2016.10.04 | ニュース

血圧下げすぎは危険!安定冠動脈疾患の治療でベストな血圧とは

45か国2万人の研究から

from Lancet (London, England)

血圧下げすぎは危険!安定冠動脈疾患の治療でベストな血圧とはの写真

血圧が気になっていませんか?高血圧の基準は140/90mmHgです。基準よりどれだけ下げるといいかは細かく議論されています。ある場合には下げすぎるとかえって有害かもしれないというデータが報告されました。

フランス、アメリカ、イギリス、カナダ、イタリアなどから集まった研究班が、45か国で参加者を集めて行った研究の結果を医学誌『Lancet』に報告しました。

対象として、心筋梗塞の手前の段階にあたる安定冠動脈疾患があり、同時に高血圧の治療も受けている患者22,672人が集められました。

対象者の中で、心臓や血管の病気による死亡、心筋梗塞、脳卒中が発生した割合が、血圧によって違うかが統計解析されました。

 

解析から次の結果が得られました。

中央値5.0年の追跡ののち、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧80mmHg以上の血圧上昇はそれぞれ心血管イベントのリスク増加と関連した。収縮期血圧120mmHg未満もまた一次アウトカムのリスク増加と関連した(調整ハザード比1.56、95%信頼区間1.36-1.81)。同様に、拡張期血圧70mmHg未満は一次アウトカムの増加と関連した(拡張期血圧60-69mmHgのとき調整ハザード比1.41、95%信頼区間1.24-1.61、60mmHg未満のとき2.01、95%信頼区間1.50-2.70)。

収縮期血圧(上の血圧)が120-129mmHg、かつ拡張期血圧(下の血圧)が70-79mmHgのときを基準にすると、収縮期血圧120mmHg未満のときと、拡張期血圧70mmHg未満のときは、病気や死亡がむしろ多くなっていました

 

安定冠動脈疾患がある人では、120/70mmHgよりも下げないほうがいいかもしれないという結果でした。

2015年に『New England Journal of Medicine』に報告された「SPRINT研究」は、ある場合に収縮期血圧120mmHgを目標として血圧を下げると死亡率が下がったとし、大きな話題を呼びました。

SPRINT研究は対象者に厳しい条件をつけて選んでいるので、当てはまらない人も同じだけ血圧を下げるべきとは限りません。

ほかにも薬で血圧を下げすぎることの危険性を唱えた報告はあります。高血圧の基準とされる140/90mmHgは多くの人に当てはまりますが、さらに下げるべきかは全身の状態によって専門的な判断が必要と思ったほうがいいでしょう。

高血圧はかかりつけの医師とよく相談しながら、全身のバランスを取って治療することが大切です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Cardiovascular event rates and mortality according to achieved systolic and diastolic blood pressure inpatients with stable coronary artery disease: an international cohort study.

Lancet. 2016 Aug 26. [Epub ahead of print]

[PMID: 27590221]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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