の手技によるリスクは1%以下であり、美容手術に比べると安全に受けられると言えます。ただし、この研究はアメリカで行われた研究ですので、アジア人ではレーザーや光治療(IPL)による色素沈着や熱傷のリスクはこれよりも高くなることが予想されます。また、本研究では見られなかったものの、別の研究ではまれながらフィラー注入により血管が詰まり失明、皮膚の壊死が起こったという報告がありますので、注意は必要です。

執筆者

野田 真史

参考文献

Multicenter prospective cohort study of the incidence of adverse events associated with cosmetic dermatologic procedures: lasers, energy devices, and injectable neurotoxins and fillers.

JAMA Dermatol. 2015 Mar

[PMID: 25372511]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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