かたかんせつしゅういえん(ごじゅうかた)
肩関節周囲炎(五十肩)
痛みにより、肩を動かすことができなくなる病気。五十肩や四十肩とも呼ばれる
9人の医師がチェック 120回の改訂 最終更新: 2022.03.22

Beta 肩関節周囲炎(五十肩)のQ&A

    肩関節周囲炎の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    肩の周りにある筋肉や腱(すじ)などが、加齢により硬くなって動きが悪くなることが主な原因と言われています。

    肩関節周囲炎は、どんな症状で発症するのですか?

    高い所にある物を取ろうとして肩を挙げようとした時などに、急な激痛を感じて発症することが多いです。

    発症後は、数週間から数ヶ月、また場合によっては数年間かけて徐々に症状が改善してくることもあります。日中より夜間に痛みが強くなることも特徴の一つです。

    肩関節周囲炎は、どのように診断するのですか?

    まずは肩の症状や、押したり動かしたりした時の痛みからからある程度判断をつけます。しかし、この症状があれば「肩関節周囲炎」というような特徴的な診察結果はありません。また、検査一つで診断が確定できる病気でもありません。診察結果とレントゲンなどをあわせて、総合的に診断をつけることになります。

    肩関節周囲炎の治療法について教えて下さい。

    肩関節周囲炎の治療では、薬物療法と運動療法を両方並行して行います。

    • 薬物療法
      • 主にNSAIDsと呼ばれる消炎鎮痛剤を使用します。痛み止めとしてしばしば用いられる薬ですが、肩の炎症を抑える作用もあります。痛みを抑えることで、運動療法が行いやすくなるというメリットもあります。これには内服薬と外用薬(湿布など)があります。
      • 筋弛緩薬という薬を併用することもあります。これは筋肉が縮こまろうとする作用を抑えて、筋肉を柔らかくする薬です。
    • 運動療法
      • 体内で炎症が起きている時には、細胞の増殖が活発になっているので、その後かえって関節やその周囲の組織が固まって(癒着して)動きづらくなってしまうことがあります。これを放置すると「凍結肩」と呼ばれる、より肩が動きづらい状態になってしまいます。
      • 凍結肩になって治療が難航するのを予防するためにも、定期的にストレッチするなどの運動療法が非常に重要です。

    肩関節周囲炎と肩腱板損傷の違いについて教えて下さい。

    肩腱板損傷と肩関節周囲炎は似ていますが、加齢により硬くなった腱が切れたり、切れかかったりしたものを肩腱板損傷と言います。腱板損傷があっても、痛み止めなどを使用しながら時間とともに治ることも多いのですが、場合によっては手術が必要になります。

    肩関節周囲炎が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    痛いからと言って、肩を動かさないようにし続けていると、肩の動きが悪くなって固まってしまいます。肩関節周囲炎後の、この肩がほとんど動かない状態を「凍結肩」と言いますが、この場合、治療が困難になることがあります。

    肩関節周囲炎は、どんな年代で起こる病気ですか?

    いわゆる「五十肩、四十肩」などと言われることもあり、40歳代から50歳台に圧倒的に多い病気です。しかし、それよりも上や下の年代でもなることはあります。

    肩関節周囲炎の、その他の検査について教えて下さい。

    レントゲン検査では、特に異常が見つからないこともありますが、上腕骨(二の腕の骨)の上の方にある、大結節という箇所が硬くなった像が見られることがあります。これがあると肩関節周囲炎の可能性が高いです。

    また、肩関節の超音波検査を行ったり、症状が似ている腱板損傷と区別するために、肩のMRI検査を行ったりすることもあります。

    肩関節周囲炎の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?

    肩関節周囲炎の治療で処方する薬(NSAIDs)には、炎症を抑える作用もありますが、病気そのものを治療するというよりも、痛みを和らげて運動療法をしやすくするのが主な目的です。痛みが落ち着いたら内服を続ける必要はありません。

    肩関節周囲炎と診断が紛らわしい病気はありますか?

    肩腱板損傷では、肩関節周囲炎と似た症状が出ます。また、まれではありますが、心筋梗塞で心臓からの痛みが肩に生じることもあり、注意が必要です。

    肩関節周囲炎では入院が必要ですか?通院はどの程度の期間必要ですか?

    肩関節の手術をする方を除けば、入院が必要になることは基本的にありません。個人差が大きいところではありますが、早い方だと数週間、数か月から半年である程度の症状が取れる方が多いです。凍結肩と呼ばれる、肩の動きが悪いまま固まってしまった状態になると、年単位で症状が続いたり、そのまま左右の肩で動く範囲に差がついてしまったりすることもあります。

    肩関節周囲炎が発症しやすくなるのはどんな場合ですか?

    腱や筋肉が硬くなって起こる病気なので、日常生活で肩をあまり動かす習慣がないと発症しやすくなると考えられます。

    肩関節周囲炎は、再発を予防できる病気ですか?

    肩関節周囲炎は再発することがあります。一度症状が取れた後も、肩のストレッチや体操を続けることで予防につなげることができます。

    肩関節周囲炎に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    日常生活で、腕を水平以上にあげる動作は少ないと思いますが、これは肩の動きを改善させるために効果的です。意識的に腕を挙げて、肩の動きを良くしようと心掛けることは有用です。

    肩関節周囲炎は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    痛みなく、日常生活が送れるようになる方が大半です。また痛みがとれてからも、定期的に肩のストレッチを行うことで、肩が動く範囲を広げていくことができます。

    一方で「凍結肩」になってしまうと完治が難しく、関節の動きが悪くなるなどの後遺症が残ることがあります。