脳に動脈瘤が見つかった!22年放置するとどうなる?

脳の画像検査などで動脈瘤が見つかることがあります。動脈瘤が破裂するとくも膜下出血が起こり、命に関わります。しかし破裂しないものも多いことが知られています。破裂しやすい場合を探る研究が行われました。
未破裂脳動脈瘤の破裂を予測
フィンランドの研究班が、脳動脈瘤が見つかった人を長期間追跡することで、くも膜下出血が発生しやすい人の特徴があるかを調べ、専門誌『Neurosurgery』に報告しました。
142人が対象となりました。対象者の追跡年数を合計すると3,064人年となりました。すなわち、平均22年近く追跡されたことになります。
喫煙、位置、大きさ、年齢
調査結果の解析から次の結果が得られました。
3,064人年のフォローアップの間、34人の患者が動脈瘤破裂を経験した。
最終の多変量解析では、現在喫煙中であること(調整ハザード比2.50、95%信頼区間1.03-6.10、P=0.044)、前交通動脈に位置すること(4.28、1.38-13.28、P=0.012)、年齢(負の
相関 、1年加齢ごとに0.95、0.91-1.00、P=0.043)、ベースラインでの未破裂脳動脈瘤の直径が7mm以上(2.68、1.16-6.21、P=0.021)が将来の破裂の独立危険因子 だった。
調査期間に動脈瘤が破裂した人は34人でした。つまり、142人のうち108人は、動脈瘤がある状態で20年ほどを過ごしましたが、破裂しませんでした。
以下に当てはまる人では破裂が若干多くなっていました。
- 動脈瘤が前交通動脈に位置する
- 動脈瘤が見つかった時点で直径7mm以上
- 喫煙している
また年齢について、年齢が高いほどわずかずつ破裂の確率が低くなっている傾向が見られました。
脳動脈瘤は経過観察でよい?
脳動脈瘤が破裂しやすい人を探る研究を紹介しました。
まだ破裂していない脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)を治療するべきかどうかは長年議論が続いています。治療によってくも膜下出血を予防できる場合もある一方で、治療によって体を傷付けるなどの害も絶対に起こらないとは言えません。
現在は、将来破裂する確率がある程度高いと予想される人では治療を勧め、破裂する確率が低いと予想される人では
この研究では、7mm以上というやや大きい動脈瘤を持つ人も対象者に含まれていましたが、全体として20年ほどの間に一度も破裂しない人のほうが多いという結果でした。解析で挙げられた特徴にひとつも当てはまらない人ではさらに破裂の確率が低いと考えられます。
将来のくも膜下出血を予防したいかどうかは個人の価値観も関わる点です。「脳に動脈瘤があります」と言われると怖くなって一刻も早く治したいと思うかもしれませんが、小さい動脈瘤に気付かないままくも膜下出血を起こさず一生を過ごす人は大勢います。治療した場合としなかった場合に何が予想されるかをよく聞いて、自分がどれくらい危険な状態にあるのかを把握したうえで、家族や担当医と相談して方針を決めてください。
執筆者
Intracranial Aneurysm Parameters for Predicting a Future Subarachnoid Hemorrhage: A Long-Term Follow-up Study.
Neurosurgery. 2017 Jan 10. [Epub ahead of print]
[PMID: 28327974]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。