2016.03.01 | コラム

高尿酸血症と痛風の治療薬

高尿酸血症との関係のもとで

高尿酸血症と痛風の治療薬の写真
1.痛風と高尿酸血症の関係
2.高尿酸血症はどんな病気に関係するのか
3.高尿酸血症の改善薬
4.痛風発作時の治療に使う薬

血液中の尿酸濃度が高い状態では、関節が激しく痛む痛風発作だけでなく、痛風結節、尿路結石などが現れやすくなっています。高尿酸血症治療薬は痛風発作防止などを目的とします。発作時には痛みや炎症を抑える薬を使います。

 

◆痛風と高尿酸血症の関係

血液検査で「尿酸値が高い」と言われたことのある人は多いと思います。尿酸は痛風と深く関わっている物質です。

尿酸は体内で常に作られていて、食べ物などに含まれるプリン体が体内で代謝を受けると尿酸ができることも知られています。尿酸は血液の中にも流れていますが、通常は尿などに排泄され、血液中の尿酸濃度(尿酸値)はある範囲に維持されています。血清尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と呼ばれます。

高尿酸血症の状態にある人は、痛風発作が起こりやすいことが知られています。痛風は、尿酸が体内で針のような結晶となり、関節の炎症などを起こす病気です。足の親指の付け根(中足趾節関節)などに突然激しい痛みの発作が出ることが、痛風の典型的な症状のひとつです。高尿酸血症の治療は痛風発作などの予防を目的とします。

 

◆高尿酸血症はどんな病気に関係するのか

上記のように高尿酸血症の治療は痛風発作を防ぐことが主な目的ですが、高尿酸血症はほかの病気にも関係します。

高尿酸血症の状態にある人では、尿路結石、腎障害の発生も多くなります。

また、高尿酸血症に加えて高血圧などの病気を持つ人も多くいます。飲酒や運動不足と痛風の関連などが報告されていることから、痛風予防の目的で生活指導が行われる場合があり、いわゆる生活習慣病に対する生活指導と共通する点もあります。

 

◆高尿酸血症の改善薬

高尿酸血症に対して尿酸値を下げる薬を使う場合には、一般的には血清尿酸値を6mg/dl以下にすることを目標にします。

尿酸値を下げる薬は大きく2種類に分けられます。

 

  • 尿酸排泄促進薬
  • 尿酸生成抑制薬

 

これらの薬は、高尿酸血症の詳しい状態や腎臓などの臓器の状態を考えて使い分けます。高尿酸血症は、原因の違いによって3種類に分類できます。

 

  • 尿酸産生過剰型:尿酸が多く作られている
  • 尿酸排泄低下型:尿酸の排泄が少ない
  • 混合型:尿酸の産生過剰・排泄低下の両方が関わっている

 

日本人には尿酸排泄低下型が多いとされます。尿酸産生過剰型に対して尿酸生成抑制薬を使い、尿酸排泄低下型に対して尿酸排泄促進薬を使うという考え方ができます。

以下では尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬について、薬剤の例とそれぞれの特徴などを説明します。

 

◎尿酸排泄促進薬(主な商品名:ユリノーム®、ベネシッド®)

尿酸が腎臓など体に溜まらないように尿として排泄させる作用があります。

高尿酸血症の日本人患者は尿酸を体から排泄する機能が低い人(尿酸排泄低下型)の割合が多いとされているので尿酸排泄促進薬は日本人の治療に合うとされています。

また高尿酸血症における酸性尿や尿路結石などを改善する尿アルカリ化薬と一緒に使われる場合もあります。

 

■ベンズブロマロン

尿酸排泄促進薬の中でもベンズブロマロン(主な商品名:ユリノーム®)は尿産排泄作用が最も強いとされています。但しこの薬で注意しなくてはならないのが薬剤性の肝障害です。頻度は稀ですが、肝機能障害があらわれる場合があり、服用開始から半年は特に血液検査などで肝機能を確認しておく必要があります。肝障害の初期症状としては、倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸、発疹、吐き気などがあり、これらの症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に相談しましょう。

 

■プロベネシド

プロベネシド(商品名:ベネシッド®)は元々抗菌薬のペニシリンの排泄抑制(排泄を抑え、ペニシリンの効果を高める)を目的として開発された薬のため、ペニシリン系抗菌薬やペニシリンと類似したセフェム系抗菌薬などの効果を必要以上に高めてしまう可能性があります。ペニシリン系抗菌薬やセフェム系の抗菌薬は非常に多くの症状や治療で使われています。そのためベネシッドを服用中に他の医療機関や診療科を受診した際は、この薬を服用していることを医師や薬剤師に伝えましょう。


 

◎尿酸生成抑制薬(主な商品名:ザイロリック®、フェブリク®、ウリアデック®、トピロリック®)

尿酸が作られる過程のキサンチンオキシダーゼという酵素を阻害して尿酸が作られないようにします。この薬も多くの高尿酸血症の患者さんが服用しています。

血清尿酸値を下げるだけでなく、尿中の尿酸排泄量も低下させるので、ユリノームなどの尿酸排泄促進薬に比べて尿路結石が発現しにくいとされています。

 

■アロプリノール

アロプリノール(主な商品名:ザイロリック®、アロシトール®、サロベール® など)は1960年代から使われている薬で現在でも多くの患者さんが使用している薬です。腎不全の患者が過剰に使用してしまうと薬の成分が血液中に蓄積することで中毒症状があらわれることがあります。そのため、各々の腎機能に合わせた薬剤量による使用が必要となっています。

 

■フェブキソスタット

フェブキソスタット(商品名:フェブリク®)は、国内では2011年から販売されている薬で、服用方法が通常「1日1回」の製剤です。アロプリノールと比較した場合に一般的に腎機能への負担が少ないとされ、軽度〜中等度に腎機能が低下している場合でも通常用量で服用可能とされています。

 

■トピロキソスタット

トピロキソスタット(商品名:ウリアデック®、トピロリック®)はフェブキソスタットと同じように一般的に腎機能への負担が少ないとされ、軽度〜中等度の腎機能障害を合併する場合においても通常用量で使用できるとされています。但し、フェブキソスタットの服用方法が通常「1日1回」なのに対して、トピロキソスタットの服用方法は通常「1日2回」となっています。

 

◎尿酸値を下げる薬の注意

血清尿酸値を変動させると痛風発作が悪化してしまうことがあるので、発作中(発作が治まるまで)は基本的には尿酸値を下げる薬は開始しません。但し、すでに尿酸値を下げる薬を服用している場合は、原則として服用を継続し、NSAIDsやステロイドなどを追加して治療を行います。

また、ここでは高尿酸血症の治療薬を紹介してきましたが、高尿酸血症に対しては薬物治療の他、体内で尿酸のもととなるプリン体を多く含む食品(レバー、魚卵、魚の干物など)の制限や、アルコールが痛風発作を起こりやすくすることから飲酒の制限、また尿路結石に対する狙いから小まめな水分摂取などが医師から指示される場合もあります。過度な水分摂取でかえって浮腫(むくみ)などを生じることもあるので、医師の指示に従い食事や水分摂取を適切な範囲にコントロールする必要があります。

 

◆痛風発作時の治療に使う薬

痛風発作では激しい痛みが現れます。痛風発作時の痛みなどを改善するために使用する代表的なものが、以下の3種類の薬です。

 

  • コルヒチン
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)

 

どの薬を使用するにせよ、痛風発作が出ている時は患部を冷やし安静にすること、また尿酸値を変動させやすいアルコールの摂取は避けることが良いとされます。

それぞれの薬が使われる場面などについて説明します。

 

◎コルヒチン

痛風発作時には、白血球が尿酸を攻撃する作用が働きますが、コルヒチンは白血球が集まってくる作用などを阻止し、痛風発作を改善すると考えられます。

コルヒチンは発作が始まってから早く使うほど効果があるとされます。そのため、既に強烈な痛みがある発作期に用いるよりは、痛風発作の「前兆期」と呼ばれる、症状が現れはじめてすぐの時期に使い、発作を悪化させないことを狙います。

 

◎非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(主な商品名:ナイキサン®、インテバン®、ニフラン®)

痛みや炎症などを引き起こす因子となる体内物質のプロスタグランジン(PG)という物質の生成を阻害し、痛みや炎症などを軽減します。NSAIDsの中でもナプロキセン(商品名:ナイキサン®)、インドメタシン(主な商品名:インテバン®)、プラノプロフェン(主な商品名:ニフラン®)などは痛風発作に使う薬として保険適用となっている薬です。その中でもナプロキセンは臨床における効果などからよく使われ、発作がひどい時には「1回300mgを1日に限り3回まで使う」など比較的多量に用いることもあります。

 

一般的に「痛み止め」というとロキソプロフェンナトリウム(主な商品名:ロキソニン®)やジクロフェナクナトリウム(主な商品名:ボルタレン®)などを浮かべる方も多いかもしれませんし、実際にこれらの薬を用いることもあります。しかし痛み止めの中でもよく耳にする「バファリン(医療用医薬品としては、バファリン®配合錠A330など)」には注意が必要です。バファリンの主な成分であるアスピリン(アセチルサリチル酸)には血液中の尿酸値を変動させてしまう可能性があるため、痛風発作中に服用すると発作の悪化につながる場合があり、発作に対する服用は避けるべきとされています。(ちなみに市販薬では「バファリン」の名称で発売されている製剤でもアスピリン以外の成分を使用した製剤も存在します。)

 

◎ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)(主な商品名:プレドニン®、プレドニゾロン)

副腎皮質ホルモンであるコルチゾールを元に造られた薬で、プロスタグランジンなどの生成抑制作用や白血球の炎症部位への移行を抑制する作用などにより炎症や痛みなどを抑えます。

腎障害や浮腫などがありNSAIDsが使えない場合、またはNSAIDsを投与しても効果が無かった(又は不十分だった)場合、数カ所に関節炎が生じている場合などで使われます。

症状の程度によって使用量・使用方法などは変わってきますが、プレドニゾロン15-30mgを内服して炎症部位を鎮静させ1週間ごとに徐々に薬の量を減量し3週間で中止する・・・などの方法があります。

 

参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

注:この記事は2016年3月1日に公開されましたが、2018年2月15日に編集部(大脇)が更新しました。

執筆者

菊地友佳子

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る