肩関節周囲炎(五十肩)のリハビリとは?
この記事のポイント
2.肩関節周囲炎には、リハビリが必要?
3.肩関節周囲炎ではどんなリハビリが行われている?
4.肩関節周囲炎はリハビリで治るのか?
肩を動かすと痛む病気の一つに肩関節周囲炎があります。肩関節周囲炎には、リハビリテーション(リハビリ)が効果的であることが知られています。どのようなリハビリがあるのかについて解説します。
◆肩関節周囲炎(五十肩)とは
肩関節周囲炎は、肩の痛みや動かしにくさを現わす病気です。少しの動きでも強い痛みが出て肩を動かすことが出来なくなることもあります。原因は不明ですが、肩の筋肉や関節の組織の
肩関節周囲炎があると、痛みのあまり肩を動かさなくなり、結果として肩の周りが硬くなって手があがらなくなるなど、関節の動きに制限が生じます。このような
◆肩関節周囲炎には、リハビリが必要?
典型的な肩関節周囲炎は、以下のような経過をたどることが知られています。
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炎症期:徐々に痛みが強くなる
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拘縮 期:痛みの軽減とともに、肩が動かしにくくなる -
回復期:徐々に肩が動くようになってくる
さまざまなリハビリによって、痛みや動かしにくさを軽減できることがわかっています。
ただし、痛みがあるにもかかわらず無理に肩を動かすとかえって病状を悪化させることもあります。そのため、時期などによっては安静が適している場合もあります。肩関節周囲炎のリハビリには専門家の指示が必要です。
◆肩関節周囲炎ではどんなリハビリが行われている?
リハビリは、上記に示した経過に沿って行われることが一般的です。
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炎症期
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痛みが生じないような関節の位置の指導や、痛みがない範囲で筋や腱を伸ばす運動が行われます。痛み止め(
内服薬 、塗り薬など)や神経ブロック 注射により痛みをやわらげる方法もあります。
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拘縮期
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痛みが軽減してきたら、肩の動かせる範囲を広げるためのストレッチや体操が行われます。積極的に肩を動かすことで、動かしやすくなります。
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回復期
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自分で肩を動かせるようになってきたら、生活場面で積極的に痛みのある方の手を使うことを勧めます。自主トレーニングにより、肩周囲の運動に加えて、自分の身体を管理する習慣を身につけることも重要です。
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では、実際にどのようなリハビリが行われているのかについて詳しく解説して行きます。
腕のポジショニング
肩関節に炎症が生じているとき、特に夜間に激痛が現れることがあります。この時、身体を横に寝かせることで腕の重みが炎症が起きている部分に負担をかけていることも考えられます。このような場合には、寝た姿勢での腕の姿勢を工夫すること(ポジショニング)で痛みの軽減が期待できます。
痛みが生じている場所や痛みが少なくなる姿勢は人によって異なります。たとえば、肘を背中側に出すような姿勢を避けるには、仰向けに寝る場合は、肩から肘にかけて丸めたタオルを敷き、身体の横に腕が置かれるようにし、肘を軽く曲げた状態でお腹の上に置く姿勢があります。身体を横からみたときに、肘が肩より下がらないようにタオルを置きます。横向きに寝る場合は、お腹の上に腕を置き、肩も肘も軽く曲がるようにします。
専門家と話し合い、自分が最も痛みを感じにくいポジショニングを話し合うと良いでしょう。
関節モビライゼーション
モビライゼーションは、医療従事者が患者の関節に手で力を加えるなどして、動かしやすくするなどの効果を狙う治療です。
肩関節周囲炎では、激痛により、本来肩を動かすために必要がない筋肉に過度な力がかかっていることがあります。すると関節がスムーズに動かず更なる痛みが生じる場合があります。関節モビライゼーションでは、そうした関節をよりスムーズに動かせるように調整することもあります。
関節モビライゼーションは肩の痛みや動く範囲などを改善する効果があります。
ストレッチ
一部の筋肉が硬くなってしまうことで、関節の動きが悪くなったり、本来の筋力を発揮できなくなることがあります。ストレッチでは筋肉をゆっくりと伸ばすことで、本来の関節の動きや筋力を取り戻すことを狙います。
固有受容性神経筋促通法(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation:PNF)
肩関節周囲炎があると、痛みのあまり不自然な動きをしてしまい、その動作がさらに痛みを悪化させていることがあります。固有受容性神経筋促通法はそのような場合の治療です。望ましいと考えられる動作を何度も繰り返し、その動作を学習することを目指します。
振り子運動(コッドマンの振り子体操)
肩関節周囲炎の痛みの一因は、肩周りの筋肉の一部が過剰に働くことであると考えられています。振り子運動は、筋肉の緊張を取り除いた状態で肩関節を動かします。両足を肩幅くらいに広げて立ち、机や椅子を支えにして腰を曲げます。痛みのある方の腕で1.0kg程度の錘(おもり)をもち(痛みがあり錘が持てない場合は、何も持たなくても構いません)、身体を揺らします。徐々に肩関節の動く範囲を広げるように、前後・左右に動かします。振り子運動は、適切な指導の後、自宅でも行うことが出来ます。
温熱療法
肩の炎症がおさまったら、患部を温める治療法があります。血行が良くなり、筋肉が和らぎ、関節が動かしやすくなるためです。患部を温めるには、皮膚から筋肉や血管を温める表層温熱(ホットパック)もありますが、超音波や電流などで内部の組織を温める深部温熱(短波ジアテルミー)の方が効果的であるとも言われています。
参考:J Rehabil Med. 2008 Feb;40(2):145-50.
光線療法(レーザー治療)
レーザーが痛みを感じる神経に働きかけることで、痛みを軽減する治療です。
超音波
超音波によっておこる振動(キャビテーション;液体内の泡の発生と消滅、微小流、音響流)が、炎症や痛みの治療を促進することを狙って、炎症が起きた部分に超音波をあてる治療も行われています。
薬物療法と併用するリハビリ
リハビリは薬を使う治療と一緒に行うこともあります。
炎症や痛みを抑える薬の非
炎症や痛みを抑える
ヒアルロン酸ナトリウムの関節注射が使われる場合もあります。ヒアルロン酸は体内にももともとある物質で、ヒアルロン酸ナトリウムは関節に注射することで保水性や潤滑作用により効果をあらわす薬です。
薬だけの治療と比較して、ストレッチやモビライゼーションなどを組み合わせることで効果が増したという報告などがあります。
参考:J Med Assoc Thai 87:473-480, 2004.
◆肩関節周囲炎はリハビリで治るのか?
残念ながら、リハビリによって全ての症状が完全に治るわけではありません。リハビリなどの治療を行っても症状が残る場合などで、手術が選ばれることもあります。
手術の方法としては、肩周りの筋や組織がくっついて長時間たっている場合に対して組織をはがす手術などがあります。
手術後にもリハビリが行われます。
今回ご紹介したように、肩関節周囲炎に対するリハビリはいくつかの方法が知られていますが、人によって痛みの軽減する方法やその度合いは様々です。自分に合ったリハビリを選ぶためには、医師などの専門家との話し合いが大切です。
参考:
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。