起立性低血圧症の基礎知識
POINT 起立性低血圧症とは
起立性低血圧症は立ち上がった際にめまいや失神の起こる病気です。脳への血流を調節する機能が落ちることが原因になります。高齢者や子どもに起こることが多く、主な症状は立ち上がった際に起こるめまい・ふらつき・失神などです。脱水、糖尿病、パーキンソン病などが原因となることもあります。症状から起立性低血圧症が疑われ、起立検査を用いて確定診断されます。薬物療法やリハビリテーションを用いて治療します。起立性低血圧症が心配な人や治療したい人は、循環器内科を受診してください。糖尿病やパーキンソン病に伴うものであれば、それぞれ糖尿病代謝内科や脳神経内科の受診をお勧めします。
起立性低血圧症について
- 座っていたり寝ている状態から立ち上がった時に、血圧が急に下がりめまいや失神を起こす状態
- 病気のメカニズム
- 血圧を調節する働きが弱くなることで、血圧が下がり、脳へ酸素が届かずに症状を引き起こす
- 罹患率は、年間1,000人のうち6.2人
- 高齢者では約60%の人が似たような症状を経験すると言われている
- 小児においても発育、成長が旺盛な年長児では体の発育に対して、心臓・血管の成長が不十分であり自律神経失調症状を起こす
- 小学校高学年ごろより出現し、思春期に多く、頻度は同世代の5-10%と多くみられる。
- 分類
- 起立性低血圧症にならないように予防することが大切
- 起立性低血圧症の予防方法
- 急な体位変換を避ける(寝ている状態から急に起き上がり座る、または立つ)
- ゆっくりと起き上がるようにする
- 長時間同じ姿勢をとることは避ける
- 生活リズムを正しくする
- 過度のアルコールは控える
- 適度な運動をする
- 水泳やウォーキングなど全身運動、マッサージによる血液循環の改善を行う
- 激しい運動は身体に負担がかかるので急に行わず、運動前には必ずウォーミングアップを行う
- 弾性ストッキングを着用する
- 長時間入浴は避け、ぬるめのお風呂に入る
- 起きた直後や食後、お風呂上がり、排便時、飲酒時、運動後など、いつ症状が現れやすいのかを把握することが大切である
- 起立性低血圧症の予防方法
起立性低血圧症の症状
- 立ち上がった際に以下のような症状があらわれる
- めまい
- ふらつき
- 動悸
- 冷や汗
起立性低血圧症の検査・診断
- 起立検査:シェロング試験やヘッドアップチルト試験など
- 立ち上がった際に血圧が下がらないか調べる
- 失神して倒れると怪我するので、万全のサポートの下で行う必要がある
- 立ち上がり後3分以内に血圧を測る
- 収縮期血圧が20mmHg以上低下
- 収縮期血圧の絶対値が90mmHg以下
- 拡張期血圧が10mmHg以上低下
- 貧血があるかを調べるため血液検査を行うことが多い
起立性低血圧症の治療法
- 主な治療
- 薬物療法:血圧を上げる薬を服用
- 交感神経作動薬(アメジニウムメチル硫酸塩、エチレフリン塩酸塩など)
- 血管収縮薬
- 鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン)
- リハビリテーション:運動や筋力強化により、血圧が下がりにくくする
- 薬物療法:血圧を上げる薬を服用
- 予防、再発予防方法
- 生活指導
- 急に立ち上がらないようにするなど日常生活での動作をゆっくり行うことで予防できる
- 水分や塩分を多めに摂る
- 早寝早起きなどの規則正しい生活リズムを心掛ける
- 対症療法
- 弾性ストッキングを履くことで症状を予防できる
- 生活指導
起立性低血圧症に関連する治療薬
ノルアドレナリン系作用薬
- 脳内の神経機能などを改善しパーキンソン病などにおける、すくみ足や立ちくらみ、ふらつきなどの症状を改善する薬
- パーキンソン病では脳内のドパミンが不足するが、ドパミンから変換されるノルアドレナリンも不足する傾向になる
- 本剤は脳内で不足しているノルアドレナリンを補うことで、すくみ足や立ちくらみなどの症状を改善する作用をあらわす
- パーキンソン病以外への使用
- 起立性低血圧などへ使用する場合もある
- 血液透析患者におけるめまいやふらつきなどの症状へ使用する場合もある
昇圧薬
- 交感神経の活動を活発にし血圧を上げることで低血圧症によるふらつき、めまいなどの症状を改善する薬
- 低血圧症では血圧が低くなっていることで、ふらつき、めまい、意識障害などがあらわれる
- 交感神経の働きが活発になると、心臓の働きが活発になったり、血管が収縮することで血圧が上がる
- 本剤は交感神経の働きを促進し、血圧を上げる作用をあらわす
起立性低血圧症の経過と病院探しのポイント
起立性低血圧症が心配な方
起立性低血圧とは、座っていたり寝ている状態から急に立ち上がった時に、血圧が急に下がってめまいや失神を起こす状態のことです。一般にめまい、立ちくらみ、貧血という言葉で表現されるものの多くが医学的には起立性低血圧に含まれます。血圧を調節する働きが弱くなることで、血圧が下がり、脳へ酸素が届かずに症状が生じます。
この疾患を見ることが多い科は、内科、循環器内科、救急科などです。診断のための検査を受けるためには、まずは内科を受診すると良いでしょう。起立性低血圧症の結果、転倒して怪我をしたり、気分が悪くて歩けなくなるなどで、救急車を利用する場合でしたら、まず救急科の医師が診察することになります。また、起立性低血圧症は一刻を争う疾患ではないため、初診の際は総合病院、クリニックどちらの受診でも構いません。総合病院でのみ実施できる検査の場合にはクリニックからも紹介してもらえます。
起立性低血圧症の診断は、同じような症状を起こす他の疾患でないことを検査で確認することで行います。具体的には、栄養不足や消化管からの出血などに伴う貧血、不整脈による失神でないことを確認することが重要ですので、血液検査や心電図、心エコーを行うこともあります。これらの検査に異常がなく、立ち上がる前と後での血圧に変動がないかを確認する起立検査を行い、血圧に変動があった場合に起立性低血圧症と診断します。
起立性低血圧症でお困りの方
起立性低血圧症の治療は、原因により異なります。前述したように、起立性低血圧症と同じような症状が貧血や不整脈が原因で起こっている場合は、それらに対して治療を行います(詳細はそれぞれの疾患ページもご参考になさって下さい)。また、精神的な問題で起立性低血圧症の症状を起こすこともあり、その場合は精神科や心療内科での治療になり、糖尿病が原因と考えられる場合は内分泌代謝科や糖尿病内科での治療になります。
上記のような原因がなく、起立検査でも血圧の変動が見られている場合は、血圧を上げる薬による治療を行うこともあります。また、弾性ストッキング(きつめのストッキング)を履くことで、下肢への血流貯留を予防し、頭への血流が少なくなることを予防する方法もあります。
起立性低血圧症自体は命に直結するような病気ではありませんが、電車のホームなどで症状が出てしまうと危険ですので、早めに医師に相談し、対応することが重要です。
この記事は役に立ちましたか?
MEDLEY運営チームに、記事に対しての
感想コメントを送ることができます