2017.12.09 | ニュース

79歳男性の腕がポパイの力こぶのようになった原因は?

神奈川県から症例報告
from The New England Journal of Medicine
79歳男性の腕がポパイの力こぶのようになった原因は?の写真
(c) nebari - iStock

診察室で見つかる特徴は診断の大きな手掛かりになります。中には見た目が印象的なものもあります。「ポパイサイン」と呼ばれる徴候が現れた人の例が報告されました。

ポパイサインが出た79歳男性

湘南鎌倉総合病院の吉田直記医師らが、ポパイサインが現れた患者の写真を医学誌『The New England Journal of Medicine』に寄稿しました。

この患者は79歳男性で、受診した2日前にものを持ち上げようとしたとき、急に左肩に鋭い痛みを感じました。また左上腕(二の腕、肩と肘のあいだ)に膨らみができました。

診察では左上腕に明らかに変形があり、左肘を曲げるとさらに膨らんで、漫画の「ポパイ」の力こぶのような形になりました(「参考文献」のリンク先に写真が掲載されています)。

肩のMRI検査で、上腕二頭筋長頭腱が完全に断裂していることが確認されました。

 

腕に何が起こっていたのか?

上腕二頭筋は上腕の前側(腕を下ろした姿勢のとき)にある筋肉です。上腕二頭筋は肩に近い側で長頭(ちょうとう)と短頭(たんとう)に分かれています。長頭の腱は加齢や酷使などによって断裂しやすく、断裂すると長頭が縮んで力こぶのあたりに膨らみとして現れることがあります。

上腕二頭筋長頭腱断裂の治療は手術なしで足りる場合も多いとされます。この男性は消炎鎮痛薬(痛み止めの薬)で治療され、4か月後には痛みが軽く、日常生活に支障なくなっていました

 

診察でわかること

ポパイサインが上腕二頭筋長頭腱断裂の診断につながった人の例を紹介しました。

医師が診察をするときには、診断のヒントになる徴候がないか多くの面からチェックしています。この人の写真を投稿した吉田医師は、CNNの記事で「MRIやX線写真を撮らなくてもわかった」と話しています。

ポパイサインも徴候のひとつですが、ほかにもさまざまな病気と結び付くさまざまな徴候が古くから研究され、検査が発達した現代でも、診断に活かされています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

“Popeye” Sign.

N Engl J Med. 2017 Nov 16.

 

[PMID: 29141167] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1704705

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。