2016.12.16 | ニュース

新しい受精卵より凍結したほうがいい?「PCOS」の不妊治療の結果

1,508人の試験から
from The New England journal of medicine
新しい受精卵より凍結したほうがいい?「PCOS」の不妊治療の結果の写真
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不妊治療は急速に進んできています。体外受精してできた胚を凍結して保存する技術も使われています。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による不妊の女性を対象に、凍結胚を使うことで出生に至る割合などを調べる研究が行われました。

中国で行われた不妊治療の研究の結果が、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告されました。

多嚢胞性卵巣症候群PCOS)という病気のある女性が対象とされました。多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣の異常により正常に排卵が起こらず、不妊の原因になります。

不妊治療として対象者全員に体外受精が行われました。体外受精の中で、卵子に受精させてから一度凍結し、時間を空けて子宮に戻す「凍結胚移植」という方法が検討されました。

 

凍結胚移植は、凍結によって胚がダメージを受ける可能性がある一方、子宮の状態が良いときを選んで戻せるなどの利点があります。胚を凍結しない方法(新鮮胚移植)に比べて一般に出生率が高いとされます。

この研究では、PCOS患者の女性に対しても凍結胚移植で期待する結果が得られるかを調べています。

 

1,508人が対象となりました。対象者はランダムに2グループに分けられました。

  • 新鮮胚移植を行うグループ
  • 凍結胚移植を行うグループ

治療法によって出生(死産を含まない)に至った割合などが比較されました。

 

次の結果が得られました。

凍結胚により、最初の移植後の生産の頻度は新鮮胚移植よりも高い結果となり(49.3% vs 42.0%)、率比で1.17(95%信頼区間1.05-1.31、P=0.004)だった。

新鮮胚移植のグループでは42.3%が出生に至った一方、凍結胚移植のほうが高い割合の49.3%で出生がありました。

ほかにも違った点がありました。

  • 凍結胚移植のほうが卵巣過剰刺激症候群が少ない
  • 凍結胚移植のほうが子癇前症が多い
  • その他の合併症(妊娠にともなう異常など)には差がない
  • 新生児死亡は凍結胚移植のグループで5人、新鮮胚移植のグループではなし(統計的に偶然でないとは言えない違い)

 

PCOS患者の女性に対しても、凍結胚移植のほうが新鮮胚移植よりも出生が多いという結果が得られました。

一方で、妊娠・出産に関わるリスクも見られました。

妊娠のあいだ、母親と子どもの体には非常に複雑な変化が起こります。不妊治療によってさまざまな状況の不妊に対処できるようになってきましたが、まだまだ妊娠のしくみにはわからない部分がたくさん残っています。

治療成功の確率を上げるために、凍結胚移植が役に立つかもしれません。しかし、その一方で予想されるリスクについてもよく理解し、万一の場合を考えておくことも大切です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Fresh versus Frozen Embryos for Infertility in the Polycystic Ovary Syndrome.

N Engl J Med. 2016 Aug 11.

[PMID: 27509101]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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