2015.06.19 | ニュース

切断されたはずの手足の痛み、電気刺激で改善

5日間の経頭蓋直流電気刺激に効果あり

from The journal of pain : official journal of the American Pain Society

切断されたはずの手足の痛み、電気刺激で改善 の写真

糖尿病や外傷により四肢を切断することになると、幻肢痛という「ないはずの手足に痛みを感じる」という現象が、多い場合では80%以上の人に出現すると言われています。今回の研究では、イタリアの研究チームが、その幻肢痛に対する治療手段として、脳を電気で刺激する経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が有効だったことを報告しました。

◆脳の運動野に経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を実施

今回の研究は、慢性的に幻肢痛を患っている人を対象に、以下の方法で実施しました。

片側の上肢または下肢を切断し慢性的な幻肢痛を患っている8名の患者が、クロスオーバー、二重盲検、偽刺激対照試験に参加した。

5日間連続で、tDCS(陽極)または偽刺激を、1.5mAの強度で15分間運動野に適用した。

2つの刺激(実際のtDCSと偽の刺激)について、それぞれ5日間実施し、その後の幻肢痛の状態について比較しました。

 

◆tDCSを行った後で幻肢痛は改善

調査の結果、以下のことが報告されました。

tDCSを5日間連続で実施すると、普段の幻肢痛の改善や幻肢痛発作の頻度の減少が持続的に起こり、それは治療終了後1週間続いていた。これは偽刺激では見られなかった。

さらに、tDCSを実施した日では、幻肢痛が即時的に緩和し、幻肢をよりよく動かせるようになったという訴えが患者から聞かれた。

それとは対照的に、偽刺激を行ったときの即時的な反応は、幻肢痛が治療前から増えた人や減った人というようにまちまちであった。

tDCSを行うことで、幻肢痛が改善され、その効果が1週間持続しているという結果でした。

筆者らは、「この結果は、脳の運動野にtDCSを5日間実施することで、切断患者の幻肢痛を和らげる安定した効果があることを示している」と述べています。

 

幻肢痛の原因について、さまざまな報告がされていますが、そのなかのひとつに「脳が手足があったときのことを記憶し、実際の情報(手足はないということ)と混乱することで生じる」という説があります。今回の研究は対象数も少なく、さらなる検証が必要ですが、幻肢痛のみならず、このような脳の働きが原因となるかもしれない症状に対して、tDCSが治療ツールとして適用される日が来るかもしれません。

執筆者

MT

参考文献

Immediate and Sustained Effects of 5-Day Transcranial Direct Current Stimulation of the Motor Cortex in Phantom Limb Pain.

J Pain. 2015 Apr 8

[PMID: 25863170]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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