ぱにっくしょうがい
パニック障害
突然のパニック発作を起こし、生活に支障が起こる状態。不安障害の中の一つ
9人の医師がチェック 195回の改訂 最終更新: 2025.11.07

パニック障害で知っておくと良いこと:仕事との両立、病気への理解

パニック障害は周囲のサポートが非常に大切になる病気です。しかし、病気の特徴から、なかなか理解してもらえないこともあります。また、仕事との両立も悩みの種です。仕事のストレスによって悪化することもありますし、仕事中に発作が起きたらどうしようという不安に苦しむこともあります。ここでは、仕事との付き合い方をはじめ、パニック障害について知っておくと良いことを紹介します。

1. パニック障害の人が仕事と上手に付き合うにはどうすればいいのか

「仕事中にパニック発作を起こしたらどうしよう」 「仕事のストレスで症状が悪化しているかもしれない」 「仕事を辞めたほうがいいのではないか」 パニック障害を抱える人は、このように仕事で悩むこともあると思います。

病気と付き合いながらうまく仕事を続けるコツは、「安心できる環境づくり」です。これは自分ひとりの努力ではできないことも多く、職場の同僚や上司の協力が必要です。職場によって出来ることと出来ないことがあるとは思いますが、今から紹介することの中から、自分に合っている方法を試してみてください。

2. 職場の同僚や上司に打ち明けて理解してもらう

パニック障害では、自分の病気を正しく理解してくれる人が側にいるだけで安心します。職場でパニック発作が起きてもなんとかなる、という安心感も得られます。そのため、自身のことを同僚や上司に打ち明けて、状況を正しく理解してもらうことがとても大切です。

「そうはいっても職場では言いにくい」という人は多いと思います。一般的に自分の病気のことを打ち明けるのは勇気や思いきりが必要ですし、パニック障害のような心や脳の病ではなおさらそうでしょう。

パニック障害の治療全体に言えることですが、焦って無理に病気を打ち明ける必要はありません。

  • 同僚や上司は、パニック障害という病気や自分の状況を理解してくれそうか
  • 打ち明けることで、どれくらい自分の安心感が増すだろうか
  • 打ち明けることで、仕事の環境をより安心できる場に改善できそうか

このようなことを考えてみて、打ち明けるメリットが大きいと判断したら、そうしてみてください。

その際には、「パニック障害という病気」と「自分の状況」の両方を正しく理解してもらう必要があります。後者の「自分の状況」については、正直に打ち明けて、お互いが向き合っていくことで、理解が進んでいきます。前者の病気の理解については、まず同僚や上司が正しい情報を手に入れることが肝心です。医療事典MEDLEYのこのページも活用してみてください。

ちょっと困ったこと、ちょっとした不安も相談できる人が職場にいると、かなりの安心感を得ることができます。

3. 働きやすい環境作りをする

職場には、不安と緊張の原因となるものがたくさんあります。ストレスはパニック障害を悪化させますし、パニック発作の引き金にもなります。そのため、原因となりうる要素を減らすのも大事な対処法です。

【不安や緊張を引き起こす要素の例】

  • 新しい仕事、ポジション、チーム
  • 数字で表される目標や競争
  • 仕事での失敗
  • 毎日の残業や休日出勤をしなければいけないほどの忙しさ
  • 上司からのプレッシャー
  • 病気で仕事が遅かったり、休んだりすることへの罪悪感や申し訳なさ

さらに、以下のような状況は、「今パニック発作が起きてしまったらどうしよう」という予期不安を悪化させてしまいます。

  • 会議や朝礼
  • 満員電車

これらが自分の症状を悪くしていないか、一度考えてみてください。

業務量の多さが症状を悪化させているようであれば、仕事を減らしてもらう必要があります。満員電車が苦痛で「あんな狭くて身動きも出来ないような場所でパニック発作が起きたらどうしよう」という不安が強い場合、通勤の時間帯をずらすことが解決につながるかもしれません。あるいは、車通勤・自転車通勤に切り替えることで、自力で解決できる人もいるかもしれません。

パニック障害を抱えながら仕事をしている人の中には、自分の病気のことを職場に打ち明けている人もいれば、打ち明けていない人もいるはずです。どちらがいいと一概に言えるものではないですが、各々の状況にあわせて、できることからひとつずつトライしてみてください。

パニック障害を治さなければいけないと思って焦ることはありません。ゆっくりと上手く付き合いながら、症状をよくしていきましょう。

4. どんな時に職場の変更を検討すればよいのか

ここまでは、できるだけうまく職場と付き合いながら、パニック障害に対処していく方法を述べてきました。しかし、職場の環境が合っていない場合は、どのような方法をとっても上手くいかない事もあります。例えば、次のような状況があるかもしれません。

  • 職場の理解が得られにくい:上司や同僚の理解が得られにくく、甘えだなどと言われてしまう
  • ストレスが大きい:自分の仕事量を減らしたり、休んだりできない職場である
  • 予期不安が強い:仕事柄、会議やイベントが多く、避けられない状況が多い

このような場合は無理に仕事を続ける事で、症状が悪化する可能性もあります。仕事を辞めるか、職場を変える必要があるかもしれません。しかし、その場合であっても、「生活費はどうしよう」「再就職できるだろうか」「かえって症状が悪化しないだろうか」といった不安は尽きないはずです。

先のことは誰にも分かりません。分からないことについて悩むよりは、一度仕事を休むか、転職してみることを検討してみてください。うまく環境を整えることで、パニック障害とうまく付き合いながら復帰して仕事をしている人はたくさんいます。まずは「安心できる環境づくり」のために、いま改善できることを考えてみましょう。

転職や休職は非常に大きな決断です。人間はストレスを強く感じている場面では的確な選択ができなくなることがあります。ここでも慌てすぎず、少し気持ちが落ち着いてから決断をしても遅くはありません。

5. 主治医や産業医との話し合いも大事

自分の病気や状況のことを一番よく知っているのは、当然自分自身です。しかし、辛い症状によって冷静な判断ができないこともあります。このような時に頼りにして欲しいのがお医者さんです。

医師は同じ病気の患者をたくさん診てきているので、少し離れた立ち位置から、客観的な意見をもつことができます。仕事を休職する、辞める、再就職するといった大きな決断のタイミングでは、主治医や産業医の意見が参考になります。また、場合によっては診断書を書いてもらうなど、判断の支持材料をもらえることも少なくありません。自分一人で結論を出すのではなく、ぜひ専門家とともに相談しながら決めてください。

6. パニック障害のことを正しく理解して欲しいという思い

パニック障害はその特徴からなかなか理解してもらいにくい病気です。家族や周囲の人に、まず知って欲しいことは次の4つです。

  • パニック障害という病気が存在すること
  • 心理的な側面をもつ病気だが、実際に動悸やめまいといった身体の症状があらわれること
  • 本人の「弱さ」や「甘え」が原因ではないこと
  • 治療には時間がかかり、病気と上手く付き合っていく必要があること

加えて、具体的に次のような病気であることを知ってください。

【パニック障害の特徴的な症状】

  • パニック発作(不安発作):突然激しい動悸や胸苦しさ、冷や汗、めまいを生じて、数分から1時間以内で治まる。発作中はこのまま自分が狂ったり、死んだりするのではないか、という異常に強い恐怖感におそわれる
  • 予期不安:「またパニック発作におそわれたらどうしよう」「パニック発作が起きて死ぬかもしれない」という強い恐怖感が1ヶ月以上続く
  • パニック発作に対する恐怖によって、何かを避ける行動:一人で外出するのをやめたり、人が多いところに出かけなくなったりする

パニック発作を初めて起こしたときは、動悸、息苦しさ、震え、冷や汗、めまいといった症状の強さに本人も周りの人も驚きます。救急車を呼ぶことがあるほどです。ところが、病院に着いて、診察を受ける頃には症状が治まっていることがよくあります。さらに、心電図レントゲンCT検査、採血検査などでは異常が見当たらない病気です。お医者さんから「何も悪いところはありませんし、症状も落ち着いたようなので帰って大丈夫です」と言われて拍子抜けしてしまうこともあります。そして、結局、原因が分からずにもやもやしてしまうことは珍しくありません。

このような発作を繰り返し起こす様子を見ると、「苦しいふりをしているだけではないか」「心が弱いだけだ」と思ってしまう人がいます。しかし、パニック障害は病気であり、実際に同じ症状の人が他にも多くいます。また、心が深く関係した病気とはいえ、実際に身体に激しい症状があらわれます。本人がとても苦しんでいることに間違いはありません。心の「弱さ」や「甘え」の問題ではないのです。

パニック発作では、次のような症状があらわれることを知っておいてください。

【パニック発作の症状】

  • 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
  • 発汗
  • 身震い
  • 息切れ感または息苦しさ
  • 窒息感
  • 胸痛または胸部不快感
  • 嘔吐または腹部不快感
  • めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  • 冷感または熱感
  • 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  • 現実感消失(現実でない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
  • 抑制力を失う、または「どうにかなってしまうこと」に対する恐怖
  • 死ぬことに対する恐怖

こうした症状があらわれた際には、パニック発作が起こっている可能性があるので、周囲の人は本人に優しい声かけをお願いします。そして、対応して欲しいことがあるか本人にたずねてみてください。症状が長く続く場合には、医療機関の受診を検討してみてください。

7. パニック発作には落ち着いて対処する

パニック発作は過呼吸につながることがあります。初めて経験した人は驚くかもしれません。しかし、パニック発作の持続時間は長くても1時間以内です。いずれ治まるので、慌てずに、そばにいて付き添ってあげてください。

また過呼吸になった場合は、ゆっくり呼吸をするように優しく声かけをしてください。ペーパーバッグ法といって、ビニール袋や紙袋を口に当てて呼吸する方法が効果的なことがあります。しかし、心臓や肺に持病がある人は慎重に行わなければならない場合があるので、発作時の対応を主治医の先生と事前に相談しておくとよいです。

あるいは話しかけて本人に何か喋ってもらう方法もあります。人は喋っているときに同時に呼吸はできませんので、これを利用します。

8. 本人が不安、緊張を感じる場所、状況を避けるのを手伝う

パニック障害の人は、不安や緊張を感じやすい場所・状況があります。例えば、以下のような状況です。

【パニック障害の人が不安や緊張を感じやすい場所】

  • 公共交通機関(バス、電車、飛行機など)
  • 広い場所(駐車場など)や囲まれた場所(お店やレストラン、映画館など)
  • 列に並んだり、人の群れの中にいること
  • 一人で自宅の外に出かけること

このような不安や緊張を感じる場所や状況を家族や周囲の人が知っておくことで、その状況を避けたり、支援することができます。

9. そばに付き添ってあげる

パニック障害の人にとって、信頼できるひとが側にいることによる安心感は大きいものです。一人で外出できない人も多いので、一緒に出かけることがリハビリにもなります。ただし、何でも言うことを聞いて、本人に依存されてしまうのもよくありません。適度な距離感が大切です。

もし一緒にいるときに、本人が辛そうにしている場合は、人が少なくてゆっくり落ち着ける場所に誘導したり、休むことを提案してみてください。

パニック障害の人が安心して外出するには、家族や周囲のサポートが非常に大切です。こうすればパニック障害は良くなる、という確立された接し方はないのですが、人によって、あるいは状況に応じて上手くあわせることで、着実に良くなることを手助けできます。安心や落ち着きが本人のとってなによりの治療になるのです。