2016.06.01 | ニュース

肺がんをCTで早期発見しても長生きできないかもしれない

4,104人の死亡率から

from American journal of respiratory and critical care medicine

肺がんをCTで早期発見しても長生きできないかもしれないの写真

がんになるのではないかと心配で検診を受けても、結果につながるとは限りません。毎年CTの検査をして肺がんを早期発見しても死亡率には違いがなかったという研究結果が報告されました。

◆肺がんをCTで探すかどうかで比較

この研究は、デンマークの研究班が、毎年CTの検査を行うことで肺がんが発見されるか、また死亡率に影響があるかを調べたものです。

50歳から70歳の喫煙者4,104人が対象となりました。対象者は、5年間続けて毎年CTで肺がんのスクリーニング(病気を見つけ出す検査)を受けるグループと、スクリーニングは受けないグループにランダムに分けられました。最後のスクリーニングから5年以上経過した時点で、スクリーニングを受けたグループと、受けなかったグループの死亡率が比較されました。

 

◆早期発見されたが、死亡率は変わらない

次の結果が得られました。

2群間で、肺がんによる死亡率の差(ハザード比1.03、95%信頼区間0.66-1.6、P=0.888)、全死因死亡率の差(ハザード比1.02、95%信頼区間0.82-1.27、P=0.867)は見出されなかった。スクリーニングをしない群よりも、スクリーニング群でより多くのがんが発見され(53 vs 100、P<0.001)、特に腺がんが多かった(18 vs 58、P<0.001)。対照群よりもスクリーニング群のほうが早期がん(ステージIおよびII、10 vs 54、P<0.001)、ステージIIIaのがん(3 vs 15、P=0.009)が多く発見された。

スクリーニングを受けたグループのほうが、受けなかったグループよりも早期肺がんが多く発見されました。しかし、全体として死亡率に差がなく、肺がんによる死亡に限って比較しても差がありませんでした

 

がんはある程度進行してから全身に強く影響するようになります。また、進行の度合いに応じた治療法が長年のうちに進歩してきています。少し大きくなってからでも発見して治療できるがんを、もっと早く見つけても結果が変わらない場合はあるかもしれません。がんが発見されることで心理的な負担が増えることや、CTで放射線を浴びてしまうことなど、悪い面も同時に考える必要があります。

前立腺がんや乳がんの検査では、結果に違いがないので早くからスクリーニングをしすぎるべきではないという意見があります。

がん検診を受けようとするときは、何を目的にするのか、どんな結果が予想できるのかをよく聞きましょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Results of the Randomized Danish Lung Cancer Screening Trial with Focus on High-Risk Profiling.

Am J Respir Crit Care Med. 2016 Mar 1.

[PMID: 26485620]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る