りょうせいほっさせいとういめまいしょう(びーぴーぴーぶい)
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
頭の位置や傾きが変わることをきっかけに、ぐるぐるとした数十秒間のめまいが生じる病気
26人の医師がチェック 131回の改訂 最終更新: 2019.11.05

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の原因は?

良性発作性頭位めまい症では、特定の頭の位置でめまいが起こります。なぜ、特定の頭の位置でめまいが起こるのでしょうか。めまいを起こす仕組みと、めまいを起こしやすい原因について見ていきましょう。

1. 良性発作性頭位めまい症はなぜ起こるのか?

良性発作性頭位めまい症は、耳が原因になるめまいです。耳の奥にある半規管(はんきかん)という部分に、耳石という小さな砂粒状の石が迷入(間違えて入る)してめまいを起こします。耳というと、聞こえを担当している印象があるかもしれません。実は聞こえとともに、体のバランス感覚(平衡感覚:へいこうかんかく)を担当しています。耳の中の体のバランスを担当する部位と、仕組みについて説明します。その後に、良性発作性頭位めまい症が起こる仕組みについて説明します。

耳で平衡感覚を担当する部位

良性発作性頭位めまい症の原因となる半規管(はんきかん)は内耳(ないじ)にあります。

内耳には、平衡感覚を担当する前庭系(ぜんていけい)と、聴覚を担当する蝸牛(かぎゅう)があります。前庭系には半規管(はんきかん)と耳石器(じせきき)があります。

図:内耳の各部の名前。

  • 内耳
    • 前庭系:平衡感覚を担当
      • 半規管:体の傾きや回転を感知
        • 前半規管(上半規管)
        • 後半規管
        • 外側半規管(水平半規管)
      • 耳石器:体の動きの方向を感知
        • 卵形嚢:水平の動きを感知
        • 球形嚢:上下前後の動きを感知
    • 蝸牛:聴覚を担当

半規管は体の回転や傾きを感知します。耳石器は、水平方向や上下や前後の動きを感知します。水平方向を感知する耳石器は、卵形嚢(らんけいのう)と呼ばれ、上下前後の動きを感知する耳石器は球形嚢(きゅうけいのう)と呼ばれます。

良性発作性頭位めまい症の原因となる耳石は、半規管に近い卵形嚢から落ちて半規管に迷入します。

三半規管とは

半規管は体の傾きや回転を感知する部分です。リング(輪っか)の形をしているものが3つつながっています。半規管の位置により、前半規管(上半規管)、後半規管、外側半規管(水平半規管)と呼ばれます。3つを合わせて三半規管です。

半規管の一部の膨らんだ部分を、膨大部(ぼうだいぶ)と呼びます。膨大部の内部には、傾きや回転を感知する感覚細胞が集まっています。感覚細胞からは長い毛(感覚毛:かんかくもう)がでています。感覚毛はクプラに包まれています。体が傾くと、内リンパ液が動くため、感覚毛が動き、傾きの情報が前庭神経を通じて脳へ伝えられます。

図:半規管膨大部の内部。体が傾くと感覚毛が動き、情報が前庭神経に伝わる。

耳石とは

耳石とは、耳石器にある石のことです。耳石器には平衡斑(へいこうはん)とよばれる感覚細胞が集まっている部分があります。平衡斑では、感覚細胞の感覚毛を耳石膜が包んでいて、その上に耳石が載っています。耳石は内リンパ液より重いので、体が動いた時に耳石が取り残され、耳石膜が動くことで、感覚毛が動き、体の動きを前庭神経を通じて脳へ伝えられます。

耳石は炭酸カルシウムからできていて、耳石膜の上に固定されています。耳石が耳石膜から剥がれ落ちて、半規管に迷入すると、良性発作性頭位めまい症を起こします。

耳石がめまいを起こす仕組み

半規管はリング(輪っか)の形をしていて、内部は内リンパ液と呼ばれる液体で満たされています。卵形嚢から半規管に耳石がはいると、内リンパ液が動いたり、めまいの神経細胞が刺激され、めまいを起こします。

良性発作性頭位めまい症は、大きくわけて半規管結石型とクプラ結石型があります。

  • 半規管結石型
    • 体を動かした時に、リング状の半規管の中を耳石が転がります。耳石が半規管内を転がると、内リンパ液が動くため、めまいを起こします。耳石は卵形嚢から落ちて、半規管に入りますが、3つに分かれている半規管の中でも、卵形嚢により近い後半規管や外側半規管に入りやすいです。
  • クプラ結石型
    • 耳石がクプラに付着してめまいを起こします。クプラとは半規管の中にある、めまいの細胞がある部分です。耳石がクプラに付着すると、クプラが重くなるため、重力に鋭敏に反応するようになります。頭の位置の変化で、クプラが正常と比べて大きく動くため、めまいを起こします。

2. 良性発作性頭位めまい症の原因となるものにはどんなものがある?

良性発作性頭位めまい症の多くは、明らかな原因がない特発性(とくはつせい)です。良性発作性頭位めまい症では、耳石が剥がれ落ちて、半規管に迷入してめまいを起こします。耳石が剥がれ落ちやすくなることが、良性発作性頭位めまい症の原因になります。

頭部外傷

事故や打撲などの頭部のけがや、歯科治療、耳の手術などで頭部に振動が与えられると、耳石が剥がれ落ちることがあるため、頭部のけがや振動が与えられている時は良性発作性頭位めまい症を起こしやすくなります。

内耳障害

メニエール病突発性難聴などの内耳の病気では、良性発作性頭位めまい症を発症することがあります。

メニエール病は内耳の中で、内リンパ液で満たされている部分がむくんで起こりますが、耳石器までむくみが広がると、耳石が剥がれ落ちやすくなると考えられています。

突発性難聴では、耳石器の細胞も障害を受けると考えられており、耳石が剥がれ落ちやすくなります。

内耳障害がより重症なほど、良性発作性頭位めまい症を起こしやすいと言われています。

年齢

良性発作性頭位めまい症は40歳以降の中年、高齢者によく起こります。

耳石を載せている耳石膜を支える細胞が、加齢とともに減って耳石が剥脱しやすくなったり、耳石自体の質が加齢によって変化することで、耳石が剥脱しやすくなると考えられています。

加齢とともに運動量が減ったり、同じ姿勢で過ごすことが多くなるため、耳石が剥脱しやすくなります。

長期間横になっての療養、同じ姿勢での睡眠

病気やケガなどで、長い期間横になった後に、良性発作性頭位めまい症を起こしやすくなります。卵形嚢に同じ方向からの重力が長時間加わることで、耳石が剥がれ落ちやすくなると考えられています。

同じ理由で、毎日同じ耳を下にして眠ったり、毎日同じ方向を下にして横になってテレビを見たり、前屈姿勢で作業するなどの生活習慣でも、良性発作性頭位めまい症を起こしやすくなるとされています。

3. ストレス・喫煙・飲酒は良性発作性頭位めまい症の原因になるか?

ストレスは良性発作性頭位めまい症の原因にはなりません。しかし、良性発作性頭位めまい症でめまいの症状がある時に、ストレスがかかると、めまいの症状が悪化する場合があります。そのため、めまいがある場合には、ストレスがかからないような生活を心がけてください。また、ストレスは、めまいを起こす病気のうち、突発性難聴メニエール病発作の原因にはなります。

喫煙や飲酒は良性発作性頭位めまい症の原因にはなりません。