2016.09.10 | ニュース

うつが治った!脳を電気刺激する治療「tDCS」の効果とは

文献の調査から

from The British journal of psychiatry : the journal of mental science

うつが治った!脳を電気刺激する治療「tDCS」の効果とはの写真

うつ症状の治療には抗うつ薬や認知行動療法などが使われていますが、必ず治せる方法はありません。ほかに脳を電気刺激する治療法も研究されています。これまでの研究をまとめると効果が見られていることが報告されました。

ここで紹介する報告は、うつ症状(大うつ病エピソード)が現れた人に対して、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)による治療の効果を調べています。

tDCSは、脳を頭蓋骨の外から刺激する手法です。陽極を置いた下の脳活動は促進され、陰極を置いた下の脳活動は抑制されると言われています。

 

研究班は、関係する研究報告を集め、これまでの研究で得られたデータをまとめました。

6件の研究が見つかり、その中で合計289人の患者が対象とされていました。

 

統計解析によりtDCSの効果を計算すると、次の結果が得られました。

真のtDCSは偽刺激よりも治療応答(34% vs 19%、オッズ比2.44、95%信頼区間1.38-4.32、NNT=7)、寛解(23.1% vs 12.7%、オッズ比2.38、95%信頼区間1.22-4.64、NNT=9)、うつ症状の改善(B係数0.35、95%信頼区間0.12-0.57)において勝っていた。

tDCSによりうつ症状を改善する効果があり、治療しなかった場合よりも9人に1人の割合で多く、症状がない状態(寛解)にすることができると見られました。

中でも、ほかの治療で効果が得にくかった症状はtDCSでも効果が出にくく、tDCSを多く使って治療したときに効果が大きい傾向がありました。

研究班は「tDCS治療の効果量は[...]抗うつ薬治療について報告されている効果と同程度であった」と述べています。

 

tDCSはよく知られた治療法で、さまざまな分野で応用を試みられています。一部の例として、脳卒中、パーキンソン病、耳鳴り、かゆみの治療に使った研究があります。

脳を刺激する治療法はすでに実際の治療にも取り入れられています。日本ではパーキンソン病に対する深部脳刺激治療が保険で認められています。

研究で検証を重ねることによって、tDCSの可能性をより確かに理解する役に立ちます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Transcranial direct current stimulation for acute major depressive episodes: meta-analysis of individual patient data.

Br J Psychiatry. 2016 Jun.

[PMID: 27056623]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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