ネフローゼ症候群の人が食事や生活で気をつけるべきこと
ネフローゼ症候群になって治療中にはいくつかの気を付けるべきことがあります。ここではネフローゼ症候群の人の食事や運動、生活習慣に焦点をあてて解説します。
1. ネフローゼ症候群の人が食事で気をつけること
ネフローゼ症候群の人が気をつけるのは塩分とタンパク質の量です。塩分の過剰摂取は
参考文献
・厚生労働省難治性疾患克服研究事業進行性腎障害に関する調査研究班難治性ネフローゼ症候群分科会/編「ネフローゼ症候群診療指針」東京医学社, 2012
塩分は控えるべき?
ネフローゼ症候群では浮腫が起こります。ネフローゼ症候群の浮腫は塩分の摂取で悪化することがあるので塩分を制限することが望ましいと考えられてます。
ネフローゼ症候群の人は1日の塩分を食塩で6g以下に制限することが望ましいと考えられています。厚生労働省の報告によると日本人の1日の塩分摂取量は9-10gです。ネフローゼの人は食事で摂取する塩分の量を抑える必要があります。
塩分の制限はどのようにすればいいのでしょうか?日本人はしょうゆやみそという食塩が多く含まれた食品を口にする機会が多く、どうしても塩分の摂取量が多くなりがちです。塩分の多い食品を認識することから始めるのがいいと思います。食品によっては思った以上に食塩が含まれていたりするので知るだけで大きく違います。
タンパク質が少ない食事がよい?
ネフローゼ症候群はタンパク質が尿から出ていくことにより浮腫などの症状が現れる病気です。体から出ていくタンパク質を補うべきでしょうか?
ネフローゼ症候群の人には軽度のタンパク質制限食が勧められています。
体から大量のタンパク質が出ていくネフローゼ症候群の場合には、タンパク質を食事などによって補う方が理にかなっているように思えるのではないでしょうか。しかしタンパク質を多く摂取するとタンパク尿が悪化することが知られています。タンパク尿の悪化が意味するのは尿に含まれるタンパク質の量が増加することです。尿中にタンパク質が多くなると腎臓にダメージを与えてしまいます。こうした過去の知見もあり現在はネフローゼ症候群の人はタンパク質をやや抑えた食事が勧められています。
推奨される摂取量は、『ネフローゼ症候群診療指針』では以下のように定められています。
- 微小変化型ネフローゼ症候群以外の場合:0.8g/kg
- 微小変化型ネフローゼ症候群の場合:1.0-1.1g/kg
これは体重あたりの量になります。例えば微小変化型ネフローゼ症候群の人で体重60kgの人は1日あたり60g程度のタンパク質の摂取が目安になります。タンパク質は腎臓の機能によっても制限した方がいい場合があります。
エネルギー(カロリー)摂取で気をつけることがあるのか?
ネフローゼ症候群の人はエネルギー摂取で気をつけなければならないことはあるのでしょうか。
ネフローゼ症候群の人で摂取が望ましい1日当たりのエネルギーの量は35cal/kgとされています。つまり体重60kgの人は2100kcalが必要というわけです。これはあくまでも目安なので体格や年齢、活動量により調整が必要です。成人の身体活動が低い人の1日推定エネルギー必要量は1,850から2,500kcalです。
ネフローゼ症候群に適した食生活を送るには?
ネフローゼ症候群の人の食事について塩分とタンパク質、カロリーに着目して解説してきました。どのくらいの量を摂取すればいいかは理解していただけたと思います。では実行に移すにはどうすればいいのでしょうか?
塩分やタンパク質の量を正確に守った食事を毎回用意することは難しいものです。どの食品にどの程度の栄養素が含まれているかを知って食事をする人は少ないと思います。自ら学ぶことも大切ですが、栄養士など専門的な知識を持つ人から指導を受けるのも有効な方法です。他には文部科学省のウェブサイトにある「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」も参考になると思います。
食事についての注意点を述べてきましたが、食事の注意点を厳格に守らなければ大変なことが起きるということはありません。もちろん治療中は常識を超えるような暴飲暴食は慎むべきですが、毎回の食事で食品ごとの数値を全て算出して守らなければならないことはありません。治療中はストレスなどがたまりやすくなります。食事のように生活に楽しみを与えてくれる行為も苦痛に感じるのは精神的にも好ましいとは言えません。治療中であってもたまには好きなものを食べるのもいいと思います。医師や栄養士と相談してメリハリのついた食生活ができるような工夫をしてみてください。
2. ネフローゼ症候群の人が生活で気をつけること
ネフローゼ症候群の人は生活ではどのようなことに気をつける必要があるのでしょうか?生活における身近な注意点について解説します。
参考文献
・浅野 泰/監「腎臓内科診療マニュアル」日本医学館, 2010
飲酒を控える
ネフローゼ症候群の治療中は長期に渡って
ネフローゼ症候群が治療で寛解(症状がおさまること)になったとしても腎臓の機能は健康な人に比べると低下していることもあります。
飲酒と腎臓の機能が低下することの関係については、大量の飲酒(エタノール60g/日以上)をすると腎臓の機能が低下したり腎不全の危険性が高くなるとされています。
飲酒を1日の楽しみにしている人は多くいると思います。腎臓への機能に影響がない範囲で楽しむことが大事です。
禁煙
喫煙は腎臓の機能を悪化させる原因のひとつと考えられています。
ネフローゼ症候群になった人は寛解(症状がおさまること)した後にも再発したり腎不全にいたることがあります。腎臓に病気を抱えていない人に比べて腎臓の機能が低下する危険性が高いです。
喫煙は腎臓の機能を低下させる以外にもいくつかの
運動制限は必要?
ネフローゼ症候群の人に過度な運動制限は必要ないと考えられています。以前は
運動によって体に負担がかかると一時的にタンパク尿がでることがあります。タンパク尿は腎臓の機能に悪影響を与えます。したがって運動を制限して安静にすることがよいとされてきました。しかし現在は、運動時のタンパク尿による腎臓への影響は長期的には小さなものであり問題がないと考えられています。
適度に運動をすることで体重の増加などから免れることができます。体重の増加が過ぎて肥満になると高血圧や糖尿病などの危険性が高まります。その他にも安静にしすぎることにより血液の流れが悪くなり血のかたまりができやすくなるなどの不利益も指摘されています。
肥満に注意する
ネフローゼ症候群の人の中には、ネフローゼ症候群の原因となった病気によって腎臓の機能が低下してしまう人がいます。腎臓の機能をできるだけ保つには肥満は避けるべきだと考えられています。
肥満は一般的には正常範囲を超えて体重が増加している状態です。医学的には
肥満は糖尿病や高血圧などの腎臓の機能を損なう病気の危険性を高めると考えられています。特に腎臓の機能が落ちていると考えられるときには肥満に陥らないように注意することが大切です。