2017.04.12 | ニュース

妊娠中の予防接種で、生後2か月の百日咳に有効率91.4%

アメリカ14万人の新生児の統計から

from Pediatrics

妊娠中の予防接種で、生後2か月の百日咳に有効率91.4%の写真

百日咳は生後すぐの赤ちゃんもかかります。かつては日本でも子供の重要な死因でした。予防接種により激減してからも決してまれな病気ではありません。アメリカの統計から、妊娠中の予防接種が子供の百日咳を予防する効果が検討されました。

アメリカの研究班が、研究施設で生まれた子供の統計データを解析し、妊娠中の予防接種が子供の百日咳を予防する効果を調べて、小児科専門誌『Pediatrics』に報告しました。

アメリカでは政府機関の疾病管理予防センター(CDC)が、妊娠するごとに妊娠後期にTdapワクチンを打つことを勧めています。Tdapワクチンは、破傷風、ジフテリア、百日咳の混合ワクチンです。

この研究は、妊娠・出産に関して記録されたデータを解析し、母親が妊娠中にTdapワクチンを打っていたときと打っていなかったときを比較して、生まれた子供が百日咳にかかった数に違いがあるかを調べています。

生後2か月までの期間を比較するとともに、子供がワクチンを打ち始めてからの情報も加味して生後1年間の比較も行いました。

 

解析から次の結果が得られました。

148,981人の新生児の間で、母親のTdapによるワクチン有効率は生後2か月間において91.4%(95%信頼区間19.5-99.1)、生後1年間を通じては69.0%(95%信頼区間43.6-82.9)だった。

対象者として148,981人の新生児のデータが利用できました。母親がTdapワクチンを打っていたとき、子供の百日咳に対して有効率は生後2か月までで91.4%でした。生後1年までの比較では、子供が打ったワクチンの効果を調整すると、母親のTdapワクチンによる有効率は69.0%と計算されました。

研究班は「母親のTdapワクチン接種は、乳児の百日咳に対して、特に生後最初の2か月間には高い防御効果があった」と結論しています。

 

妊娠中のTdapワクチンの効果を調べた研究を紹介しました。

日本ではTdapワクチンは未承認です。百日咳の予防としては、子供を対象に、四種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオの混合ワクチン)が定期接種とされています。

海外渡航の際などに、Tdapワクチンの接種を求められる場合があります。保険制度上の注意点もありますが、Tdapワクチンの予防効果と安全性は、諸外国で広く使われている経験と多くの研究結果により検証されています。Tdapという名前は聞き慣れないかもしれませんが、上で紹介したような、実際に使っている国でのデータを参考にすれば、冷静に判断するために役立つかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effectiveness of Vaccination During Pregnancy to Prevent Infant Pertussis.

Pediatrics. 2017 Apr.

[PMID: 28557752] http://pediatrics.aappublications.org/content/early/2017/03/30/peds.2016-4091

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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