赤ちゃんが乳酸アシドーシスで入院、授乳中に不足していた栄養素とは?
授乳中の母親の食事が偏っていると、母乳を飲んでいる子どもにも影響が現れることがあります。インドのカシミール地方で、食習慣に関係すると見られる栄養の偏りにより、乳酸アシドーシスという危険な状態に陥った23人の乳児の例が報告されました。
◆ビタミンB1不足による乳酸アシドーシス
この報告は、カシミール地方の施設で6か月の間に23人記録された、チアミン(
◆白米が主食
この乳児たちの特徴と経過は以下のようなものでした。
生後32日から4か月までの子ども23人(11人が男の子、12人が女の子)が、入院時にpH7以下だった。
血中乳酸値は15mmol/lを超えていた。血中チアミン値が測定された乳児での範囲は11-69nmol/lだった(対照群では78-185nmol/lだった)。すべての乳児が母乳だけで栄養された。母親の主食は精白米だった。すべての母親が米を何度も研いだうえで食べていた。
最も多く見られた症状は易刺激性(82%)と逆流(56%)だった。最も多く見られた徴候は
頻脈 (100%)と呻吟(73%)だった。チアミンに対する応答は劇的であり、呻吟と易刺激性は2時間以内に、頻脈は4時間以内に消退した。
血液の酸性の度合いを示すpHが、この23人の子どもでは正常範囲の7.35から7.45を外れて大きく酸性に偏り、7以下でした。乳酸の量は5mmol/l以上で乳酸アシドーシスとされますが、この子どもたちでは15mmol/l以上でした。
原因として、カシミール地方では白米を研いで調理したものが主食であり、ヌカの部分に含まれるチアミンが失われることから、チアミン不足による代謝の異常が疑われました。23人の子どもは全員が母乳だけで育てられていて、母親は全員が米をよく研いで食べていました。
子どもたちは不整脈などを起こし、危険な状態にありましたが、チアミンを与えられたことで劇的に改善しました。
研究班は「チアミン欠乏による
母乳にはさまざまな良い面がありますが、ビタミンKが少ないなど、補うべき面もあります。この報告は極端な例としても、授乳中は栄養の偏りには特に注意が必要です。
執筆者
Thiamine responsive acute life threatening metabolic acidosis in exclusively breast-fed infants.
Nutrition. 2015 Sep 2 [Epub ahead of print]
[PMID: 26515900]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。