母乳だけじゃビタミンDは不足気味?

乳幼児において、ビタミンDはくる病の予防や骨量増加等に必要な栄養素です。著者らは母乳から乳児が得られるビタミンD量の変化に関し、調査をしました。
◆母乳のビタミンDはなぜ必要なのか?
◆授乳後4、9ヶ月目のビタミンD代謝産物濃度を測定
著者らは授乳開始後2週目と4ヶ月目と9ヶ月目の母親から血液と母乳サンプルを採取し、4ヶ月目と9ヶ月目の乳児から採血して、それぞれのビタミンD
◆母乳と乳児のビタミンD量に相関関係あり
著者らは以下の結果を得ました。
ビタミンDと25-(OH)Dの濃度は
有意 に相関 関係にあり、初期母乳より後期母乳で高かった。母乳における25-(OH)D濃度もまた、母親由来の血漿25-(OH)D濃度と相関関係があった。母親由来血中25-(OH)D濃度に対して初期母乳の濃度は中央値(IQR)1.35%(1.04から1.84%)、後期母乳では2.1%(1.63から2.65%)を示した(P<0.01)。[...]母乳を介した乳児におけるビタミンDおよび25(OH)Dの一日摂取量の中央値(IQR)は、それぞれ0.10μg(0.02から0.40μg)および0.34μg(0.24から0.47μg)であり、中央値77 IU/D(52から110 IU/ D)の抗くる病能と等価であった。
つまり、母乳中心の乳児において、体内のビタミンD量は母乳に依存することが分かりました。また母乳は授乳初期より後期の方が、高いビタミンD濃度を示す事が分かりました。しかしながらくる病予防に十分な量とは言えない結果となりました。
著者らは結論として、「母乳からのビタミンDの供給は限られている。母乳だけで育てられている乳児は最初の一年で、米国医学研究所が推奨する一日に必要なビタミンD量の20%未満を母乳から得ている」と述べています。
つまり言い換えると、母乳中心ではビタミンDの必要量80%が不足します。一般に子供の健康の為にも母乳が推奨されますが、ビタミンDに関し、母乳だけで十分とは言えないようです。皮膚がん予防の観点から新生児が直射日光を避けて育てられている場合、日光によるビタミンD産生はどうしても少なくなります。母乳以外にビタミンDを多く含む飲み物を摂る等、バランスが大事のようです。
執筆者
Vitamin D content in human breast milk: a 9-mo follow-up study.
Am J Clin Nutr. 2016 Jan.
[PMID: 26675779]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。