良性発作性頭位めまい症(BPPV)の原因は?
良性発作性頭位めまい症では、特定の頭の位置でめまいが起こります。なぜ、特定の頭の位置でめまいが起こるのでしょうか。めまいを起こす仕組みと、めまいを起こしやすい原因について見ていきましょう。
1. 良性発作性頭位めまい症はなぜ起こるのか?
良性発作性頭位めまい症は、耳が原因になるめまいです。耳の奥にある半規管(はんきかん)という部分に、
耳で平衡感覚を担当する部位
良性発作性頭位めまい症の原因となる半規管(はんきかん)は
内耳には、平衡感覚を担当する
- 内耳
- 前庭系:平衡感覚を担当
- 半規管:体の傾きや回転を感知
- 前半規管(上半規管)
- 後半規管
- 外側半規管(水平半規管)
- 耳石器:体の動きの方向を感知
- 卵形嚢:水平の動きを感知
- 球形嚢:上下前後の動きを感知
- 半規管:体の傾きや回転を感知
- 蝸牛:聴覚を担当
- 前庭系:平衡感覚を担当
半規管は体の回転や傾きを感知します。耳石器は、水平方向や上下や前後の動きを感知します。水平方向を感知する耳石器は、卵形嚢(らんけいのう)と呼ばれ、上下前後の動きを感知する耳石器は球形嚢(きゅうけいのう)と呼ばれます。
良性発作性頭位めまい症の原因となる耳石は、半規管に近い卵形嚢から落ちて半規管に迷入します。
三半規管とは
半規管は体の傾きや回転を感知する部分です。リング(輪っか)の形をしているものが3つつながっています。半規管の位置により、前半規管(上半規管)、後半規管、外側半規管(水平半規管)と呼ばれます。3つを合わせて
半規管の一部の膨らんだ部分を、膨大部(ぼうだいぶ)と呼びます。膨大部の内部には、傾きや回転を感知する感覚細胞が集まっています。感覚細胞からは長い毛(感覚毛:かんかくもう)がでています。感覚毛はクプラに包まれています。体が傾くと、内リンパ液が動くため、感覚毛が動き、傾きの情報が前庭神経を通じて脳へ伝えられます。
耳石とは
耳石とは、耳石器にある石のことです。耳石器には平衡斑(へいこうはん)とよばれる感覚細胞が集まっている部分があります。平衡斑では、感覚細胞の感覚毛を耳石膜が包んでいて、その上に耳石が載っています。耳石は内リンパ液より重いので、体が動いた時に耳石が取り残され、耳石膜が動くことで、感覚毛が動き、体の動きを前庭神経を通じて脳へ伝えられます。
耳石は炭酸カルシウムからできていて、耳石膜の上に固定されています。耳石が耳石膜から剥がれ落ちて、半規管に迷入すると、良性発作性頭位めまい症を起こします。
耳石がめまいを起こす仕組み
半規管はリング(輪っか)の形をしていて、内部は内リンパ液と呼ばれる液体で満たされています。卵形嚢から半規管に耳石がはいると、内リンパ液が動いたり、めまいの神経細胞が刺激され、めまいを起こします。
良性発作性頭位めまい症は、大きくわけて半規管結石型とクプラ結石型があります。
- 半規管結石型
- 体を動かした時に、リング状の半規管の中を耳石が転がります。耳石が半規管内を転がると、内リンパ液が動くため、めまいを起こします。耳石は卵形嚢から落ちて、半規管に入りますが、3つに分かれている半規管の中でも、卵形嚢により近い後半規管や外側半規管に入りやすいです。
- クプラ結石型
- 耳石がクプラに付着してめまいを起こします。クプラとは半規管の中にある、めまいの細胞がある部分です。耳石がクプラに付着すると、クプラが重くなるため、重力に鋭敏に反応するようになります。頭の位置の変化で、クプラが正常と比べて大きく動くため、めまいを起こします。
2. 良性発作性頭位めまい症の原因となるものにはどんなものがある?
良性発作性頭位めまい症の多くは、明らかな原因がない
頭部外傷
事故や
内耳障害
メニエール病や突発性難聴などの内耳の病気では、良性発作性頭位めまい症を
メニエール病は内耳の中で、内リンパ液で満たされている部分がむくんで起こりますが、耳石器まで
突発性難聴では、耳石器の細胞も障害を受けると考えられており、耳石が剥がれ落ちやすくなります。
内耳障害がより重症なほど、良性発作性頭位めまい症を起こしやすいと言われています。
年齢
良性発作性頭位めまい症は40歳以降の中年、高齢者によく起こります。
耳石を載せている耳石膜を支える細胞が、加齢とともに減って耳石が剥脱しやすくなったり、耳石自体の質が加齢によって変化することで、耳石が剥脱しやすくなると考えられています。
加齢とともに運動量が減ったり、同じ姿勢で過ごすことが多くなるため、耳石が剥脱しやすくなります。
長期間横になっての療養、同じ姿勢での睡眠
病気やケガなどで、長い期間横になった後に、良性発作性頭位めまい症を起こしやすくなります。卵形嚢に同じ方向からの重力が長時間加わることで、耳石が剥がれ落ちやすくなると考えられています。
同じ理由で、毎日同じ耳を下にして眠ったり、毎日同じ方向を下にして横になってテレビを見たり、前屈姿勢で作業するなどの生活習慣でも、良性発作性頭位めまい症を起こしやすくなるとされています。
3. ストレス・喫煙・飲酒は良性発作性頭位めまい症の原因になるか?
ストレスは良性発作性頭位めまい症の原因にはなりません。しかし、良性発作性頭位めまい症でめまいの症状がある時に、ストレスがかかると、めまいの症状が悪化する場合があります。そのため、めまいがある場合には、ストレスがかからないような生活を心がけてください。また、ストレスは、めまいを起こす病気のうち、突発性難聴やメニエール病の
喫煙や飲酒は良性発作性頭位めまい症の原因にはなりません。