つうふう
痛風
血液中の尿酸が結晶化し、急激な関節の痛みと炎症を起こすこと。足の親指の付け根、足首、膝に症状が出やすい
17人の医師がチェック 226回の改訂 最終更新: 2022.08.08

痛風の原因:高尿酸血症

痛風は関節などで尿酸が結晶となり、炎症が誘発されることで起こります。高尿酸血症がある時、脱水を起こしている時、アルコール飲料を摂取した時などは尿酸の結晶ができやすく痛風発作に注意が必要です。

1. 痛風の原因には何があるか

痛風は関節などに尿酸の結晶ができることで起こります。私たちの身体は尿酸の結晶を異物として認識するため、白血球が集まり除去が試みられます。この尿酸の結晶の除去の過程で関節などの痛みや腫れ、熱さなどが起こります。

では、身体の中で尿酸の結晶はどのような時にできやすいのでしょうか。尿酸の結晶ができやすいのは血液中の尿酸の濃度が高いまま持続している時や尿酸の濃度が変化する時であると言われています。具体的には以下のものごとは痛風発作を引き起こす可能性があるため注意です。

  • 高尿酸血症
  • 脱水
  • 過食
  • アルコール飲料
  • 利尿薬、尿酸降下薬などを開始すること

それぞれの状況と痛風の関係について以下で説明していきます。

2. 高尿酸血症

血液中の尿酸の濃度が高い状態を高尿酸血症と呼びます。高尿酸血症は尿酸の結晶ができやすい状況です。痛風発作を起こした人の多くが高尿酸血症を持っています。高尿酸血症は痛風の一番重要な原因です。

高尿酸血症の診断は血液中の尿酸の濃度を測ることで行います。血液中の尿酸の濃度は病院やクリニックで行われる血液検査で測定することができます。

高尿酸血症は痛風発作が起きない限り、他にほとんど症状がありません。そのため、高尿酸血症は診断が遅れやすく、また見つかっても治療の必要性を感じにくくさせています。

治療の章」で詳しく説明しますが、痛風発作時は安静や抗炎症薬により炎症が早く引くように努めます。しかし、もともとの原因である高尿酸血症がしっかり治療されていないと、痛風発作を繰り返しやすくなります。痛風発作を繰り返さないためには、高尿酸血症をしっかり治療することが重要です。

3. 脱水

脱水になると血液が濃縮されることにより、血液中の尿酸の濃度が高くなります。尿酸の濃度が急激に変化すると尿酸の結晶ができやすくなるため、脱水を起こしている時には痛風発作に注意が必要です。

痛風発作を経験したことがある人やすでに高尿酸血症がある人は特に、夏場に水分補給をこまめにするようにしてください。

4. 過食

尿酸はプリン体が分解されることによりできます。プリン体は食べ物に含まれる栄養素の一つであり、食べ物を介して身体の中に取り込まれます。プリン体は身体に必要な栄養素ですが、過食を繰り返していると分解されてできる尿酸の量も多くなり、尿酸の結晶ができやすくなります。

特にプリン体を豊富に含む食べ物の食べ過ぎには注意が必要です。プリン体を豊富に含む食べ物の一例と100gあたりのプリン体量は以下の通りです。

  • レバー(鶏肉) 312.2mg
  • カツオ 211.4mg
  • マイワシ 210.4mg
  • ちりめんじゃこ 1108.6mg
  • イサキ白子 305.5mg

食べ物の中でも肉・魚、特に内臓や魚の卵はプリン体を多く含みます。痛風発作を経験したことがある人やすでに高尿酸血症がある人は、食べすぎないように気をつけてください。

参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

5. アルコール飲料

アルコール飲料の摂取が痛風発作の原因となる理由は以下の二つが考えられます。

一つ目はアルコール飲料には利尿作用があり、摂取により脱水を起こしやすくなるためです。脱水が起こると血液が濃縮されるので、尿酸の濃度が上がります。

二つ目はアルコール飲料にプリン体が含まれているためです。取り込まれたプリン体は分解され尿酸になるので、血液中に尿酸の濃度を上昇させる原因になります。

アルコール飲料に含まれるプリン体は多いもので100mlあたり15mgほどと言われています。実は、食品の量あたりで言うと、アルコール飲料よりも肉や魚のほうが多くのプリン体を含んでいます。カツオ100gに含まれるプリン体の量は200mg程度です。こう考えると、アルコール飲料のプリン体は大した量ではないと感じるかもしれません。しかし、アルコール飲料は大量に飲んでしまうことも多く、身体に取り込まれるプリン体も無視できない量となることが珍しくありません。

このようにアルコール飲料の摂取は尿酸の濃度を上昇させることで、痛風発作の原因になります。痛風発作を経験したことがある人やすでに高尿酸血症がある人はアルコール飲料の飲みすぎに注意が必要です。

参考文献:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

6. 利尿薬、尿酸降下薬などを開始すること

利尿薬や尿酸降下薬は血液中の尿酸の濃度を急激に変化させることで、痛風発作に悪い影響を与えることがあります。以下でそれぞれの薬の特徴や痛風発作との関係を説明します。

■利尿薬

利尿薬は尿の量を増やす薬です。心不全腎不全などで身体がむくんでいる時に、身体の水分量を適切なものとするために用いられます。利尿薬を開始した時には血液が濃縮され、血液中の尿酸の濃度が上昇するので、痛風発作のきっかけになることがあります。代表的な利尿薬にはフロセミドやヒドロクロロチアジドなどがあります。そのため、高尿酸血症がある人が利尿薬の内服を開始した時には痛風発作に注意が必要です。

■尿酸降下薬

尿酸降下薬は血液中の尿酸値を下げる薬で高尿酸血症の治療に使われます。尿酸降下薬は高尿酸血症の治療において重要な薬ですが、実は痛風発作が起きた時に開始すると痛風発作を悪化させることがあるということがわかっています。そのため、痛風発作の起きた人で高尿酸血症の治療が必要な場合も、関節の痛みや腫れなどの痛風発作の症状が良くなってから尿酸降下薬を開始します。

痛風発作が起きる前から尿酸降下薬を飲んでいる場合には、尿酸降下薬は中止せずに内服を継続します。

このように薬の中には痛風発作と関わるものがあります。痛風発作と薬の関係が気になる場合には、担当の医師や薬剤師に相談するようにしてください。