妊娠糖尿病で運動するといいことはある?

妊娠中は血糖値が上がりやすくなります。妊娠糖尿病と呼ばれる状態は、子供に影響する恐れもあり、注意が必要とされます。運動による効果としてこれまでの研究から示されている結果が調査されました。
妊娠糖尿病に対する運動の効果
ニュージーランドの研究班が、妊娠糖尿病のある妊婦と子供に対する運動の効果として、過去の研究で示されている内容をまとめ、『Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。
妊娠糖尿病は糖尿病ではありません。しかし、妊娠糖尿病によって赤ちゃんがお腹の中で大きくなりすぎたり、生まれてすぐに低血糖を起こしたりする恐れがあります。また、産後に糖尿病になる場合もあります。
血糖値は下がるがほかの効果は不明
採用基準を満たす11件の研究が見つかりました。対象者数は合計638人でした。
報告されていたデータから、運動することで空腹時
結果として起こることについては以下のようになりました。
- 妊娠高血圧腎症のリスクには差がない(低い質の証拠)
- 帝王切開のリスクには差がない(中等度の質の証拠)
- 分娩誘発のリスクには差がない(低い質の証拠)
- 産後の
BMI には差がない(高い質の証拠) - 子供の死亡・肩甲難産・骨折・神経
麻痺 などのリスクに差がない(中等度の質の証拠) - 子供の低血糖のリスクに差がない(低い質の証拠)
妊娠糖尿病と言われたら運動するべき?
妊娠糖尿病に対する運動の効果の研究を紹介しました。
運動が帝王切開や子供の低血糖などを減らすと言えるはっきりした証拠は示されていませんでした。
血糖値が下がるのは良いことかもしれませんが、血糖値が下がることによって結果を良くすることにつながるかどうかははっきりしません。
妊娠糖尿病に対しては、食事指導の効果を調べた研究もあります。DASH食という食事療法で帝王切開が減るという結果が出ているものの、妊娠高血圧腎症に対する効果は確かめられず、ほかの食事指導でも帝王切開などに対する効果は確かめられていません。
妊娠糖尿病は注意を要する状態とされますが、適切な医学的管理により、多くの場合は特別な治療を必要としない程度で無事に出産を終えることができます。心配になって「少しでも体にいいことをしなければ」と思えるかもしれませんが、妊娠中はただでさえ体にいろいろな面で負担がかかります。できる範囲で体を動かすのは良いことと考えられますが、妊娠糖尿病と言われたからといって無理をしてまで心がける必要はないと言えるでしょう。
執筆者
Exercise for pregnant women with gestational diabetes for improving maternal and fetaloutcomes.
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jun 22.
[PMID: 28639706]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。