閉塞性睡眠時無呼吸は質問票だけでは診断しない、米学会の推奨
いびきや昼間の眠気を特徴とする閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠中の検査などから診断されます。米国睡眠医学会が、診断方法について推奨する事項をまとめました。
閉塞性睡眠時無呼吸の診断ガイドライン
米国睡眠医学会が、成人の閉塞性睡眠時無呼吸の診断方法の
ガイドライン作成のため、関係する研究報告の調査が行われ、研究で示されたことを参照して推奨事項が決められました。
このガイドラインでは、閉塞性睡眠時無呼吸の診断にはポリソムノグラフィーを使うことが標準的とされています。ポリソムノグラフィーは入院して睡眠中の呼吸や脳波などを記録する検査です。
また、家庭睡眠時無呼吸検査(HSAT)も方法のひとつとして挙げられています。HSATは家庭で使用可能な装置を使って睡眠中の状態を記録する検査です。
チェックリストは診断に使えるか?
これまでに、睡眠時無呼吸の診断を目的とした質問票がいくつか作られています。ガイドラインのための調査では、それぞれの質問票の診断能力について、ポリソムノグラフィーやHSATと比較した研究のデータをもとに検討しました。
Berlin質問票、Epworth眠気尺度、STOP-BANG質問票などの点数によって閉塞性睡眠時無呼吸を見分けようとした研究が見つかりました。ポリソムノグラフィーやHSATを基準として、それらの予測方法の性能が計算されました。
その結果、方法によっては閉塞性睡眠時無呼吸がある人のうち9割以上を予測できていたものもある一方、同時に閉塞性睡眠時無呼吸がない人の過半数が誤って閉塞性睡眠時無呼吸を疑われるなど、多くは性能に限界があると見られました。
総合して、ガイドラインでは質問票を単独で使わないよう勧めると判断されました。
ポリソムノグラフィーを使うべき状況などについても検討の上、推奨が決定されました。推奨事項は以下の内容です(大意)。
- ポリソムノグラフィーまたはHSATなしに質問票を使わない(強い推奨)
症状 などから中等度または重度の閉塞性睡眠時無呼吸が疑われる成人に対して、ポリソムノグラフィーまたはHSATを行う(強い推奨)- 1回のHSATで異常なしなどの結果になった場合、ポリソムノグラフィーを行う(強い推奨)
- 心臓や肺などの病気が見つかっている患者ではHSATよりもポリソムノグラフィーを使う(強い推奨)
- ポリソムノグラフィーのSplit-night法が適切な場合にはFull-night法より優先する(弱い推奨)
- ポリソムノグラフィーの結果が正常だったが閉塞性睡眠時無呼吸の疑いが残っている場合、2回目のポリソムノグラフィーを考慮する(弱い推奨)
必要な人に必要な治療を届けるために
閉塞性睡眠時無呼吸の診断についてのガイドラインを紹介しました。
いびきなどの症状と睡眠時無呼吸の関係が知られていますが、いびきがあっても睡眠時無呼吸はない人も多く、診断は単純にはできません。
正しい診断は治療の前提になります。不要な治療が行われたり、ほかの病気が隠れているのを見逃されたりしないよう、研究データで確かめながら最適な診断方法を選ぶ努力が続けられています。
執筆者
Clinical Practice Guideline for Diagnostic Testing for Adult Obstructive Sleep Apnea: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline.
J Clin Sleep Med. 2017 Mar 15
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。