すいみんじむこきゅうしょうこうぐん(さす)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠中に一時的に呼吸が止まってしまう病気
23人の医師がチェック 210回の改訂 最終更新: 2024.11.07

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは:原因、症状、検査、治療など

睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。いびきや日中の眠気などの症状が出るとともに、身体に様々な悪影響をもたらします。ここでは睡眠時無呼吸症候群の原因や症状、行われる検査や治療について解説します。

1. 睡眠時無呼吸症候群はどんな病気か

睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に呼吸が止まる病気です。英語で「Sleep Apnea Syndrome」というので、頭文字をとってSAS(サス)と呼ばれることもよくあります。

医学的には10秒以上呼吸が止まると、1回の睡眠時無呼吸としてカウントされます。また、完全には止まっていないが止まりかけているものは、睡眠時低呼吸といいます。

睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数を合計した値を「無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)」といいます。AHIはSASの診断や重症度を判断するうえでよく参考にされる数値です。

厳密な診断基準には細かい項目が色々ありますが、基本的にはAHIが5以上で、SASによると考えられる症状があればSASと診断されます。

睡眠時無呼吸症候群の種類・原因について

SASには大きく分けて、以下の2つのタイプがあります。

【SASの分類】

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
  • 中枢性睡眠時無呼吸症候群

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、主に肥満などの影響で喉の空気の通りが悪くなっている人が発症します。脳は呼吸せよと命令を出していますが、空気の通りが悪くてうまく呼吸ができないタイプです。肥満以外にも加齢、男性、寝酒、喫煙、顎が小さい、舌が大きい、などの要因が発症に関連しています。

中枢性睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に呼吸をする命令が脳から正しく出ないタイプです。心臓の病気(心房細動心不全など)や脳の病気などがある人で発症します。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の人のほうが圧倒的に多いので、閉塞性のものを意味してSASと呼ぶこともあります。この記事でも主に閉塞性を中心に解説します。

他の病気との関係:高血圧、糖尿病、心不全、脳卒中など

SASではいびきをかいたり眠りが浅くなるなど、すぐに困るような問題も多く生じます。その一方で、睡眠中に酸欠になることによる長期的なダメージも現れます。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、以下のような病気の要因になりえると考えられています。

【閉塞性睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされる他の病気】

逆にこれらの病気がある人でSASらしい症状に心当たりがあれば、SASの検査を受けておくと良いと考えられます。

2. 睡眠時無呼吸症候群の症状について

SASは睡眠中に呼吸が止まる病気です。いびきなどの分かりやすい症状に加えて、眠りが浅くなったり、酸欠になることによる症状も現れます。以下にSASの主な症状をまとめます。

【睡眠時無呼吸症候群の主な症状】

  • いびき
  • 睡眠中の窒息感、あえぎ呼吸
  • 日中の過度の眠気
  • 睡眠中の呼吸停止
  • 起床時の頭痛
  • 起床時の喉の乾き
  • 疲労感
  • 不眠 など

このような症状が見られます。上記の症状は閉塞性SASでよく出てくるものです。中枢性SASの人ではいびきや窒息感は目立たず、閉塞性の人よりも症状が分かりにくいことが多いです。

3. 睡眠時無呼吸症候群の検査について

SASは症状をきっかけとして疑われることが一般的ですが、問診だけでSASと確定診断されることはありません。診断のためには実際に「睡眠中にどれくらい無呼吸になっているか」を測定する必要があります。そのための精密検査としてポリソムノグラフィーと、簡易モニター検査があります。以下ではこれらの検査について説明します。

ポリソムノグラフィー(PSG)

ポリソムノグラフィーはSASの診断において最も精密な検査です。英語で「polysomnography」と書くので、PSG(ピーエスジー)と略されることもあります。あるいは「ポリグラフ検査」と呼ばれることもあります。

PSGは基本的に個室での1泊入院で行われます。脳波、筋電図心電図、呼吸モニター、血中酸素モニターなど多数の測定機器をつけながら一晩寝ることにより、無呼吸・低呼吸の回数(AHI)だけでなく、眠りの質や体位と無呼吸の関係など様々な項目が分かります。また、閉塞性と中枢性の無呼吸を区別することもできます。

◎費用

保険適用で3割の自己負担でPSGを受ける人は、1.5万円-4万円くらいの窓口支払額になることが一般的です。保険適用なのに費用に幅が大きいのは、保険適用外の個室料金が別途かかるためです。(2024年10月)

簡易モニター

簡易モニターによるSASの検査は自宅で行えて、費用面の負担も軽いというメリットがあります。睡眠中に体内の酸素濃度を測るだけのものと、呼吸状態も合わせてもう少し詳しく調べるものがあります。

いずれの簡易モニター検査にしても、PSGと比べると検査精度や項目数で劣るため、100%信用することはできません。SASの程度について大まかな目安を把握するための検査と考え、必要があればPSGを追加で受けます。

◎費用

保険適用で3割の自己負担の人であれば、酸素濃度を測るだけの検査は300円ほど、呼吸状態も合わせて調べる検査では3,000円ほどです。検査は自宅で受けられますが、保険適用で検査するためには医療機関の受診が必要であり、受診料が別途必要です。(2024年10月)

4. 睡眠時無呼吸症候群の治療について

SASの治療方針は、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数「AHI」を基準として大きく変わります。以下ではSASに対して行われる治療と、そのメリットやデメリットについて解説します。

減量

閉塞性SASでは、肥満が最大の原因であることが分かっています。また、減量に成功すれば無呼吸の程度や、SASによる症状も軽減すると報告されています。

そのため、SASで困っている肥満の人は、他の治療を受けると同時にダイエットにも取り組むことが推奨されます。

マウスピース

マウスピースは専門的には口腔内装置と呼ばれるものです。寝るときにだけ装着します。下顎が少し前に出るような構造になっているため、空気の通り道が広がり、閉塞性SASを改善させる効果があります。

マウスピースによる治療は、重度のSASの人では効果が不十分になりがちです。そのためAHIが5-20程度で、SASによる症状で困っている人が使うのが一般的です。次に説明するCPAPよりも手軽な治療法ですが、歯や歯肉の痛み・違和感、かみ合わせの悪化などの副作用が起こりえます。

◎費用

マウスピースは歯科で歯形をとって、一人ひとりにあったものを作ってもらいます。費用は、保険適用で3割の自己負担の人で1.5〜2万円ほどです。(2024年10月)

CPAP(シーパップ)

CPAPは寝ている間の無呼吸を防ぐために、必要に応じて空気を送り込んでくれる小型の人工呼吸器です。英語での「Continuous Positive Airway Pressure」の頭文字をとってCPAP(シーパップ)と呼ばれています。

SAS治療の中心となる機械であり、ある程度以上重度のSAS(AHIが20以上)の人にはこの治療法が勧められます。閉塞性SASだけでなく、中枢性SASの人にも使われます。

送られてくる空気が気になって眠れない、マスクで皮膚がかぶれる、喉や鼻が乾燥する、などのトラブルが起こりえますが、多くはお医者さんや医療スタッフと相談しながら使用を続けることで解決可能です。

なお、CPAPはSASそのものを完治させるものでなく、装着しないで寝ると治療前と同じ状況になることに留意する必要があります。そのため、CPAP治療と並行してダイエット、寝酒を控える、禁煙する、横向きに寝る、などの対策も行うよう勧められます。

◎費用

近年はオンライン診療が普及しているものの、CPAPによる治療を受ける人は原則として月に1回医療機関に通うのが一般的です。CPAPの機器はレンタルされ、月々の受診料と機器の使用料・サポート料を合わせて、5千円ほどの支払額になります(保険適用・3割負担の場合)。(2024年10月)

手術

閉塞性SASの人では、空気の通り道が狭いことが原因となるので、通り道を広げるような手術が行われることもあります。

手術は大きく分けて2種類あり、耳鼻科で扁桃腺や鼻などに対する手術を行うものと、口腔外科や形成外科などで顎の骨などに対する手術を行うものがあります。

近年は手術の有効性が多く報告されてきていますが、身体の負担が大きい治療になることは間違いありません。また、長期的にはSASがまた悪化してくる可能性も懸念されています。

したがって、AHIが20以上くらいで、扁桃腺が特に大きいなど特殊な事情があれば手術も考慮されるものの、基本的にはまずCPAPによる治療を選択するのが一般的です。

参考文献

日本呼吸器学会/厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班/監修, 「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」, 南江堂, 2020