2016.03.03 | ニュース

ビタミンDを沢山取ったら転びやすくなる?

スイスでの研究から
from JAMA internal medicine
ビタミンDを沢山取ったら転びやすくなる?の写真
(C) Tyler Olson - Fotolia.com

ビタミンDの欠乏は運動能力の低下と関連があると言われています。そこで運動能力の維持に必要なビタミンD量を求める為に、著者らは高齢者におけるビタミンD量と運動能力の関係を調べました。

◆3種類のビタミンD使用量で調査

著者らはスイスのチューリッヒにおいて、以前に転倒したことがあり在宅で生活している70歳以上の男性と女性計200人を対象に行いました。

対象者を3群に分け、量を変えてビタミンDを処方しました。月ごとの処方量は、24,000IUのビタミンD3(24,000IU群)、60,000IUのビタミンD3(60,000IU群)、および24,000IUのビタミンD3に加え300μgのカルシフェジオール(体内で代謝されてビタミンDになる物質)(24,000IU+カルシフェジオール群)としました。評価のため、足の運動機能の改善、体内のビタミンD量の指標が目標を達成したか、また、転倒の頻度を調べました。

 

◆ビタミンD3高摂取群で転倒事故率が増加

体内のビタミンD量に関しては、処方量が多いと効果的に目標値を達成する事が出来ました。ですが評価基準に基づく足の運動機能の調査(バランス・歩行速度・椅子立ち上がりの3項目評価)を行ったところ、ビタミンD処方を多くしても改善効果は観察されませんでした。

更に著者らは、以下の結果を得ました。

12ヶ月の追跡調査期間を通じて、3群間で転倒事故数は有意に変化し、60,000IU群(66.9%、95%信頼区間は54.4%から77.5%)と24,000IU+カルシフェジオール群(66.1%、95%信頼区間は53.5%から76.8%)では、24,000IU群(47.9%、95%信頼区間は35.8%から60.3%)と比較して、転倒の発生率が大きくなった。

つまり、ビタミンDを多く摂った被験者の方が、転倒事故の確率が高くなる結果を示しました。

著者らは、「24,000IU投与群と比較して、月ごとのビタミンD摂取を多くすれば最低30ng/mLの25-ハイドロキシビタミンD量到達に効果的ではあったが、下肢機能の改善とは関係なく、転倒リスク増加と関連があった。」と結論づけています。

 

ビタミンDの摂取が運動能力向上に役立つとの報告もほかにあるので、この結果は従来の知見と矛盾しているようにも思えます。高齢者を対象としているので、その時のビタミンD摂取は異なる効果を示すのかもしれません。神経、筋肉、骨のいずれにも作用する可能性があるので、他の臓器への影響も含め、より詳細な研究が望まれます。

執筆者

高田

参考文献

Monthly High-Dose Vitamin D Treatment for the Prevention of Functional Decline: A Randomized Clinical Trial.

JAMA Intern Med. 2016 Feb 1.

[PMID: 26747333]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。