きょさいぼうせいどうみゃくえん(そくとうどうみゃくえん)
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
大動脈や比較的太い動脈に炎症が起こる病気。血管炎の一種。側頭動脈に起こることが多い
9人の医師がチェック 81回の改訂 最終更新: 2022.02.26

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)の基礎知識

POINT 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)とは

大動脈や側頭動脈に代表される太い血管に炎症が起こる病気です。50歳以上の人に多く、免疫の異常が原因と考えられています。顎や眼を栄養とする血管も障害されるため、噛むときに顎が疲れやすい、ものの見え方がおかしいといったことを自覚することもあります。頭痛、発熱、体重減少も代表的な症状です。診断のためには血液検査、CT検査、MRI検査、シンチグラフィー、PET/CT検査、超音波(エコー)検査、側頭動脈生検などを行います。治療薬としてはステロイド、免疫抑制薬などの薬剤を使用します。生物学的製剤(アクテムラ)も有効であると報告されています。気になる人はリウマチ内科、膠原病内科を受診してください。

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)について

  • 大動脈や比較的太い動脈に炎症が起こる病気
    • 側頭動脈呼ばれるこめかみ近くの血管に炎症が起きることが多い
    • 以前は側頭動脈炎とも呼ばれていた
    • 血管に炎症がおきる血管炎の一種
  • 頻度
    • 50歳以上で発症するケースが多い
  • リウマチ性多発筋痛症と同時に発症することがある
  • 目の血管の障害により失明することもあるため、診断後すぐに治療することが望ましい

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)の症状

  • 全身症状として、発熱や全身のだるさが出る
  • こめかみのあたりの頭痛
  • 食べ物を噛んでいるとあごが痛くなる
  • 視力低下、重症例では失明することもある
  • 肩や二の腕、太ももの痛みが出る(リウマチ性多発筋痛症の症状)

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)の検査・診断

  • 血液検査:炎症が起こっているかなどを調べる
    • CRP赤沈の上昇があるか調べる
  • 画像検査:血管の状態や炎症が起きていそうかどうかなどを調べる
    • 超音波(エコー)検査
    • CT検査
    • MRI検査
    • 高額な検査となるがGaシンチグラフィーPET-CT検査も有用であるとされる
  • 組織診:血管を一部切り取り、血管に炎症が起こっているかどうかを調べる
    • 側頭動脈の一部を切り取り、顕微鏡で調べる

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)の治療法

  • ステロイド薬内服
    • 目の症状がある場合は失明の危険性があるため、なるべく早く治療を開始する
    • 最初は多い量のステロイド薬で炎症を抑えて、状態が改善してきたら徐々に薬の量を減らしていく
    • ステロイド薬は長期に内服すると糖尿病、高血圧、感染症骨粗鬆症など様々な副作用が問題となる
    • ステロイド薬の副作用を予防するために予防薬を一緒に併用して内服することも多い
      • 使われることがある薬剤(ステロイド以外)
      • 抗菌薬(バクタなど):免疫が抑えられることによる感染の予防
      • ビスホスホネート(商品名:アクトネルなど)、ビタミンD(商品名:エディロールなど):ステロイド薬による骨粗しょう症の予防
  • トシリズマブ(商品名:アクテムラなど)
    • 点滴タイプと皮下注射タイプがあるが、皮下注射タイプが巨細胞性動脈炎に適応
    • 海外で高い有効性が実証されている
    • ただし、ステロイド薬に比べると薬価も高額
  • その他
    • シクロホスファミドやメトトレキサートなどの免疫抑制薬を使うこともある
    • 脳梗塞の予防にバイアスピリンなどの抗血小板薬を内服することがある

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)に関連する治療薬

トシリズマブ(IL-6阻害薬:関節リウマチなどの治療薬)

  • 炎症をおこす要因となるIL-6の働きを抑えることで関節の腫れや痛みなどを改善し、骨などの損傷を防ぐ薬
    • 関節リウマチでは免疫の異常により炎症反応がおき関節の腫れなどがあらわれ、その状態が続くと骨が壊され変形する
    • 炎症をおこす要因となるインターロイキン6(IL-6)という物質があり、IL-6受容体に結合してその作用をあらわす
    • 本剤はIL-6受容体を阻害しIL-6に由来する過剰な炎症反応などを抑える作用をあらわす
  • 本剤(トシリズマブ)は関節リウマチや若年性特発性関節炎のほか、キャッスルマン病、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎などの治療に使われる場合もある(剤形によって使われる疾患が異なる場合もある)
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