つうふう
痛風
血液中の尿酸が結晶化し、急激な関節の痛みと炎症を起こすこと。足の親指の付け根、足首、膝に症状が出やすい
17人の医師がチェック 226回の改訂 最終更新: 2022.08.08

痛風の治療:発作時の対処法、薬物療法など

痛風の治療には安静、アイシング、患部挙上といった対処法と薬物療法があります。痛風の治療は発作が起きている場所の炎症を軽減し、症状を改善させます。薬物療法にはNSAIDsステロイド、コルヒチンなどがあります。

1. 痛風の治療には何があるか

痛風は尿酸が体内で結晶となり、関節などで炎症を起こす病気です。あまりの激痛のため、歩くのも、靴を履くのも困難になります。また痛風は発作を繰り返していると関節の形が変わってしまいます。そのため、痛風発作が起きた場合には、なるべく早く炎症が引くようにし、また繰り返さないための対応が必要になります。痛風の治療には安静、アイシング、患部挙上といった対処法と薬物療法があります。以下では痛風の治療として行われる対処法と薬物療法につき、説明していきます。

2. 発作時の対処法

痛風発作時の対処法には安静、アイシング、患部挙上があります。これらは発作が起きている場所の負担や血流を減らすことで痛風発作の炎症を軽減する狙いがあります。以下で詳しく説明していきます。

安静

痛風発作が起きた時に安静にすることは大事な対応の一つです。発作が起きている関節に負担をかけることは痛風発作の症状を悪化させます。痛風発作が起きている時には安静にして、運動を控えるようにしてください。また痛風発作が起きている間は患部を揉みほぐすこと、マッサージすることも厳禁です。

アイシング

アイシングとは患部を氷やアイスパックなどで冷やすことです。痛風発作は関節にできた尿酸の結晶を白血球が異物と認識し攻撃することで起こりますが、この白血球は血流に乗って関節にやってきます。アイシングは患部の血流を減らす効果があるので、痛風発作に有効であると考えられています。

アイシングは氷と水を入れた氷嚢やアイスパックをタオルでまくなどして行うようにしてください。一度のアイシングは20分程度で行い患部がまた熱を持ち始めたら、アイシングをするということを繰り返します。

患部挙上

患部を高いところにあげることで、患部に血液が流れにくくなり、痛風発作の症状を改善する効果が期待できます。例えば、痛風の発作がよく起こる関節に足の親指の付け根の関節や足首の関節があります。このような足の先に痛みがある場合には寝る時に足の下に枕を入れて少し高くして寝るといった対応ができます。

3. 薬物療法

痛風発作の関節の腫れや痛みを早く引かせる目的や、再発を防ぐ目的で薬物療法が行われることがあります。痛風で用いられる薬は以下のものがあります。

  • NSAIDs
  • ステロイド
  • コルヒチン
  • 漢方薬

以下で詳しく説明していきます。

NSAIDs(ロキソニン®︎、ボルタレン®︎など)

NSAIDs(エヌセイズ)は炎症を抑える薬の一つです。ロキソプロフェンナトリウム(主な商品名:ロキソニン®)やジクロフェナクナトリウム(主な商品名:ボルタレン®)などの薬が該当します。NSAIDs(Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs)は日本語にすると非ステロイド性抗炎症薬であり、同様に炎症を抑える作用を持つステロイドと区別してこのような名前がついています。

NSAIDsは痛風発作の関節の炎症や痛みを和らげる目的で使われます。薬の効果の発現は早く、内服して数十分程度で痛みの軽減を期待できます。NSAIDsは痛風発作が起きた時に第一選択薬として使われます。

NSAIDsの注意すべき副作用には消化性潰瘍腎機能障害があります。消化性潰瘍は胃や十二指腸にでき、腹痛や黒い便(黒色便)が現れます。もし、NSAIDsを内服していて、体調の変化を自覚する場合は、担当の医師や薬剤師に相談するようにしてください。

ステロイド

ステロイドは身体の中の副腎という場所から分泌されるコルチゾールというホルモンを治療薬に応用したものです。コルチゾールは炎症を抑える作用があるホルモンであり、ステロイドにも同様の炎症を抑える作用があります。そのため、痛風発作が起きた時に関節の炎症や痛みを和らげる目的で使うことができます。

ステロイドには内服薬(飲み薬)、点滴薬、外用薬(塗り薬など)などがあります。この中で痛風の治療にはステロイドの内服薬をよく使います。ステロイドには種類がいくつかありますが、痛風にはプレドニゾロンという種類のものが使われることが多いです。

痛風発作の症状を和らげる目的にはNSAIDsが第一に使われ、ステロイドはNSAIDsのみで十分に良くならない場合に用いられます。痛風発作に対するステロイドは症状が治ってから数日以内で中止にされることが多いです。これはステロイドを何週間も続けた時に問題となる副作用を避けるためです。

ステロイドの副作用は、内服した期間により以下のように分類できます。

  • 数日間の内服でも問題となる副作用
    • 眠れなくなる
    • 気分が落ち込むまたは高ぶる
    • 血糖値が上昇する
    • 血圧が上昇する
    • コレステロールが上昇する
  • 何週間か内服すると問題となる副作用
    • 感染症にかかりやすくなる
    • 体重が増加する
    • 骨がもろくなる
    • 白内障緑内障になる

このようにステロイドは副作用が多くあります。ステロイドの使用中になんらかの体調変化があった場合には担当の医師、薬剤師に相談するようにしてください。

コルヒチン

コルヒチンは痛風発作の前触れの症状を感じた人や発作を繰り返している人で、発作の予防目的に用いられる薬です。痛風発作は関節にできた尿酸の結晶を白血球が異物と認識し、攻撃することで起こります。コルヒチンはこの白血球が関節に集まるのを抑えます。

痛風発作の前触れの症状には関節の違和感やピリピリした感じがあります。痛風発作の前触れの症状は初めての発作では感じにくく、2回目以降の人が感じやすいです。コルヒチンはこの前触れの段階で内服することで、痛風の発作を予防することができます。

また痛風発作を繰り返している人では発作を予防するために少量のコルヒチンを数ヶ月間飲み続けることもあります。

コルヒチンの副作用には消化器障害(下痢、嘔吐)や肝機能障害などがあります。コルヒチンを内服し始めて下痢や嘔吐、倦怠感などがある場合には担当の医師、薬剤師に相談するようにしてください。

漢方薬

痛風発作時に使われる漢方薬には越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)や麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)などがあります。越婢加朮湯、麻杏甘石湯には石膏(セッコウ)や麻黄(マオウ)などの成分が含まれています。石膏(セッコウ)には熱を和らげる作用があり、麻黄(マオウ)には関節痛を和らげる作用があります。

一般的に安全性が高いとされる漢方薬も「薬」の一つですので、副作用がおこる可能性はあります。たとえば、越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)や麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)などの漢方薬には麻黄(マオウ)という生薬が含まれていますが、この麻黄によって交感神経が興奮するこにより動悸や不眠、排尿困難などの症状があらわれることも考えられ、持病で心臓の病気や前立腺肥大症などを持っている場合にはより注意が必要です。

漢方薬は通常、個々の体質や症状などを十分考慮した上で使われ、体質に合わない場合などは変更・中止するなどの適切な対応がとられます。ただし漢方薬による治療中に、何らかの気になる症状があらわれた場合でも自己判断で薬を中止することはかえって治療の妨げになる場合もあります。もちろん非常に重い症状となれば話はまた別ですが、漢方薬を服用することによってもしも気になる症状があらわれた場合は自己判断で薬を中止せず、医師や薬剤師に相談することが大切です。

4. 痛風が心配な人は何科に行けばいい?

痛風に関連する専門科は内科や整形外科です。また痛風は高尿酸血症が原因で起こることが多く、痛風を繰り返す場合は高尿酸血症の治療も必要になり、この場合は整形外科より内科の方が適しています。痛風は大きな病院でなくても診断や治療を受けることが可能です。