C型肝炎の治療は腎臓が悪いとどうなる?
C型肝炎の治療として、直接作用型抗ウイルス薬と総称される薬が最近使われるようになりました。高い有効性の報告も多く、急速に普及しています。
ただし、C型肝炎とともに腎臓の機能低下もある患者では注意が必要になる場合があります。たとえば薬剤の取扱説明書にあたる添付文書によると、ハーボニー®配合錠は「重度の腎機能障害」または「透析を必要とする腎不全」があれば「禁忌」とされています。ヴィキラックス®配合錠は「重要な基本的注意」として「腎機能が低下している患者」では「急激に腎機能が悪化することがある」とされています。ジメンシー®配合錠は「クレアチニンクリアランス50mL/min未満の腎機能障害患者」に対して「慎重投与」とされています。
マヴィレット®配合錠は日本では2017年9月27日に承認されました。添付文書上で「禁忌」「使用上の注意」の欄に腎機能についての記載はありません。
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重度の腎機能低下がある患者に対するグレカプレビル・ピブレンタスビル
グレカプレビル・ピブレンタスビル配合剤(マヴィレット配合錠)の臨床試験の結果が、医学誌『The New England Journal of Medicine』に報告されました。
この試験は、対象者全員が同じ薬を使用する方法をとっています。一般に、C型肝炎になった人では、C型肝炎ウイルスは治療しなければ体から消えることはありません。また、肝障害による症状として疲労感・黄疸などが出ることもありますが、この研究は明らかな肝不全症状がない人を対象としています。
対象者は、C型肝炎ウイルスの感染がわかっていて、かつ重度の腎機能低下(eGFR<30mL/min/1.73m2)がある人から選ばれました。以前にC型肝炎ウイルスに対する薬剤治療を受けていてもよいとされました。
28歳から84歳の患者104人が対象となりました。うち85人は透析を受けていました。
98%でウイルス検出なく、重度の有害事象は24%
12週間の治療の結果、治療終了から12週後に102人(98%)がウイルスの検出されない状態(SVR12)となりました。うち2人が24週後までに研究から離脱しましたが、24週後にも100人(96%)がウイルスの検出されない状態を維持していました。
副作用について、臨床試験ではしばしば副作用とそうでないものが区別しにくいため、治療中・治療後の望ましくない出来事をまとめて有害事象と呼びます。有害事象には副作用によるものが含まれていると考えられます。
治療終了後30日までに以下の有害事象がありました。
- 何らかの有害事象:74人(71%)
- 重度の有害事象:25人(24%)
- かゆみ:21人(20%)
- 疲労感:15人(14%)
- 吐き気:12人(12%)
重度の有害事象が出た25人の中で、副作用によると見られた人はいませんでした。1人が脳出血で死亡しましたが、副作用によるものではないと判断されました。
マヴィレットはC型肝炎の新選択に?
グレカプレビル・ピブレンタスビル配合剤(商品名マヴィレット配合錠)の臨床試験を紹介しました。重度の腎機能低下がある患者に対しても効果を現したと見てよいでしょう。
また、上では紹介しませんでしたが、グレカプレビル・ピブレンタスビル配合剤はウイルスの「ジェノタイプ」によって使用不可とされる制限がないことも特徴とされます。
複数の直接作用型抗ウイルス薬が使用可能な場合にどれを優先するべきかはまだわかっていない点も多く残されています。ほかの薬が使えない人で、グレカプレビル・ピブレンタスビル配合剤が新しい選択肢となり、結果に結び付く場合はあるかもしれません。
執筆者
Glecaprevir and Pibrentasvir in Patients with HCV and Severe Renal Impairment.
N Engl J Med. 2017 Oct 12.
[PMID: 29020583]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。