肩関節周囲炎(五十肩)の基礎知識
POINT 肩関節周囲炎(五十肩)とは
肩関節周囲の組織の老化に伴い痛みや運動制限が生じた状態です。40-60歳代で発症しやすいので五十肩あるいは四十肩などと呼ばれることもあります。症状は通常は片側だけに発生します。最初は明らかなきっかけもなく、ある日突然痛みが出現し、数日から数週間にわたって強い痛みが続くことが多いです。痛みは次第に引いていきますが、数カ月から1年ほどにわたって痛みが残り、その間は肩の回る範囲が制限されます。痛みの強い時期には無理に肩を動かさず、飲み薬や貼り薬の痛み止めで対応することが一般的です。特に痛みが強い場合には肩関節に注射を行うこともあります。痛みが次第に引いてくる時期には、安静にしすぎると肩関節が固まってきて長期的に動かしにくくなってしまうので、肩を少しずつ動かすリハビリテーションが重要になります。長期的に改善が乏しい人では、珍しいですが関節鏡(内視鏡)で手術をすることもあります。肩関節周囲炎が心配な人や治療したい人は整形外科を受診してください。
肩関節周囲炎(五十肩)について
- 痛みにより、肩を動かすことができなくなる病気
- 人口の約2%に生じると言われている
- 40-60歳代に比較的多くみられる
- 肩関節周囲炎は時期によって
症状 が異なる- 炎症期:徐々に痛みが強くなる(最初の数日から2週間ほど)
拘縮 期:発症 からしばらくたち、痛みはなくなってくるが、肩が硬くなり動かすことができなくなる(数ヶ月から半年ほど)- 回復期:徐々に肩が動くようになってくる(半年後以降)
- 回復後に同じ側の肩に再発することは基本的にない
肩関節周囲炎(五十肩)の症状
- 肩の痛み、動かしにくさ
- 通常は片側だけに痛みを生じる
- 痛みはある日突然、明らかなきっかけもなく生じることが多い
- 最初の数日から数週間は動かさなくても痛い場合もある
- 典型的には腕を挙げる途中には痛みがなく、「これ以上は挙がらない」という動きの最後で痛みが起こる
- 二の腕や手先の痛みや痺れ
- 肩の痛みが伝わることがある
肩関節周囲炎(五十肩)の検査・診断
- 身体診察
- 特徴的な
症状 から疑う - 関節可動域検査:肩の動く範囲を調べる
- 特徴的な
レントゲン 検査やCT 検査:骨折などの骨の状態を検査MRI 検査:靭帯 に損傷がないか判断するために行われることがある超音波検査 や関節造影 検査を行う場合もある- その他の検査
心電図検査 :心筋梗塞でも肩の痛みが出る場合があり、これと区別するために行われることがある
肩関節周囲炎(五十肩)の治療法
肩関節周囲炎(五十肩)に関連する治療薬
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(外用薬)
- 炎症や痛みなどを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、関節炎や筋肉痛などを和らげる薬
- 体内で炎症や痛みなどを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
- PGはシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きなどにより生成される
- 本剤はCOXを阻害しPG生成を抑えることで、炎症や痛みなどを抑える作用をあらわす
- 薬剤によって貼付剤(貼り薬)、塗布剤(塗り薬)など様々な剤形(剤型)が存在する
- 製剤によって使用回数や使用方法などが異なるため注意する
筋弛緩薬
- 脳から筋肉への筋肉緊張の伝達を抑え筋弛緩作用をあらわし、痛みやしびれ感などを緩和する薬
- 筋肉の緊張状態が続くと、肩こり、腰痛、頭痛などがおこりやすくなる
- 筋肉の緊張は脳から脊髄を経て筋肉に指令が伝わることでおこる
- 本剤は脳→脊髄→筋肉と伝わる筋肉緊張の伝達などを抑えて筋肉の緊張を緩和する作用(筋弛緩作用)をあらわす
- 筋肉がつっぱったまま動かなくなる痙性麻痺などに使用する薬剤もある
肩関節周囲炎(五十肩)の経過と病院探しのポイント
肩関節周囲炎(五十肩)が心配な方
肩関節周囲炎は、四十肩や五十肩とも呼ばれますが、年代を問わず起こる病気です。腕を上げようとする動作で痛みが生じ、徐々に肩関節の動く範囲が狭まって凍結肩と呼ばれる状態に移行してしまいます。
ご自身の症状が肩関節周囲炎でないかと心配になった時、まずは整形外科のクリニックを受診されることをお勧めします。整形外科で診療をする典型的な疾患です。ただし日常動作の最中ではなく、スポーツや交通事故で強い衝撃を受けたタイミングでの発症であれば、他の疾患の可能性も考えられます。肩関節周囲炎であればクリニックで対応が可能ですが、もし腱板断裂や肩周囲の骨折で手術が必要そうな場合には、レントゲンやその他行われた診察、検査の結果をまとめた診療情報提供書(紹介状)とともに、手術可能な病院を紹介してもらう流れになります。
肩関節周囲炎(五十肩)でお困りの方
肩関節周囲炎の場合、痛み止め(内服薬、塗り薬、湿布)で痛みを和らげたり、肩関節への注射やブロック注射が行われたりします。また、そのままにしておくと肩関節の動かせる範囲が狭くなったままになってしまうため肩のストレッチや体操も重要です。痛みが発症した直後は避けるべきですが、痛みが改善してきながらも肩の動かせる範囲が狭まっているタイミングでは、積極的にストレッチや肩の運動を行います。肩を温めて血行を良くすることも有効です。ただし痛みを押して過剰に行うとかえって病状を悪化させますので、担当医の指導を受けた上で行うことをお勧めします。このような運動療法を行いながら、半年から1年かけて、あるいは数年間かけて改善してくることが一般的です。
長期間リハビリテーションを行っても改善がなく日常生活に支障がある場合には手術を検討します。手術を行うと肩の動かせる範囲は改善することが多いですが、あらゆる手術にはリスクがあります(長時間の麻酔によって誤嚥性肺炎になったり、肩に細菌が入り込んで症状が悪化するなど)。自然に治る見込みがあるのであれば、通常はまずリハビリテーションの治療を優先します。